下界(パラレル)16 志乃と冴子

志乃と冴子

毎回とは限りませんが今作はエログロ描写や官能及び暴力的な描写を多大に含みますので20才未満の閲覧はご遠慮してくださいね♪
なお現実と烈しく乖離している部分が多いですよ
今回は今までの最終回兼まとめです。
やっぱり某アニメ以上に話が破綻していましたm(._.)m


慌ただしい毎日が過ぎてゆく中、私はめでたくともここ、小田井署の刑事に任命されてから1年を過ぎていた。
何、刑事とはいっても実際には無資格、無実績の身元不明者の1人に過ぎない。
そんな私を引き取ってくれたのはここで署長兼警部兼附属病院の院長もやっている葉類智恵なる熟女だ。
今私は彼女の下で日々毎日こき使われている。
それもほとんどがお茶汲みやトイレ掃除などの下働きばかりだ。
今日もまた風間達也達也なる先輩刑事にコピーの雑用を押し付けられて・・・もとい仰せ付けられたばかりだ。
こんなの新人がやる仕事だろうとは思ってはいるが口に出しては言えない。
私が最近しでかした失敗が原因だから文句は言えないが。
彼、風間達也刑事は下手に口答えをするとマグナムを引き抜き連続してぶっ放す悪癖があるから始末が悪い。
言っておくが拳銃のマグナムじゃない、下半身のマグナムだ。
エロ刑事め、さっさとクタバレ!とは思うが相手をしてしまう自分も大概イカれていると思う。
思えば奴と初めて出会ったのは奴の娘が銃殺された時に私がたまたま目撃者兼私が投じた石により犯人を殺害犯してしまったという実にややこやしい関係が始まりと言う、あまり認めたくない事実なのだ、故に一応私は殺人犯というカテゴリーにも分類されているらしい。
そんな私を葉類智恵なるババアもとい熟女はそんなややこやしい立場にも関わらず『葉類亜希』なる偽名まで用意して養子として迎えてくれた。ありがたい気はするが風間達也刑事と葉類智恵警部は元夫婦だ。
そんな彼女を差し置いてほぼ毎日のようにエッチをする達也刑事と私、亜希の関係を見て彼女は何も思わないのだろうか?

少し心が痛むがよくよく考えてみれば私は彼女の娘の仇をとり附属病院に仕掛けられた何者かのテロ行為からほぼ命懸けで患者さん達を守って。
挙げ句の果てに犯罪の巣窟『さぬきがわ学園』に送り込まれて悪魔みたいな敵と戦わされて。
そのあと私が勝手に関わってしまったことなんだけどエロい寄生体と戦う羽目になって妊婦さんの気分になる奇妙な体験までさせられて。
つい最近は思い出すことも体が拒絶するようなエグい体験までさせられてこれはもうフレンチのフルコースでも奢りで祝ってもらうのが当然だと言う気分になっていた。
そんなある日の昼食時に私のノートパソコンに一通のメールが届いた。
発信日を見ると去年の825日、差出人は私の悪友の倶名尚愛だった。確かこの頃は私とは関わりがないはずの私宛になぜメールが?と言う疑問が湧いたがその謎はすぐに解けた。
先月の生死を賭けた戦いの中、彼女と観萌、そして志乃ちゃんの3人が加勢してくれたおかげで私はこうして日常を堪能できているのだ。
しかしそれにしても何故今頃になって?と言う疑問が生じたがその謎はすぐに解けた、彼女、愛は日時指定で自分の所有するサーバーから自動転送をする様に設定していたようだ。

わざわざそんなことしなくてもいいのに、と思ったがよくよく考えたら去年の私にいきなりメールを送られても私がパニックに陥ることくらい彼女も計算済みだったのだろう。
しかしそのメールの内容を見て私は驚愕せざるを得なかった。
「オース、元気してる?」
その出だしで始まる文書はやはり彼女は国会議員には絶対に向かないと思わざるを得なかった。
「つい先日、志乃ちゃんに会いました、いや、見た目はどう見ても女子大生だったから志乃さんと言うべきかも知れん。
時系列的にはもう銃殺されているはずなので『何故?』と尋ねたら彼女は少し悲しげな表情を浮かべながら『自分が銃殺される前に愛さんに会っておきたかった』と言っていた。
どうやら時間移動で自分が殺される運命は知っていた。
そこで思わずあたしは訊いてしまった。
『あの男達に孕まされた子供達、娘達は今どうしているのかと?

もちろん自分が恐ろしく残酷な事を訊いてしまった事は理解している。でもきかずにはいられなかった。
1番最初に生まれた子は未来の世界で気立の良い夫婦にふたり目の娘と一緒に引き取られたそう、しかし彼女達は軍人達に陵辱された挙句非情な末路を遂げたそう。
そして3人めの娘、観萌さんは多重人格の少女と未来世界で結ばれて恐らくは平穏に過ごしているだろうとのこと。
思わずあたしは尋ねずにはいられなかった。
『あなたは自分が死ぬことは怖くないのですか?』と。
彼女はしばらく迷った後に答えた。
『私は幼少期に自分よりももっと酷い目に会っていた少女の夢を見た』と。
彼女はあらぬ罪を着せられて児童養護施設に送り込まれた。
彼女は外から鍵のかけられる、いいえしょっちゅう鍵のかかった部屋に閉じ込められてろくな食事も身の回りの身だしなみをする権利も与えられていなかったみたい。
やがて彼女はどこからともなく現れた男たちに毎日のように性的暴行を受けるようになりその都度、大事な穴を医療機器で弄られた。
しばらくして彼らは少女の胎の中に受精卵ができている事を知るとそれを慎重に抜き取って大量にコピーを製造された。
そのすぐ後、一週間も経たないうちにその受精卵は失敗作である事を告げられた。
そして彼女は実験体としては不適合だったと告げられ処分されることが告げられたそう。
ごめん、こんなことはメールで済ませられる話じゃないよね、志乃さんにその話しを聞かされた時も数日経った今もあたしは怒りを抑えることが出来ない。
実はその後、その幼い少女は大勢の男達の慰み物になって命を落としているんだそうだ。
しかもその直前に彼女の親友は入所と同時に自動小銃で蜂の巣にされて非業の死を遂げたと言う絶望を味わされて生きる気力を失った直後にどの仕打ちだよ?
でも唯一の救いは彼女達をその悪夢から志乃ちゃんが引っ張り上げたことらしい、彼女が夢から覚めた時はその娘達が自分の中にいて・・・」
私はそこまで読んでメールの続きを読むのをやめた、その内容にどこか心当たりがあると言うか引っ掛かる部分があったからだ。
「緊急というタイトルで私は愛にメールを送った。
内容は「国会議会のない時に時間の連絡をして小田井署に椎奈を連れて来たし」だった。
そして続けて冴子さんのメアドにも同様なメールを送っておいた。あの別れ際の寄生体との会話から考えると志乃さんはどうやら冴子さんを追って時空を超えてやって来た異星人である可能性が高いからだった。
しかも彼女の能力は異星人である事を考えて差し引いたとしても異常に高かったとしか言いようがなかった。

