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(毎週ショートショートnote参加作品)告白雨雲

「いつも舌打ちされるんですよね」
そう発した男とそれを取り巻く男たちの表情は一様にどんよりとしていた。

彼ら、雨雲の表情が冴えないことを気にした親分肌の入道雲は「告白雨雲の会」という雨雲の悩みを吐露する場を設けた。
悩みを皆で吐き出せば、きっと表情は晴れやかになるはずだと思っていたのだが、のっけから愚痴は止まらず、暗雲が漂っていた。

「イベントの時なんて露骨ですよ。運動会に遠足、老人会。こっち来んなって、老若男女から」
「そうそう。頭痛がしてきたのも雨のせいだ、とか」
「雨乞いの時は必死に祈ったりするくせに、長雨になると恨めしい顔してきたり」
「そのくせ、狐雨の時はちょっとラッキーそうな顔したりするんですよね。人間って」

いつまで経っても止まらない愚痴に、入道雲はキレた。
「お前ら、いい加減にしやがれ!どいつもこいつも薄暗い顔しやがって!」

静まり返った場で、隣にいた雨雲がポツリと呟いた。
「雨雲で嫌なこと。たまに雷が落ちること」

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(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました!

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