創作小説 影女刀(7)

近田は上司の米田金吾に米原宅を警備するように懇願した後 米原当人にも説明をした上で

米原宅近くの家屋を借り入れ見張っていた

それから二~三日した頃か 米原の屋敷付近で

明かりも付けずに彷徨く男がいた 近田は

陰から手龕灯で見つからぬように照らすと

惣太郎 本人であった 右頬に青痣が確認

できたが 全くもって正気を失ったかのように

歩き 亡者のような顔つきをしていた 



米原宅の裏門に隠れ 予め警備の者を配置し

米原当人にも警告をしておいたが…惣太郎は

壁をよじ登り邸内に入った…近田は惣太郎を

見つけるや否や怒号で惣太郎を呼びつけた

もう常人の風体ではない 惣太郎は鞘から

影女刀を抜き出した 禍々しく光り 

惣太郎は幸悦した顔つきで刀を眺めた後

斬りかかってきた 自ら動いている訳ではなく

その行動さえも刀に動かされており 傀儡の

如くであった 近田は鯉口でつばぜり合いを

した後 後ろから峰打ちを仕掛けた  

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