「彼女は未来においても過去においても警戒される存在だった、自由自在に数万年単位で未来にも過去にでも跳び、それも尚且つ自身の老化や幼児化といった代償もなくやってのけた、そしてその能力はそれに留まらず数百光年もの瞬間移動さえ身につけていた、それだけでなく彼女、志乃は何度も何度も冴子の身体も意識も自分の近くに復活させる能力も持ち合わせていた、そしてそれらは放射線生物の干渉さえ一切受け付けなかった」

私には達寄生体が言っていたセリフが耳に引っかかっていた。
彼女の並外れた能力の事ではない、彼女は一体どこで生まれて、どこで育ったのか?そこだった。

どちらからもメールはほぼ瞬時に返信されてきて私のスケジュール管理メモには6月1日の日にチェックが入って午前10時と記入された。

私は当日は非番というのもあって薄い緑色のショートパンツとオレンジ色半袖のポロシャツ、足元は赤い上底サンダルだった。
いや、ベタのサンダルだと背が低いから小学生に見えちゃうからじゃないよ?ちゃんと出ているとこは一応出ているし、お化粧なんかしなくても。ただ天気が良すぎて淡い色のサングラスなんかをかけていたんだけど・・・

「君、一体どこの小学校の子かね?今は授業がある時間だろう?飴玉あげるからちゃんと学校にお行き」
ほーら、さっくお巡りさんに声をかけられてしまっていた。
本当は小田井署署庁内で待ち合わせる段取りだったのだが約3名、つまり私以外の全員が『そんなかたくるしいところで会うのは嫌だ』という理由で駅前のカフェで待ち合わせることになったのだけど背が低くて童顔な私は早速児童補導の対象にされてしまっていたわけなんだけど・・・、よく見たらうちの署の交通課の警察官じゃないか?
仕方がない、一瞬だけサングラスを外して「私よ、私、葉類亜希」と言ったが全く信じてもらえなかったのか「どこの小学校の子かね」と訊かれる始末だった。
「あれ?亜希ったら食い逃げ現場でも差し押さえられたの?」
背後から聞き覚えのある声!女子高校生衆議院議員の倶名尚愛だったそして隣にいるのはマネージャーの椎奈さん。
倶名尚愛も私とほぼ同じ体型と似たような童顔でただし服装は馬子にも衣装の薄い水色の夏の薄い生地の半袖ブレザーを着こなしていた。もちろん彼女が通っている高校の制服だ。
「ちょっとぉ話が違う、お互いに私服って約束だったじゃない!」
私は耳打ちをして抗議をしたが愛はシバラックれて「そーだっけ?」と言いやがった。
ちなみに隣に立っている椎奈は紺色の長尾でスーツなのだが気温30度を超える炎天下の中暑くはないのだろうか?
「私、アンドロイドなもので」とか唐突に言い出しそうだから突っ込むのはやめたがうちの交通課のお巡りさん、何を思ったのか愛を見るなりいきなり敬礼をしやがった。そして言うことは・・・
「衆議院議員の倶名尚愛さんと美人秘書の椎奈さんですよね!ボク、あなた達の大ファンなんです」ときたもんだ。
どうして同じ職場で働いている私の顔を知らないで、選挙区が東京都で議会の最中、机に顔を伏せて惰眠をむさぼっていてテレビ中継にもほとんど映らないはずの愛とほとんど影武者の椎奈の顔を何故知っているのか理由を問い正したいところだが今日はあまり絡まれたくないのでやめておくことにした。
「冴子さんはいつ頃来る予定?」
私が愛に訊くと「彼女、貧乏だから在来線の始発で来るから多分昼近くになると思うよ」とサラリとお答えしやがった。
一応仮にもこの国の最先端をいく天才技術者だよ?新幹線の特急代くらい払えないわけないだろう。
「あの人、途中で駅弁を5種類は買って車中で食べる人だからねえ」と当たり前のように言った。
『いや、それって逆に金かからねえか?』と突っ込みたかったが踏み留まる。
愛は「付いてらっしゃい」と言って私たちを店の奥、
2階の部屋に案内した。どうやら顔パスの店らしい、この地元民ではないはずなんだけど?
愛はポケットから小さな箱を取り出すとそれを部屋中の隅々まで向けると安心したように案内されたテーブルの椅子に腰掛けた。
盗聴器や監査カメラのチェックだろうか?

