サラダバス #毎週ショートショートnote【410字】
「み、右手に見えますのが東京タワーでございまして…」
駄目だ、どうしても吃ってしまう。
一人での初ガイドだから、先輩のアドバイス通りに乗客全員をじゃがいもだと思って見渡すけど。
"ちょっとこの車内寒すぎないかしら"
"ねえ、おなかすいた!"
ちっとも落ち着けない。
目線を感じると汗が噴き出すのが分かる。
"もう耐えられない、エアコンの温度をどうにかしてもらえるように言ってくるわ"
いや、そもそも皆んな同じじゃがいもには見えない。
この紫色のカーディガンを着た貴婦人は、ナスに似てるような気がする。
その隣にぼてんと座ってる子どもは、かぼちゃさん。
ああ、なんだ。
あの外人さんはアボカドだし、その彼女はプチトマトだった。
それじゃ私はドレッシングかな。そう思うと汗が引いていく。
夏野菜のサラダ達が乗ったこのバスはお皿。
目的地は誰かの胃袋の中…?
それはちょっと嫌だけど、笑えてきちゃう。
「皆様よーく目を凝らしてください、続いてご案内するのが…」
こちらの企画に参加させていただいております!
想像力が掻き立てられる楽しいお題をありがとうございます!
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