映画「ディア・ファミリー」

directed by 月川翔
starring :大泉洋、菅野美穂、福本莉子、川栄李奈、新井美羽、満島真之介、三石研、上杉柊平、徳永えり、戸田菜穂、有村架純、松村北斗

1970年台、小さな町工場を経営する坪井宜政(大泉洋)と妻・陽子(菅野美穂)の娘である佳美(福本莉子)は生まれつきの心臓疾患を抱えており、幼い頃に、余命10年を宣告されてしまう。どこの医療機関からも治すことができないという厳しい現実を突きつけられた宜政は、娘のために自ら人工心臓を作ることを決意。医療知識も経験もない状態からの医療器具開発は不可能に近かったが、宜政と陽子は必死に勉強し、有識者に頭を下げ、医大の先生にくらいつき、資金繰りをして何年も開発に奔走する。しかし、佳美の命のリミットは刻一刻と近づいていた。

世界で17万人の命を救ったIABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンの開発・誕生にまつわる実話。このバルーンカテーテル開発の話は、以前にNHKのドキュメンタリー番組で見たことがあった。細かい、しかも体内の血管内という非常に曲がりくねった中を通す、弾力や伸縮に富んだ素材を使って、しかも人の体内で壊れない強度を保つという技術開発は、実は、日本の小さな町工場から誕生したものがいくつかあることは知っていたし、そういう番組もよく見ていた。
 原作も未読なんですが、よく紹介されていた話でもあったけど、でも、娘さんのために人工心臓を作るというのが発端だったんだ。川崎和雄さんも人工心臓の開発をいろいろデザインの面でのアプローチをされていたが、結局、今は、心臓移植がメインになっている。
心筋細胞のところまでは、iPS細胞でなんとかアプローチできそうだが、wholeの心臓となると、やっぱり「人ー人」のまるごと移植しか、いまだ手立てがない・・という現実も・・・この話の始まりだった1970年代から半世紀、50年以上たっても、人工心臓はいまだ・・・というところ、何か重い。

 娘さんへの人工心臓を・・・という一番大きな願いは叶わなかったが、でも、その努力は無駄ではなかった。人工心臓を開発するために改良を重ねてきた技術を活かして「IABPカテーテル」が誕生した。しかし、それを治験へと進めるところも、医療界の慣習?が大きな障壁となったけど、でも、それも乗り越えて、今や、世界中で人の命を救ってる。

私自身も最近「ものづくり日本」の魂を感じたこともあったので、この作品もまた、「丁寧に丁寧にものを作る」ことに徹する・・・底力を感じて、胸に響きました。

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