「お子様ランチセット6人分とカストロールオイル20-402リットルお願い」と愛は自分の分と椎奈の分を当たり前のように注文をした。
「おい、そのお子様ランチセット6人分誰が食べるのよ」
私が突っ込むと愛はすました顔をして返してきた。
「もちろん、あたしよ」
当然のように言われても返す言葉が見つからない。
「つか立派な与党の衆議院議員がよりにもよってお子様ランチを
6人分も注文して大丈夫か?」
私の問いに愛はすました顔をして答えた。
「だってこの国の元総理はゴリゴリくんでさえ国費で買って食べちゃうような人だよ、私は自腹だから何の問題もないね」
私は早速ホールの人を呼んで注文した。
「スペースシャトルランチ4人前」
まあスペースシャトルをかたどった陶器も器に盛られた、早い話がこちらもお子様向けのメニューだがこっちは昼限定ではない。
しかし「早速どっちもどっちねぇ」とホールのお姉さんに笑われてしまった。

「それで、本題はあなたが聞きたい志乃ちゃんの正体ね?」
彼女はストレートに確認してきた。
「間違いなく彼女は葉類智恵さんと風間達也さんの間にできた娘さんよ」
やはり普通に地球人だったか?と思った時に愛は続けて言った。
「あくまでも戸籍上はね」
ただしそれは想定内だったなんせ私の戸籍も年齢から出身地、生まれた病院までもでっちあげて、もとい偽造して国の管理するコンピュータに書き込んでしまう強者なのだ、葉類智恵という熟女は。
「去年に書いて最近あんたが読んだメールにあたし、書いたよね?あんた達と別れた後で大人の志乃さんに会ったと、その時にあたしは彼女を御用達様の喫茶店に誘ってこっそり指紋とDNA採取をしてあんたも知っている観萌さんと冴子さんに調べてもらったんだけど驚くべき事実が発覚したんよ、彼女の指紋もDNAも地球人ではあり得ない代物だった、そして観萌さん、加えてあたしのもの、当然あたし達の取り巻きのほとんどがね」
彼女が衝撃の発言をして私があぜんと押している間に冴子さんが美人なホールさんに案内されて階段を登ってきた。
「まあもちろん冴子さんが地球人じゃないことも周知だとは思うんだけど、ここでひとつ疑問が湧いてきたことがあってさ、事後承諾で悪いんだけどあの事件の後で亜希の指紋をこっそりとさせてもらったのよ、気を悪くしないでね、あなたの過去話を以前に聞いた時、そう『さぬきがわ学園』事件の時に白い部屋に閉じ込められて性的暴行を何度も受けて最終的には採取できた受精卵が失敗と分かった時点で実験体としての価値を失い同時に、親友の銃殺も知らされ生きる気力を失い更なる暴行を受けて命を落とした女の子の話が以前に聞いた志乃さんを名乗る女性の話と似ているとは思ってはいたんだけど」
そこで愛は長かった台詞を一旦区切り「例の物を持って来た?」と訊いた。
すると彼女はすかさず「もちろん」と答え、続けて言った。「可愛いって評判のホールの女の子ちゃん、私に特大ロコモコランチ大盛りお願い」と言った。
まだ食う気かい!と思ったが愛の言った例のものが気になった。
冴子さんはカバンから小さな箱を取り出して綿の多い綿棒と白い粉、そして粘着テープのような物を取り出すと「これ、亜希さんが使っていたコップだよね?」と確認をして来た。
「そうよ」と私が答えると冴子さんは綿棒に白いヤバそうな粉を付けたりそこに青い光を当ててみたりそれをやっていないコッブの部分にテープを貼り付けてまた剥がしてそれを妙な機械にかけたり色々やっているうちに彼女が注文した特大ロコモコランチ大盛りがやって来て「ごめん、今、めっちゃお腹が空いているから話は後からね」と言って食べ出した。
確か彼女はここに来るまでに駅弁を5食は食べている筈なのにどこに入っていくのだろう?と見ていたら何と彼女は私たちよりも先に食べ終わっていてしまっていた。
どんだけ大食いで早食いなんだろう?とは思ったがそれは敢えて口にしにことにした。
「それで結果は?」と愛は冴子さんに訊いた。
すると冴子さんはすかさず「愛さんの予想通り、再検査でも正解」とだけ答えた。
「え⁈正解ってどういう事ですか?」と私。
「指紋の方はもう一回既に検査済みで今回のはその確認に過ぎなかったんだけど今回は指紋もDNA配列も完全に一致したわよ」
自信を持ってふたりに言われたが「誰と誰が一致したの?」
私は思わず質問してしまっていた。
「そりゃあもちろん志乃さんとあなたよ」
「ちょっと待ったぁ!それって同一人物って事だよね、でも私と志乃さんじゃ見た目も性格も全然違うけど!」
私は猛烈に抗議した。
「あのね、亜希さん、落ち着いて、DNAと言っても地球人と私たちのそれでは情報量が2桁多いの、しかも志乃さんや亜希さんを始めあなた達一族のそれは私の星に住んでいた一般人の更に8桁は楽に多い」
「それって私の遺伝子、DNAは無茶苦茶ムダにラクガキが多いって意味?」
それを聞いた椎奈が突然に爆笑を始めた。
「亜希さん、それナイスボケですよ」
いや、何で私が笑われているのかわけがわからない。
おまけに愛も冴子さんまで吹き出し笑いをしているし。
「まあ確かに情報量が多ければ多いほど良いなんてこともないのは事実ね」
「志乃さんは最初は私たちの星の住人でした、ごく普通の家庭で育ち3歳までスクスクと成長しました」
「はいはいそれはよござんしたね」と言いかけて言葉に詰まった。
「確かそれって」
「私があの研究所でアンドロイドを開発していた時、私は1人の娘を預かっていてその時彼女は既に3才でした、これが何を意味するのか分かりますか?」
いやますますこんがらってきた、しかもそれは確かいつの時系列の話?
「私自身が混乱していましたが研究所で椎奈の開発に参加していたのは確か20年以上前からです」
冴子さんは言っておいて首を傾げている。
そもそも何で冴子さんは椎名の開発に関わる事になったんだ?

