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【空白小説応募作品】猫日記

↓以下改行バージョン

我輩は猫であるが故、今まで数々の失態を犯してきた。同居人がゲームをしている最中にも思わず鳴いてしまうし、この前なんかは必死になってネズミを追いかけているところをミカに見られてしまった。

 「野生の血だね、こわいかも」 

などと言っていた。あれは自分自身深く反省をしている。まだはたちにもなってないミカにあれを見せてしまうこと、それ自体が自分の至らなさの正体であったのだ。
私はたった今人間となった。そこでペンを走らせながら思うことがある。どうして私はただの草とあれほど必死に戯れているいたのか、ベッドも椅子もこう広くちゃ落ち着かない。

人間のことを見てよく学んでいたつもりだったから、スムーズに移行できると思っていたのだが。
まあいい、この日記を次に自分で見返す頃にはもう自分が猫であったことなど忘れて、人生を謳歌しているはずだ。ここから身分証の発行手続きや、食っていくためにバイトの面接だってしなくちゃならない。

今夜は何者でもない自分として、気楽な夜を謳歌しようじゃないか。なにせ私に名前はまだない。


空白小説大賞に応募させていただきました!
とても素敵で面白い企画なので、書いてて楽しかったです!

#吾輩は猫であるで始まり名前はまだないで終わる物語
#空白小説
#ショートショート

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