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ヤミ米統制に憤!

コラム『あまのじゃく』1953/10/10 発行 
文化新聞  No. 1000


官僚の馬鹿共に統制の愚を知らしめる

    主幹 吉 田 金 八

 ヤミ米統制に対して私はこう考える。
 働きたくないものは働かずとも良い、買いたくなければ買わず、売りたくないものは売らずとも良い自由の世の中に、売りたくない米を強制的に買い上げ、好むと好まぬに頓着なく、強制的に 配給する米の配給量たるや、人間の生存に絶対に足りない保証付きの量で、闇米を買うのが当たり前、悪い悪いという闇のおかげで、今まで生きながらえておりながら、いまだに闇ゴメを運んでいるものはショッピカレルなんて不合理が続いている。
 没収の危険負担や、公然と運べば安い運賃が、隠れて運ぶから何十倍と高いものになる。その闇米食を県庁の地下食堂で公然売っているのに、持ち運びだけはアゴヒモの警官に追い飛ばされるという不合理、矛盾の生んだ闇ゴメ300円は、やがて吉田自由党内閣の運命を制することになろう。
 本来、米は闇値との幅の少なかった当時に、全面的に統制から外すべきだったのを、自分たちが失業することを恐れて、官僚が悪制度を存続させた。
 去る9月新潟に行った時、新潟市内の米価が120円、だから人造米には一向興味を持っていない。
 会津で150円。東京に近づくに従って目に見えて高くなる。
 統制を外せば、新潟も東京も運賃の相違だけの相場になる。
 農民も減収だ減収だと供出を免れるために嘘を言う必要もなく、獲りたいだけ獲って、売りたいだけ売れば良い。
 内地米が高すぎれば、抜け目のない商社の手で、鮮米や台湾米、外国米がどんどん入ってくる。
 コメを操作する白い手の役人や、闇取締りの警官、闇マイ運びのおっさん、おばさん、不生産的な人間は全部お払い箱になり、それだけ消費者、国民の負担は軽くなる。
 統制を外せばむやみと物が高くなるというのは口実で、現在、かつて統制品だったもので、自由になったために手の届かの相場となったものは一つもない。
 今度、闇マイ異変で官僚の馬鹿共に、己の愚を悟らせたら、この『しばらく』の米異変も我慢できるというものである。


 コラム『あまのじゃく』は、埼玉県西武地方の日刊ローカル紙「文化新聞」に掲載された評判の風刺評論です。歯に衣着せぬ論評は大戦後の困窮にあえぐ読者の留飲を下げ、喝采を浴びました。70年後の現代社会にも、少しも色褪せず通用する評論だと信じます。
 このエッセイは発行当時の社会情勢を反映したものです。内容・表現において、現在とは相容れない物もありますが、著作者の意思を尊重して原文のまま掲載いたします】

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