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(毎週ショートショートnote参加作品)涙鉛筆

お父さんが涙鉛筆というものを買ってきた。涙色をした鉛筆らしい。

絵を描くのが好きな私は素直に喜んだが、お母さんは、また変なもの買ってきてとお父さんに文句を言い、たちまち喧嘩になった。

私の両親はいつも喧嘩をしている。
ある日も、仕事から帰ってきたお父さんにお母さんが何か言い、たちまち怒鳴り合いの喧嘩になった。

私は部屋に入り、昔家族で行った海の絵を描いた。
海の色は涙鉛筆で描いた。
透き通るような青色の海の近くで、私たちはみんな笑っていた。
絵の出来に満足した私は、明日先生に見せようと思った。

海の絵がコンテストに入賞したと聞かされたのは、2週間後だった。

絵を持って帰ると、大きな荷物を持ったお母さんが玄関にいた。
私が入賞した事を報せると、お母さんは泣きながら私を抱きしめて「ごめんね」と繰り返した。
おめでとうと言ってくれると思ったのに。

抱きしめられながら、私は思った。
褒めてくれるお母さんの姿をまた絵に描こうと。涙鉛筆を使って。

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(410字)

たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。いつも、ありがとうございます!

ハッピーエンドにしたかったのに、思っていたのと違う着地点になってしまった💦

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