「私たち4人の来訪目的は表向きは惑星調査だという事は知っていますよね?」
冴子さんの問いに私は「うん」と答えた。
「でも事実は違っていた、私たちの星はもう既に放射性生物の影響で暴走化した男性達によって人口は激減していた、特に女性はもはや10,000人を切っていた、そこで世界中に危機感が募りどこの国も外陽系惑星に「調査目的」と偽って数千隻の宇宙船を使ってまだ影響を受けていない住民達を逃そうとしました」
あ、それも聞いた気がする。
「でもそれはほとんどが」
と私がいうと彼女は続けた。
はいほとんどの宇宙船が星を飛び立つ前に最終戦争に巻き込まれて宇宙の塵(チリ)になりました」
「そしてこの星に20年前辿り着いたのがあの男達3人とあなたの4人ね?でも志乃ちゃんは?一緒の船には乗れなかったんでしょ?」
愛が指摘した、確かに志乃ちゃんはどこから来たのだろうか?
「はい、彼女は私の親友のひとり娘でした、彼女は私に非常にになついていましたが4人までという定員の都合上、彼女は父母と一緒に私達の次の宇宙船で出港する予定でした、しかしその出航間際に彼女の父親が暴走を始めてしまいました」
「母親が惨殺されたということですね、でもあなた達には時間を戻す能力があったのでは?」
椎奈が疑問を挟んだ、精神的ダメージはうけるかもしれないが命を落とすまでは発展しなかっただろうと思ったのだろう。
「いえ、その時点、彼ら、いえ私達にはそのような能力は存在しませんでした」
冴子さんはそれを否定した、そして続けた。
「志乃ちゃんの母親はおそらくは下半身の破裂で命を落としてました、そして優秀なパイロットのひとりを失いそこそ優秀だったはずのパイロットであった父親も任務を放棄して、実の娘にさえ手にかけようとし、私達は志乃ちゃんが乗っていた宇宙船が地表に向かって下落下してゆき、大気との摩擦熱で燃え尽きるのを黙って見ていることしか出来なかったのです」
「ふーん、なるほどね、それであなた達はワープ航法とやらでたまたまよく似た生物の住んでいたこの地球にやってきたと」
納得したように愛は言ったが冴子さんは首をひねってから言った。
「わーぷこうほう?一体それは何なのですか?」
「いやだからSFとかでよくある異次元空間の点と点を結んで光よりも早く移動出来る航法だっけ?」
愛の雑な説明を聞いて冴子さんはすごく驚いているようだった。
「すごいですね、地球人は!私たちの船で出せる速度はどんなに頑張っても光の速さの11,000がいいところですよっ?」
もう私達今更それがフィクションの世界の話だとは言いづらくなっていた。
「えーと、それまでは宇宙船の中ではナニを」と私は思わず尋ねてしまった」
「もちろん、この星でいうところのコールドスリープです、果報は寝て待てです」
よくそんな言葉を知っているなと思いつつ話を続ける。
「どれくらい時間がかかりましたか?」
「宇宙船に搭載された機械の記録によるとこの星の時間に換算して約6700年でしょうか?」
いきなりとんでもない数字が出てきた。
「とは言え私達の寿命はこの星の時間換算で7,000才ですからそんなに大した事じゃ」
20代前半にしか見えない彼女は笑いながら言ったが本当はいくつか凄く気になった。
「ちょっと、そうなるとあたし達の実年齢もわかったものじゃないわね」
愛は私にこっそりと耳打ちをした。
それが聞こえたのか冴子さんはささやいた。

「自分達の本当の歳を知りたい?」
冴子さんは微笑みながら言ったが私達は思わず全力で首を横に振った。
「それでこの星に来た4人は一体何を始めたんですか?」
いや、それはあの秋子という淫乱女、じゃない悪友に聞かされているような気がしないでもないが一応聞いてみた。
「あのムキムキマンは表向きはヘビメタバンドのドラム叩いていたわね」
まあ聞いていたのとは少し違った気がしたがイメージ通りだ。ギタリストじゃないのは時間線の違いからか?
「で、本稼業は?殺し屋、趣味は拳銃の分解」と冴子さん。
ウソでしょ?あんな太い指でどうやってあんな細かい部品を分解するのよ、と突っ込みたかった。
どっちかというとロケットランチャーを背負っている方が似合いそうだ。
「それでサラリーマンは?」
一応聞いてみる。
「もちろん軍事産業のエリートサラリーマン、趣味は毒ガスや洗脳ガスの製造、」
こっちもなんかイメージとは少し違った。

どっちかというとノートパソコンを前に無人爆撃機を飛ばして大量殺戮をしていそうだ、
「じゃあリーゼントは?」
「エリート弁護士、じゃなくてスラップ裁判専門弁護士」
表じゃ悪徳政治家もやっていそう。
ロクでもない奴らばかりじゃないか?モンスター化したのも当然だよ。
「じゃあ冴子さんは何であんなアンドロイドの開発に参加したの?あの椎奈って娘は明らかに男性に対する性的サービスが開発目的だったよ?」
私は彼女がそう言ったことに無頓着だったとは信じられなかったのであえて訊いて見た。
「はい、私はそういった電子工学関係やプログラミングくらいしか能がなかったのでとりあえず求人案内に申し込んだら受かってしまっただけの事です」
そこまで話を聞いて大体の予想はついてきた。
「採用されて小さなアパートを一室与えられて転々と引越しさせられてましたけど、十何年過ぎてある日紹介されたアパートの部屋に入ったらそこには既に志乃ちゃんが鎮座していたと」
私がいうと冴子さんは首を縦に振った。
「だからね、まさか冴子さんが働いている間アパートにひとりにしておくわけにはいかなかったから漫湖保育所に預けたと」
聞き覚えのある声に振り返るとそこには観萌と彼女の恋人、月海が立っていた。
それにしても観萌、お前わざと保育所の名前間違えただろ。

