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汚職をなくす名案

コラム『あまのじゃく』1951/11/19 発行 
文化新聞  No. 182


汚職同等額を予算から削減⁉

    主幹 吉 田 金 八

 電通省施設局長が2百万円近い浮き貸しと横領をした事実がバレて召喚されたが、彼はさすがに罪状を恥じ入り新聞社の写真班に上着の襟を立てて顔を隠している。官僚の汚職は毎日の新聞の3面ネタで、多い日は2つも3つも紙面を飾っている。
 汚職事件が発生する原因は官道が地に落ちて、罪を罪と思わなくなったことと、官庁の予算が多すぎるということである。
 後者の説明は汚職事件が建設とか電通とかの,専ら現業官庁に多いことで見当がつくと思う。国民は国民で、自分の懐から出すときには真剣に少しでも少なからんと身を入れるが、さて国庫に収まってしまえば、その金がいかに使われようが我関せずの態度で居る事が、官吏の汚職を根絶やしにすることのできない理由でもある。
 それでは、官吏の背徳汚職事件を根底からなくす名案をご伝授しよう。
 それは公金費消や横領などの犯罪を、すべて所管官庁の連帯責任として、被害金額相当額をその年度以降の予算の人件費から削ってしまう事である。
 つまり1千万円の罪科があれば1千万円が予算から減少されるから、その官庁はその年は2千万円の実行予算が削減されることになる。
 官吏が天を恐れず、悪事を続ける限り、その役所の予算は年々減少して、最後には予算が一文もなくなって、解体の憂き目を見るに至るであろう。
 こうする事により、役人が悪いことをすればするほど、彼らは自ら墓穴を掘り窮地に追い込まれる。一方国民は税金がだんだん安くなり、官吏が公金をごまかせばごまかすほど国民が幸福になる、と言う面白いことになって、天下泰平と言う時代になる。
 役所がなくなって困るのは国民でなくして役人どもである。


 コラム『あまのじゃく』は、埼玉県西武地方の日刊ローカル紙「文化新聞」に掲載された評判の風刺評論です。歯に衣着せぬ論評は大戦後の困窮にあえぐ読者の留飲を下げ、喝采を浴びました。70年後の現代社会にも、少しも色褪せず通用する評論だと信じます。
 このエッセイは発行当時の社会情勢を反映したものです。内容・表現において、現在とは相容れない物もありますが、著作者の意思を尊重して原文のまま掲載いたします】

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