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閉じ師


ごっつキャシー塚本が好きでした。

「すずめの戸締まり」が始まり、テレビに釘付けになりましたが、早く寝たほうがようので、別の日の整ったときに録画したものを見たいと思います。
初めて聞いた「閉じ師」というワードが胸に刺さりました。先に思いつきたかったし、これから折に触れて使用せねばと胸に刻みし、寝師になることにしました。

さて。
コロッケを作ったことがあります。
材料は、芋、ひき肉、玉ねぎだったと思います。だったと思いますという一言でお察しの方もいらっしゃると思いますが、いつ作ったのか思い出せないほどの遠い過去であり、これから先15年は作らないと断言できるほど、コロッケ作り師の適性がありません。

コロッケって、ケロケロッと手軽な存在感ですが、その手間たるや。

コロッケ作り師であることも知らず、ただただおいしいコロッケを作りたいと思ってコロッケ作りと向き合った遠いあの日、様々な調理過程を経て形を整え終わったとき、閃いたんです。

工程はあと4つ。
①小麦粉をまぶす
②卵にくぐらせる
③パン粉をまぶす
④油で揚げる

もう形は整った。コロッケの中身は完成している。細かいことにこだわって、コロッケ作りを忌み嫌うな。③④があればコロッケになるはずだ。ナイスアイディーユ。

コロッケになるはずの中身にパン粉を押し付けて、いや、パン粉の方にコロッケになるはずの中身を押し付けたかと思います、いよいよ油を温め、人知れずコロッケに向かう塊を優しく入油させました。

幾重の調理過程を経てまとめあげたコロッケに向かう塊は、やがてほどけてバラバラになって油の中を漂い、滅びました。

クラムボンはかぷかぷわらったよ。

できあがるという概念すら消し去る、最悪のゴミとしか言いようがありませんでした。

レシピ絶対信師爆誕の瞬間でした。

その日、何を夕飯にしたのかを思い出すことはできません。

横着な態度を改め、夕飯作りの呪いから解き放たれるそのときまでは、コロッケ作り師にはならない。









〜決断師爆誕の瞬間〜

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