「母の親友を訪ねて6.7光年、泣かせるじゃねえか」
月海が勝手に感動しているほかっておくに限るな。私はそう思いながらも質問を続けた。
「なぜ彼女は自分のあとをつけて来たと確信しましたか?」
とバカな私。それはもう冴子さんの姿を見るなりいきなり抱きついてくればわかるというものだろう。
「ってか本人に直接話を聞いた方が早くないのか?」
何故かあつことかなえもいる。
「あたし達も短時間と短距離なら時空間移動できるって事を忘れちゃいないか」
褐色の肌をさらに赤く染めてショートカットの美少女あつこが言い、ヘアスタイルを少し内巻きのボブカットにしたちょっと肉感の豊かなメガネっ娘、かなえが大量のフルーツタルトケーキ入った箱を抱えて立っていた。
「おいおい、いくら愛が知り合いの店でもそんなに大量の持ち込みはダメだろ」
私は思わず抗議した。私にはこのお店を指定させてもらった責任がある。
「パーティ主催者の私が言うんだから問題ないでしょ!」
と幼い声、そこに立っていたのはどこからどう見てもあの幼き日の志乃ちゃんだ。
「なぜ今ここに、って顔をしないで順を追って話すから」
そう言いながら志乃ちゃんは新たに入って来た御一行様に手を振っていた。先頭から月輪、銀、花奈、香織、加世、椎だ。
いくらなんでも呼びすぎじゃ、まさかとは思うけど、『A』『B』から『G』を始め『L』でいる。由紀に有希、さとみ?え?確かさとみと観萌は同一人物じゃ?
「一応500人は入れる店をお願いしていたはずだよな」
その野太い声は楓凛、そして本家『敦子』こと「ニナ」
「ごめん姉妹とその保母さんたち、生みの親達も連れて来ちゃった」
もうここには一体何十人、いや何百人いるんだ?まさか『さぬきがわ学園』の全生徒も連れて来たんじゃ?
そんな店どこにあるんだよ?一体誰がこのクソでかい店の貸切代と飲食代を払うんだ?
薄給の私じゃ無理だぞ!
「あら、あなたのお義母様がいらっしゃるじゃない?」
そういったのは山崎秋子!何故ここにいる!
「招待されたからに決まっているじゃない葉類智恵警部に」
「もちろん私も忘れないでね」って何故前田リナと幼い志乃ちゃんが喋っている?
「私は地表に堕ちてゆく宇宙船の中で私を陵辱しようとしていた暴走する父から逃げることしか頭になかった」
まだ幼い志乃ちゃんがゆっくりと自分を語り始めた。

気がつくと私は古い建物の中に乱された衣服のまま呆然としゃがみ込んでいました。
そこにガチャガチャと音がしてドアが開いて入ってきた女の人を見るなり私は何度もつまづきながら全力でその人にしがみついてしまった。
何故ならその人はもう永遠に会うことが出来ないと諦めていた(SAE-Co)冴子さんだったから。
私達は当たり前のように一緒に過ごし始めました
しかしある日、私は恐ろしい夢を見ました。大きく成長してセーラー服を着た私が大男に襲われて激しく抵抗するも諦めたように動かなくなる夢を、その夢はちっとも醒めてくれなかった。
私はそのあとで何もない空間に逃げて妊娠して赤ちゃんを産み落としてしまいました。私はその子を何度殺そうとしたか思い出せません。でもそれは出来なかったようです。
その子が今の私くらいになった頃、私はその子から逃げるようにしてその空間から去り、卑怯にも何事もなかったようにセーラー服の姿の自分から人生をやり直しました。後で夢の中で知りましたがその子は研究者によって暴行を受けて悲惨な死を遂げたのを目撃してしまいました。
「何だ、そんなこと気にしていたのか?あたしはむしろあんたに感謝しているよ、確かに酷い目にもあったけどこうして多くの仲間と関わり合えたし」
そう言ったのはあつこさんだった。
でも人生のやり直しなんてやっぱり無理でした。
時間を置かずして私は別の男に陵辱されてやはり妊娠してしまい何もない空間で今の私くらいになるまで育てて逃げるようにその子を捨てて元のセーラー服の自分に戻りました。その子はもっと悲惨な死を遂げました。何と自分が育てた我が子同然の少女に斧で頭を割られて命果てました。
「うん、その時は私もあなたを恨んだ、でもすぐにこっちの世界に転生して姉に会えて嬉しかった、だからこのクソッタレな時代と戦えたと思う」
かなえが言った。斧で彼女の頭を割った少女とは、未来の研究施設の実験体であった『ニナ』、つまり敦子のことだ。
「ううん、その件に関しては私もお母さんと同じ事をされて変な種を植えつけられてネグレストになっちゃった、ニナも守れずにあいつらにニナもグシャグシャにされてしまった私だってニナに謝りたい」
そう言ったかなえの手をにぎり謝ったのは軽いカールのかかった頭髪をポンポン跳ねさせた少女敦子、私が『さぬきがわ学園』で出会った何でも召喚できるばかりか男だろうが女だろうが性転換できてしまう変態さんだ。
「バカじゃん、私がもっと落ち着いて行動すればかなえさんはあの世界でも死なずに済んだんだよ」

いいえ、私は救いようがないバカだったのよ、見た目の幼さに甘えて未来の自分を3度にもわたって救えなかった。私はまたしても見た目が優しそうなサラリーマンに襲われ、陵辱されてやっぱり何もない空間で妊娠して私くらいの歳になるまで育てるとやっぱり逃げるようにその子を見捨ててセーラー服の自分に戻って何事もなかったように記憶から忘れ去って学生生活を始めた。

「あーなるほどね」
私が呟いた。
「その経験がどこか頭の隅に残っていて過激なまでの暴漢対策、スズメバチ退治用ジェットスプレーや強力LEDライト、発煙筒などの防衛策に繋がったわけね」

私は納得が言ったが全然納得していないのはさとみであり観萌も同じく怒りに震えていた。
「何であなたが負い目を感じなきゃいけないんですか!悪いのは未来のあなたを襲った男達でしょ!」
観萌に続いてさとみが囁いた。
「あなたは全然逃げてなんかいませんでしたよ、私達3人にはあらゆる時間と空間を移動しながらも、ちゃんと家族になってくれる人を探して土下座をしてまでお願いをしてくれた、その事実だけは確かです」

「それに私達は名前は明かせないけど『さぬきがわ学園』での地獄のような日々から、いいえ、一度は死んでいた私たちふたりを取り込んで未来に連れて行ってくれた、そして復讐もさせてくれてその虚しさも教えてくれた、そこで私達は自分達の怯える子孫達と出会い彼女、未来の愛さんの中に残ってその子達を育てる決心がついた、それも志乃ちゃん、あなたのおかげだよ」
いつの間にか現れていつの間にかその少女ふたりは存在感をかき消した。

