バンブーフラワー 第1話

<あらすじ>

主人公の板部華(いたべ はな)は一般的な高校1年生の女の子。竹林を相続した父と一緒に整備をしながら、竹をただ燃やして処分してしまうのはもったいないと、竹細工を始める。次第にハマり、竹細工の世界にのめり込んでいくハナ。竹の魅力に取りつかれた女子高生の少し変わったストーリー。


<第1話>

どこにでもある田舎道、車の窓から入り込んでくる青臭い匂い。現在父さんが祖父から相続した土地へ車で移動中。私は板部華(いたべ はな)。高校1年生の女子高生。今日は家族でバーベキュー。外で食べる食事は何でも美味しくなるんだよね。

「到着」

古びた民家、祖父の家の前に車を駐車。バーベキューは後回しにして、見せたいものがあると父が言う。家から出て山の方へ。

「ようこそ、我々の竹林へ!」

そこには雑草が生い茂り、竹が大量に生えすぎている土地が。竹林というよりも竹藪。そういえば竹林も相続したと言ってたっけ。その時は毎年美味しいタケノコが食べられると喜んでいたけど。そうだよね、整備が必要だよね。食べる専だったから考えもしなかったけど、タケノコ採るにはそれなりの苦労が当然あるだろう。

「3年でここまで荒れちゃうのね」

3年前までは祖父がタケノコを採って家に届けてくれていた。しかし足を悪くし竹林整備をやめた。以前に見たときはきれいに整備された竹林だった。

「竹は伸びるの早いからな。1年も経つともう竹藪さ。また整備しないと。なに、運動不足解消にはちょうどいいさ」
「ふふ、がんばってね」

ぽっこりと出たお腹を擦りながら苦笑いをする父。竹林の相続に関してはかなり迷っているようだった。竹林というか山林になる。相続してしまうと山林を破棄できない。今の時代は山林は人気がなく簡単に売れもしない。相続を放棄すれば国がもらってくれる。手放すなら今しかないというタイミングだった。近年放置竹林の問題をニュース等で見ることがある。軽い気持ちで相続すると後々大変なことになるのは目に見えている。我が家は5人家族。兄は就職して社会人、姉は今年就職と手がかからなくなってきた。父は朝から夜まで働いていたが金銭的に余裕ができてきたから仕事を減らし、今後はのんびりと生活しようということに。デスクワークで出たお腹を竹林整備でへこまそうと画策している。母さんはこの件には賛成。昔の父さんはほっそり型で格好良かったから体型が戻るかもということで喜んでいるようだ。

「孟宗竹と真竹が生えている」

孟宗竹は太めのタケノコが生える竹の種類。市場に出回っているのはこの種類。真竹は加工に向いている竹。大昔は自分達でかごを編んだり、余った竹を売ったりしていたとおじいさんに聞いたことがあった。

「さて戻ろうか」

竹藪観光ツアーを終え、家に戻りバーベキューを始める。焼いたお肉に野菜。うーん、やはりおいしい。お腹がいっぱいになりバーベキューを終え帰宅。

「暇なときがあったら手伝ってよ、ハナ」
「うんいいよ」

私もダイエット代わりにちょうどいいと考えていた。自転車で30分と距離も意外と近いし。2週間後、竹林整備の手伝いをすることに。自転車で移動、竹林へ。先週草刈りを終えて、今日は古い竹と余分な竹の伐採。

「どちらもタケノコ畑にする予定だ」

大量に生えていて大変だが、ニュースになるほどずっと放置していた竹林と比べれば全然マシ。まずは孟宗竹のグループから。私は小型のチェーンソー、父はノコギリを手に取り、いざ藪の中へ。作業は意外と順調に進む。というのもすでに父さんは子供の頃教えられて知っているし、私は竹整備の動画を父さんと一緒に見ながら予習したからだ。便利な時代だなと一緒に動画を見ながら父さんが呟いていた。

「そろそろお昼だ、休憩しよう」

昼食を食べ休憩し再び作業開始。夕方までやって3分の1ほど伐採が進む。意外と厄介なのが竹の処分。切った竹はもちろん片付けなければならない。野焼きは基本的に禁止されている。燃やして処分はできない。今回は知り合いの農家に頼んで竹チップにする。竹チップは竹を粉々に砕いた物。

「よーし、今日はここまで」

今日は伐採だけ。作業を終え家に帰る。かなりの重労働だった。しかしこれでお腹が引き締まるかな? 晩御飯がものすごく美味しい。食べすぎてしまいそうで怖い。食後自分の部屋に入り、伐採した竹のことを思い出す。ただ処分はもったいないな。有効利用できないかネットで調べる。かなりの数の竹でできた製品、道具を見つけた。

「へぇ、こんなにあるんだ」

竹をそのまま使ったアンティーク、おもちゃ、竹の茎を細かく割って作られた棒竹ひご、それを使って作ったかご、色々ある。そうか、昔は木材や竹で何でも作ってたんだ。そうやって作られていたものが今でも残っているんだな。中でも竹細工に惹かれる。竹ひごさえ作ってしまえば様々なものが作成可能になる。竹細工が出来ないか、父さんに聞いてみた。

「父さんが生まれた頃には竹細工はもうやってなかったよ」

祖父の代にはすでにプラスチックや金属の製品が出回り、頑丈で安いそれらの製品に取って代わられていたようだ。そのため竹細工は全く知らないようだ。そうなると自分でやり方を探っていくしかない。しばらくは竹細工の情報を集めてみようかな。情報はすぐにみつかった。動画が大量にあったのだ。たしかに便利な時代だなぁ。

https://editor.note.com/notes/n55cd8961b020/edit/

https://editor.note.com/notes/n0fcd57699be9/edit/

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