狸と猫を間違えた話。

僕が住んでらところは狸がよく出る。それでもって野良猫もめっちゃいる。

勘のいい人というかほとんどの人は上の文章とタイトルでこの後の出来事は分かるだろう。

一人暮らしを始めて5ヶ月目。コンビニにタバコを買いに行こうと車に置いてあった財布を取りに駐車場に向かう。するとゴソゴソ何か蠢いている。猫だ。当時、19年生きてる僕は長年の経験からそう判断した。「ニャンニャン」と鳴き真似をし、手を地面の近くでユラユラする。これでどんな猫も一殺だ。
案の定、猫は近づいてくる。「可愛いやつだな。」と頭を撫でながら最後の一本のタバコを咥え火をつける。するとお腹を向けるような体勢になった猫。こいつ甘えん坊だな。ペット禁止じゃなきゃ飼いたいな。本気で思った。

5分くらい経ってタバコの灰がフィルター近くまでくる。火を消して携帯灰皿に吸い殻をしまう。すると後ろが急に女の人の声が聞こえた。
「あの、」
これはタバコを地面で消したのがまずかったか?暗くてポイ捨てと勘違いされたか?と頭によぎった。
でも、続く言葉は予想もしない言葉だった。

「それ多分狸です。」

「えっ?何言ってんだこいつ」
正直そう思った。こんな猫みたいな狸いるわけがない。狸と間違われる猫は知ってるがあれはロボットでアニメ、漫画の話だ。
「そんなわけないじゃないですか。」
シンプルにそう答えた。声かけてきた人を見下しながら。

「いや、でも」
そういうと女の人はスマホのライトをつけて僕が可愛がってた猫にライトを向ける。

そこには明らかに狸顔の狸がいた。正確には狸なのに猫ですが?って顔で寝転んでた。

恥ずかしすぎて死にそうになった。
お姉さんは爆笑。
狸はライトに驚いて逃走。
僕は恥ずかしさで赤面。

もう場はカオスだった。

このカオスの状況に先手を打ったのはお姉さん。
「本当に猫みたいな狸でしたね笑笑」
黙ることしかできない。だって19年の経験が破られた瞬間だから。
お姉さんは続ける。
「一応念入りに手を洗った方がいいですよ。何か病気とかもってるかもなので」

この瞬間お姉さんが救いの女神に見えた。
この状況から脱出する方法を提案してくれたのだから。

ありがとう。お姉さん。あなたは天使だ。

そう思って僕はアパートのエレベーターに向かった。

最後に

このお姉さんとはこの後エレベーターでちょくちょく会うようになり2人で飲みに行ったり彼女欲しいって言ったら大学の友達集めて合コンみたいな物も開催してくれた。キャバでバイトしてるっていうから遅刻しそうな時は同伴して誤魔化すのを手伝ったりもした。そしてこの悪魔の「狸、猫被る事件」から半年後このお姉さんはご近所さんから彼女になった。
そして付き合って最初に聞いたことは
「なんで狸だと思ったの?」
彼女は笑って答えた。
「私も前に騙されたから」


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