今のは誰だったのか?それは私は知っていた『さぬきがわ学園』に向かうシビリアンの中で夢うつつの状態の時に出会ったふたりの少女だ。その車中でアイスを食べたり、それから私は何度も夢の中で彼女達に会っている気がする。
そんな私の口を志乃ちゃんの小さくてかわいい掌が塞いだ。そしてそっと呟く「それは永遠に秘密です」っと。

未来の私はその後も大きな罪を重ねていました。
子孫の、強制的に作られた遺伝子操作された子孫でしたが彼らがこの星の未来を破滅に導くことは止めなければいけませんでした。
しかしその時私が殺害したその数は150体を超えていたかもしれません、私は生きていた彼女達をひとり残らずに細切れの肉片に変えてしまった極悪人です。

「おっしゃる意味がわかりません」と『B』が言った。
「じゃあ何でオレ達ここにいるの?」と『L
「あなたが私達を亡き者にしようとしに来るのはわかっていました、しかし私達は一つの可能性に賭けたのです」と『B
「うちの『G』って奴がさ、オレ達は『ゴキちゃん』って呼んでいる出来の悪い彼女なんだけどさ、あいつ死んだ奴、っていうか殺された人間の魂というか、そういうのを人格を丸ごと吸収してしまう特殊な脳力があった、からこそ今のうちらがいるんよ」と他人の能力なのに『L』は自分の物のように自慢した。

「ちょ、ちょとぉ、『L』さんったら私おオカルト映画の霊魂喰いみたいな言い方やめてくれませんか?」と『G』本人、他の姉妹と違い彼女だけがショートカットで容姿もあまり美人じゃない、でも気だけはいちばん強そうに見える。

志乃ちゃんはそれを聞いてますます理解できない顔をし出した。
「えーと志乃ちゃんはパソコンとかでバックアップって言葉があるのを知っている?」と唐突に『B』さんが確認した。
「最初は彼女、『ゴキちゃん』は夢の中で自殺を図った多重人格の女の子の意識を彼女の身体の遺伝子情報ごと自分のそれに書き込んでしまったんです、『ゴキちゃん』のDNA自体の容量がただでさえ空き容量が多かった彼女は自分自身のDNA情報容量をさらに増量化させてその時私はこの子は何人分バックアップ出来るんか興味持ち出してね、その後、『ゴキちゃん』自身が不本意ながらも泣きながら殺害した『前田リナ』なる幼女まで取り込んだときにとんでもないことを彼女に教えられたの」
と『B』さんは志乃ちゃんに本当にとんでもないことを言い出し始めた。
「殺害した筈のリナちゃんが突然に『G』の前に出現して彼女に言い寄ったんだ、『私はこいつに取り込まれたのよ、責任をとって!』と言ってな、そしたら『ゴキちゃん』の奴、言いやがったんだ、『好きな時に出て来ればいい、あなたが出たい時に実体化してあげる』って、それを聞いてそのリナちゃんって娘泣いていたんだよ」その後をつなぐように『L』が繋いだ。

「私たちの中でも『ゴキちゃん』は特に異端な存在なんです、この星の『魔族』と呼ばれる異端の怪物と対等に渡り合い、本来なら輪姦されまくった挙句に惨殺されるはずだった彼女は、逆に彼らの身体の中に一体ずつの娘となる種を植え付けました、それがここにいる彼女達『月輪、銀、香織、花奈、加世、月海、椎もして彼女だけはさとみと一体化しましたが観萌』の8人です、そんなにすごい能力持っていても『ゴキちゃん』はそれまで同様に私達と付き合って来れました、そんなある日、私たちのメンバーのひとりが未来予知能力で私達全員が始祖、恐らくは志乃さんを中心にした戦士に皆殺しにされる未来を100%の確率で確認しました」と『B』。
「その時、避けられない未来なら『ゴキちゃん』にかけてみるのもありかと思いました」と『A』、なんかやっとセリフを言えて嬉しそうだった。
「だから『ゴキちゃん』には私達からお願いしたんです、『私達が惨殺される様をそれから目を逸らさずに彼女に見つからないように隠れて見守って』くださいと」そう言ったのは『H』だった。いやいや何で君まで感涙している。

あなたは『ゴキちゃん』に気づくことなくその場を去りました、さすがに彼女は100体を超えるバックアップはできませんでしたが」そう言った『B』を見て急に椎名ちゃんの顔が青ざめた。
「私もその様子は影から見ていました、確かに未来の私は、彼女を一体見落としていたかもしれません、でもその後でもっと恐ろしいことが・・・

彼女はそういうとその頃の自分を語り始めていた。

私はあの放射性生物との戦いが終わった後、椎奈は観萌と愛と一緒に前年の夏日に帰って、私と冴子さんは17年前に跳びました。
そこに待ち構えていたかのようにモンスター化したあいつら3人組が冴子さんを茂みに力づくで引き摺り込んで破裂させて身体ごと粉砕させました。
私も陵辱されそうになって、絶対絶命になった時に2人の警官が現れて奴らを撃退して来れたんです。

「うーん、激しくご都合主義な話になってるな」
そう言った私にはその時の光景が浮かぶようだ。
「まさかと思うけどその婦人警官さんは『鬼も裸で逃げ出すような恐ろしい形相』をしてませんでしたか?」
そう言うと志乃ちゃんは急にその当時を思い出したように青ざめた表情になった。
「はい、そうです」
「じゃあ男の警官はそのモンスターも裸足で逃げ出しそうな立派なマグナムを股間に持ってませんでしたか?」
念のために確認した。椎奈ちゃんの顔が絶望的に真っ青になった。
「はい、そのズボンのチャック下げてモンスターも裸足で逃げ出しそうな大きいものを取り出して『その可愛い娘に手を出したらけつ穴ぶち込むぞ!』って大声で叫びながら2人して拳銃を乱射してました」
とか言いながらその後、顔が少しだけ紅葉して嬉しそうな表情にになって言った。
「奴らを追い払ってから言ってくれたの、『私らの娘にならんか、もう2度とあんな奴らに襲われんように守るよ」
確かにあのふたりなら言い出しそうなセリフだった、だがあの風間達也刑事の女癖の悪さだけは何とかならないもんだろうか?

