映画「蟻の王」


原題:Il signore delle formiche(伊) : Lord of the Ants(英)
directed by Gianni Amelio
starring :Luigi Lo Cascio, Elio Germano, Leonardo Maltese, Sara Serraliocco, Anna Caterina Antonacci

1960年代のイタリア。ポー川南部の街ピアチェンツァに住む詩人・劇作家で蟻の生態研究者でもあるアルド・ブライバンティ(ルイジ・ロ・カーシュ)が主催する演劇サークルは、町外れにある空き屋敷で行われ、多くの若者を集めていた。兄に連れられてやってきたエットレ(レオナルド・マルテーぜ)は次第にアルドに惹かれ、やがて二人は恋に落ち、ローマで一緒に暮らしはじめる。しかし2人はエットレの家族によって引き離され、アルドは教唆罪で逮捕、エットレは同性愛の「治療」と称した電気ショックを受けるため矯正施設へ送られてしまう。世間の好奇の目にさらされる中で裁判が始まり、新聞記者エンニオ(Elio Germano)は熱心に取材を重ね、不寛容な社会に一石を投じようとするが……。

彼らが詩を交わすシーンがあり・・・なかなかイタリア語の感覚とか、ニュアンスとかつかめないから、ピンとこないんだけど、後から、映画チラシなどに書かれてる文言を追うと、すごく瑞々しくて、心にぐっとくる「詩」だ

「罪という字を消して勇気と書く、愛という字を消して君と書く」

う〜ん、素敵です!
ただ当時のイタリア社会は、ガチガチの共産主義?で、保守的。
同性愛・・・は「病気」と断じて、矯正しなければならない・・・という風潮で、母親が息子を拉致して、無理矢理、矯正施設に送り、電気ショックを受けさせて「治療」する・・・なんとも非人道的だけど、そういう時代だったのだ。
  家族も宗教も全く「救い」にならない、許容してくれず、頑なまでに「矯正」「排除」の一辺倒。

 蟻・・・の話が随所に出てはくるけど・・・なんのメタファーなのかなぁ。
蟻って、働きアリはぜ〜んぶメスなんだし、なんか男同士の同性愛の話に、なんで蟻の話なん? とは、思ったなぁ。
   単一社会ってことがいいたいのかなぁ
   異端児が許されない・・・というか、アリの社会では「異端」ってのは存在しない・・・そこらへんが「同性愛は存在しない」として「矯正することが正義」としてる社会をなぞらえているのかなぁ。

  冒頭のシーンに出てきた、新聞記者エンニオ・・・すぐに存在を消してしまって、物語の本筋が進んでいく間は全く出てこない。当時のイタリアは「同性愛は存在しない」という主義なので、アルドは逮捕されるが、その罪は「若者をそそのかした」
ということで「教唆罪」に問われるんだけど、アルドの人間性の豊かさを見抜いたエンニオはアルドとエットレを丹念に取材する。
もう裁判の結果に全く期待をしていないアルドは、もう諦観しちゃってて投げやりだが、真剣だったエンニオの表情は印象的だった。
  ただ、私たちオーディエンスが期待するような、胸がすっとするような展開にはならない。誰かが大演説をしてアルドを救うのかというと、そうはならず、刑務所送りになるが、それでも、最後にアルドとエットレは互いの想いが変わらないことを伝え合う・・・この場面が、野外劇場みたいなところで、広々とした草原の中にある野外劇場をバックに「アイーダ」の曲が流れていて、にわか雨も降ってくる中での二人の交わす表情・・・とても美しかった。
   しかし、アルド・・・は、言ってる言葉がめっちゃ難しいし哲学的なんだけど・・・とにかく「ザ・イケオジ」です。たぶん、私のような世代だと「ロマンスグレイ」か?
でもグレイヘアじゃないし、でも、色気むんむんでもない。紳士なんです! 渋いんです、だから、山さんみたいなですっ!!(ぜいぜいっ!)
 ただ、こんなに難しい言葉ばっかりだと、先生ならいいけど、パートナーとなるのは難しい人なんだろうなぁ。

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