2024.東京都知事選(3)

今回の都知事選で100万人以上の支持を受けたのは、小池百合子(71歳・291万票)、石丸伸二(41歳・165万票)、蓮舫(56歳・128万票)の3人で、4番目が元航空幕僚長の田母神俊雄(75歳・26万票)だった。選挙前にはこの4人を呼んで討論させる番組や企画も目立った。男女2人ずつ、60代がいないものの年齢的にもバランスが取れている。56人の候補者を一堂に集めるのは不可能なので、討論会には手ごろな人選といえた。そしてメジャー候補4人の次に得票したのは…
安野貴博という人物だった。弱冠33歳は、今回の候補者56人中最若手の一人(31歳と32歳に次いで3番目)。15万票を集めた。AI技術の専門家で、1年前には岸田首相に直接AIのレクチャーをしていた人物(マイクを使って岸田首相の声を再現)だ。
この人の凄いところは、AIが24時間対応で選挙民の声に答えるというシステムを作っていたところ。24時間対応は、生身の人間には不可能な技である。小池百合子も「AIゆり子」をSNSに配していたが、安野は専門家だけあって格段の差だ。そして公約が随時バージョンアップされる点も注目される。私はここに未来の政治家の姿を見るように感じる。「ブレない」と言って、いつも同じ紋切り型の答えをするのでなく、選挙民からの質問によって政治家として成長していくという画期的なシステムだ。すごい人が、すごい政治家が現れたものだ。今回は落選だったが、近いうちにぜひ首長になってほしいと思う。石丸伸二のSNS戦略より、はるかに先を行っている。
それより、このシステムをすべての政治家が採用してほしい。間違ったことをしても、自分の過ちを認めない政治家が、いや政治家だけではない、非を認めない大人が何と多いことだろう。政治家とは民意を汲み上げて反映させる仕事ではないのか。「投票に行っても何も変わらない」と考える若者たちに、「あなたの希望はこれだね」と即座に制作に反映させるシステムが、そういうものが構築されそうな期待を抱かせる。安野貴博の選挙戦術には未来の政治を垣間見る気がした。

それにしても選挙を冒涜する所業が目立った。いくら注目率が高いといって、先に書いたN党のやり方は本当にひどいし、つばさの党と名乗る連中が、近年ほかの候補者の隣で大音量で演説を妨害するやり方にも辟易する。小池百合子が演説している場面をSNSで見たが、彼女の声が全く聞こえない。明らかな選挙妨害だと思う。民主主義を認めない輩が、他人の自由を遮って、自らの表現の自由を主張するのはあまりに矛盾している。こいつらに生卵でも投げつけて「俺なりの表現だ」と言ったら、彼らはそれを認めるだろうか。
ともあれ、こういう異常事態は東京だけのことだ。ここまでひどくなると困るが、地方では立候補者が一人だけで、投票率も低く、信任投票になる場合も多い。候補者が自らの主張を披歴せずに当選が決まってしまうのは、民主主義の危機である。民主主義は難しい。選挙制度の根本的な見直しが必要な時期に来ていると思う。


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