「それはともかくさっきの話の続きですが139体でしたっけ、自分の遺伝子組み換えされているとは言え処分した後で何がありました?」
一応念のために聞いておく、全く記憶にないと言うわけでもないのだけど私自身よく覚えていなかった。

私はかつて遭遇したことのないほど禍々しい大勢の魔物達に襲われてほぼ瞬間的に惨殺されていました。自分の手足がもがれて、あのモンスター達が冴子さんに行った暴行さえ可愛く思える乱暴を働かれて私の体は施設の床の上でドロドロの液体にされて私は意識を失いました。

ああ、1回は『さぬきがわ学園』で2度目は北海道の『バミッテ』で私達を襲撃いた奴らね。まあバミッテでは逆に相手をミンチにしてやったけどオーナーの葉類智恵に大掃除をさせられた悪い記憶しかない。

それからしばらくして私は何もない空間で意識を取り戻しました。

「ああ、また孕まされちゃったかなぁ?」
忌まわしい記憶だけがよみがえりました。

「そんなことはないよ、君は僕と同じように保護されただけだから」

そんな声がどこからともなく聞こえてきたんです、でも相手の姿は見えませんでした。

私はまたひとりになってしまったの?

その声の主に私は問いかけてみました。

返事はまったくありません。

「君はどこから覚えているの?」

しばらくしてへんじがありました、まるで少年のような口調で、だから私は訊き返しました、『あなたは男の子ですか?』と。

彼はしばらく考え込んだ後に答えて来ました。

「君に話してもうまく伝わるかどうかわからないけど君が言う通り僕は男の子だったつもりだよ」

私には少し理解のできない返事が返って来ました。

「でも僕の体は女の子だったんだ」

なに?それふざけているの?私は思わず彼に強く反応してしまいました。

「どうしたの?ユーキくん、誰とおしゃべりしているの?」

今度は女の子の声が聞こえて来た、記憶の中のさとみさんくらいか愛さんより少し若いくらいだろうか?

「あー、ユーキくんの事情は複雑だからちゃんと説明してあげないと理解してもらえないよ」
そのショートカットの気の強そうな少女は言った

「ユーキくんは実は由紀という女の子と一つの体を共有していたんだよ、でも由紀ってって娘は引っ込み思案でいつもユーキくんの影に隠れていたんだよ」

私の視界に2人のアベックが入って来た。ふたりはどことなく見覚えのある娘だった、そしてもうひとりは夏服の男子生徒の服を身につけていた、白いカッターに黒いズボン、ちょっと目には男の子だったが胸の膨らみなど女の子の特徴は隠しきれていなかった。
そしてふたりは別れてそれぞれの家路に着くといきなり白いカッターの少年は大人の男に陵辱を受けていた、衣服を乱されて大事な身体にたっぷりと白い液体を注入された彼女は身籠ってしまったばかりか今度は数日後その時の写真をネタにゆすられてふたたび同じ行為を強要された、

「その時に彼女、由紀がいなかったら君は確実に死を選んでいたね」
少女の声はそういうとその後の彼女を私に見せた。

「その頃はすでに彼、ユーキくんは私の中に居たんだ」

「由紀はその世界の法律ではもう人工中絶が許される時期を過ぎていた、そして学校は義務教育中だったにもかかわらず自分達学校の面目を守る為に『由紀の非行』を理由に教育を受ける権利さえ剥奪して戸籍も人権さえ奪われて退学となり1人寂しく校門を出る彼女を待っていたのはユーキと付き合っていたさとみちゃんでした」

さとみ?なんで3人目の私の娘が?

「知り合いなんですか?」
少女が私に尋ねた。
「はい、サラリーマンに乱暴されて産んでしまった私の3人目の娘です」
と私がいうと彼女はしばらく考えた後に私に告げました。

「まずあなた、志乃ちゃんにはいくつかの選択肢から選ぶ権利があります」突然に少女の声がしました。
よく見ると成長して男達に陵辱されて孕まされていた頃の自分によく似た少女が人差し指を立てて言いました。
「あなたは風間家に引き取られて4歳まで何事もなく親娘3人で暮らしていました、しかし警部と刑事の職業柄、あなたを相手する時間が少なくバイトで冴子さんを雇いました、特に冴子さんは電子工学やロボット工学系に精通していて義母である智恵さんにとっても志乃ちゃんの面倒も見てもらいながら自身のロボット開発の手伝いもしてもらえると大喜びでた。最も私が興味を持っていたのは火山や人工地震、乗り物などで彼女とはあまり話は合いませんでしたが。

「ちょとまったぁ」
私は志乃ちゃんの話に割り込んだ。
「どうも妙だと思ったらあのクソババァが造ったハイテクハリウッド警察署署長とか幼女ナースは宇宙人冴子さんのオーバーテクノロジーを駆使しやがっていたのか⁈」
そりゃそうだよね、そんなすごい人に協力してもらっていたら・・・あれ?じゃあ椎名も智恵警部と冴子さんの共同開発?

「当たり前さね、あたいだってあんな無限波動砲の相手は出来ないよ、出来るのはあんた亜希くらいのものさね」
すぐ後ろで智恵警部の声が、いつの間に・・・
、っておい!私を元夫のセフレ代わりに利用したな!このクソババァ!

話を続けさせてもらっていいですか?

