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京都を代表する借景庭園① 円通寺

京都にはたくさんの文化財指定された庭園があります。今回紹介するのは京都市内では貴重になった借景庭園で有名な円通寺です。

円通寺は、私も今回の訪問が実に約10年ぶりでした。観光地として有名なエリアから少し外れていることから観光客も少なく、比叡山を取り込んだ雄大な庭園をゆっくり鑑賞することができました。

境内の外の景色を借りて、庭の空間や景色を作り上げるという借景は、その宿命として、外の景色が変わると、借りる景色も変わることになります。また、自分の土地ではないため、景色を守ることも難しい、デリケートな庭園です。

洛北で京都市中心部からはやや離れているとはいえ、平成の中頃までは、開発の波により、かつては比叡山まで続くのどかな風景だった周辺も徐々にマンションなどの建物が増えていくこととなりました。

実はこの庭園の撮影は2002年まで禁止されていました。私が初めて円通寺を訪問した時はまだ撮影解禁後すぐの頃でした。写真撮影を解禁された理由が、今後この借景が見れなくなる事を危惧してという理由だったと記憶しています。(記憶違いだったらすみません。)

当時は「京都市眺望景観創生条例」もなく(制定は2007年)、ご住職の案内でも、景観の危機を訴えておられた記憶が残っています。

一方で、時代によって、価値観は変わっていくものだと私は思うので、『変わらないこと』が必ずしも正義だとは思いません。

ただ、この場所に離宮を作り、比叡山の見え方や生垣の高さなど緻密に設計したであろう後水尾天皇をはじめ当時の関係者の心意気はこの庭園を一度見たら納得するのではないでしょうか。

あまりにも雄大すぎて、庭園の大きさや生垣の高さが感覚と合わない不思議な魅力に満ちたこの庭園には、雄大な借景があって初めて成立する美があるのは間違いありません。

10年ぶりに見た景色は、変わらず雄大で、案内の放送が終わると驚くほど静かで、ヒヨドリのさえずりに包まれる空間でした。

バスでもアクセスできますが、地下鉄北山駅から深泥池を横目に徒歩でのアクセスもおすすめです。

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