彼女はそう言って断りを入れると話をつづけた。
一見続くかに見えた幸せは長く続きませんでした
あのモンスターの3人組が風間宅に侵入して来て私の目の前で冴子さんを陵辱して破裂させて死なせました。
私は逃げるようにしてその場から消え、気がつくと研究室の一室で何度も何度も繰り返して陵辱されては、検査される、ただひたすらそれをくりかえされていた1112才くらい女の子がいました。
自分が3回も腹増された時よりも少し若く見える、ショーカットの褐色肌の女の子でした。
私は彼女には触れることも話しかけてやることも、なにもしてやれず、やがて彼女の胎の中に受精卵が出来ました。
彼女は自分の胎内からそれを取り出されると大量にコピーされました。
そしてそれはそこの学園に棲まされていた大勢の女子学生が自分達の胎の中に勝手に薬で眠らされている間に強制的に受胎させられました。
それから一週間も待つこともなくその受精卵は失敗作であることを告げられて少女は親友がすでに銃殺済みであると同時に「お前の処分決定」だと告げられて体力を大きく失っていた彼女は大井勢の男達の慰み者になり命をとしました。
もし実験が成功であれば10代半ばくらいに成長したその娘らがタイムリープして戻って来る手筈だったそうです。
しかし現実は恐怖に引きつった実験体によく似た少女の顔を持った頭部とそれ以外の手足な胴体がバラバラに引きちぎられて肉片と化した遺体だったそうです。
ーいったいなんのための実験だったの?ー
そこではじめてやっと私の中に怒りと憎しみの感情が生まれていました。
まず彼女が命を落とす前の時間に遡って彼女ごと自分の中に取り込みました。
そしてさらに時間を遡って銃殺される前の彼女も体と心ごと取り込み逃げ出すように未来に飛んで白い大きな部屋の研究所にたどり着くいた私は憎しみの感情に支配されて暴走する自分はそこに居た研究者達を皆殺しにしました、そしてそこそで裸にされて怯えている何代か後の私の子孫達56人に出会いました。
ごめんなさいそこからはよく覚えていないのですが。

そう悲しげに語り続けた3才志乃ちゃんはいつの間にか少しだけ成長をしていた。
そして涙を流している彼女は再び語り始めた。

その世界の日本は政権の暴走によって軍事化が進められてほぼ壊滅状態でした。その原因を作ったのはあの大量に作られた受精卵のコピーが成長した少女達によるクーデターが原因でした。
彼女達は一部の政治家や科学者が起きした人工地震によって壊滅した後に暴走していた政治家達のしもべとなって善良な政治家や科学者を次々と殺害して日本の軍事化を推し進めて世界中を相手に戦争を仕掛けていたのです。

「それが過去に遡って私達、工作部隊の皆殺しを考えた理由だったんですね」
志乃ちゃんに寄り添い『B』さんは囁いた。

「しかし現実は悲惨でした、彼女、志乃ちゃんと彼女達を取り込んだその娘は私達ほぼ全員11人を含む100人ほど殺害する前にあのモンスター達の奇襲を受けて惨殺されて、彼らの能力によって実験体廃棄が決められるきっかけとなったあの時代に肉片となった彼女を送り返したのです。計画では五体満足な実験体から取り出した受整体が戻ってくることが実験成功の証明になるはずでした。モンスター達は自分達に反乱する要因を潰すためにあえてそれを行いました」

私に与えられた選択肢は二つありました。
あのまま彼女達(意識融合体)の中にいてずっと平穏な日々を過ごすか?

それとも志乃として再び独立して風間家の娘、風間志乃として生きるか?
私は迷わず後者を選びました。理由は私が志乃個人として単独で生きている限りまた冴子さんを何度でも冴子さんと合うことができると思ったからです。

「それはどうして?」
私は志乃ちゃんに問いかけてみた。
それはまだ幼い私にはよくわかりません、10年先、いえ、もっと先の凶悪犯に銃殺される寸是の私にさえそれに対して答えは出せないのかな?って気はします。

次の瞬間店内にいたほとんどの仲間達の姿がかき消すようにして消えていた。
あれほど大きく見えたこの店の2階席もテーブルが3つくらいしかない10人くらいしか座れない狭いスペースに戻っていた。
今、ここいるには椎奈と愛と冴子さん、そして私、亜希の4人しか居なかった。
「私ら変な夢でもみていたのかな?」
と私がが言うと愛は大きく首を横に振って「確かに大勢いたよ、ただしあり得ない空間の中にね、亜希ならそれくらいわかるでしょ」と言った。
「私にも完全に解析できたわけじゃないですが」
愛のマネージャーでもあるアンドロイドの椎奈は前置きをした上でひとつ言及した。
「この空間がつい先ほどまで異世界と言っていいほどの別の空間に取り込まれていたのは事実です」
「はぁ?寝言も休み休みに言えよ」
突然に愛は椎奈に絡みはじめた。
確かアルコール類は一切口にしていない筈だが特異なやつだなと思いながら冴子さんを見ると彼女は志乃さんの亡くなる直前の遺影を手にして号泣していた。
やれやれ、今日は久々に事件以降あったというのにとんだお通夜みたいになってしまっている。
「ただ気掛かりなのはあの大量に発生をし続けてている『放射性生物ですよね、またあの時、あの星みたいに男性や女性たちを暴走させないか心配です」
泣きながらいう冴子さんの頭をゆるく撫でながら私は思わず呟いた。
「大丈夫、彼女は今この中にいるよ、志乃と冴子ふたりいれば乗り越えられない壁なんてもうない、それにあの時と違って私達には多くの仲間がいるからね」
ただし、その自信はどこから来るのか私自身にもわからなかった。
ひとつだけ分かりかけたことは私たちの始祖、はどうやらあの志乃ちゃんであることは間違いがないようだ。
あの日、風間刑事の目前で志乃さんは銃殺された。
てっきり私が彼女を吸収したとばかり思っていた。でも現実は全く逆だった。
私達の方が彼女に引き戻されたと言った方が正しかったみたい。
「あたしは政治でできることを精一杯頑張ってみるよ」
愛は椎奈を引き連れて席を立った。
「私もアキさんと言う強い味方を手に入れました、それに智恵さんと達也さんという強力な助っ人も得ました」
にっこり微笑んで冴子さんは言ったが私はそれは違うと思った、なぜなら彼らは。
『強力と言うよりは狂犬ですね』
心の中で志乃ちゃんがささやいた気がしたがまさにその通りだろう。

ところで私たちは店を出る際にレシートを見せられて支払いを請求されたけどその金額に驚愕した。
そしてすました顔をして店員は言った。
「はい、約900人分のお食事代7,849,364円でございます」
知らん間に『さぬきがわ学園』と『こじろう学園』の生徒や教師達、その他大勢の登場人物達もちゃっかり大飯を食っていた様子だった。

Fin.
まあ総集編というかまとめな感じですからこんな感じでご容赦を
。・°°(_)°°・。

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