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「初号」とTVアニメーションの影響力

 あまり耳慣れない言葉を普及させようとするのだろうか?…ムキになって語る人がいる。
 時にはそれが古くから一般的に利用されているかの如くに。
 特に語感や口に出しにくさ、また会話の流れからでも意味を混同しやすい言葉であるとウンザリしてしまう。
 さてこの頃「初号」という言葉をよく耳にする。
 そしてそれは通常「機」を伴う。
 子供の頃にこの言葉を聞いたことがないし、過去に出版・製本の勉強をした時に当然目にした筈であるが、この言葉を耳にする・目に映るようになったのはつい最近のことである。
 そういえば大学受験までに英語の単語を10,000語近く覚えるようになるが、15年ほど前に全く馴染みがない単語が大手を振ってまかり通ったことがあった。
 Ultimate?
 もしかしたら暗記して忘れていたかもしれないが、この単語を口にせざるを得なくなった時があった。
 Windowsの更新の時である。
 電気量販店内での事だ。
 さて、なんて読む? 
 困った。
 仕方がないから「うるてぃめいと」と呼ばわった。

 あいにく自分で「初号」という言葉を口にすることはないのが有難い。
 だがねー、いるんですよ、この言葉が常識だって言う人が。
 戦前の文書によく出てくるらしい。
 特に軍関係でよく使われたらしい。
 確かに旧日本軍では奇態な漢語がよく使われた。軍の直営工場は「工廠」と言ったし、軍の本営では「鎮台」「師団」「旅団」「連隊」「鎮守府」「要港部」とか言いますね。
 もっと恐ろしいのは編み上げ靴を意味する「編上靴」をヘンジョウカと呼び、物干場をブッカンバと呼んだ。そしてこれに「没有」「老頭児」「快々的」などの兵隊シナ語が加わる…没法子。そういえば「酒保」なんて言葉もありました。
 初号を使うこともあり得そうだ。
 成程!
 しかし知る限りでは「初号」が使われるようになったのは、GAINAXが制作したTVアニメーション『新世紀エヴァンゲリオン』がテレビ東京他で放映されてからではなかったか。
 実は今でこそ好評を得たTVアニメーションは良く見るし、ゲームをやらない方針を堅持しつつもその世界で使われる言葉には同世代人よりよく知る方だと思うが、このアニメが放映された頃は都市とは何かを真剣に考えていた頃でテレビは全く見なかった。実は新聞さえも読まなくて、1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災を知ったのも当日正午近くになってからだった。
 実は地下鉄サリン事件でさえ全く認識が甘くて、起きた時の反応はこれ。「それぐらい起きても別に不思議ではないだろう、首都なんだから」
 まあ世事に疎かったんですな、自分。
 この作品について見る事になったのはつい最近の事で、日本テレビによる深夜放送だった。停電でもないのに始終ブラックアウトしたので何が何だか分からない。有名なせりふである「逃げちゃダメだ」とかは押し付けがましいとしか思えなかった。
 マアニゲマクッテイルジブンダカラネー…
 だからこの作品を敬遠してきたし、今もそうである。
 そういえば『機動戦士ガンダム』ブームにも乗れなくて、ひねくれて
田河水泡の『のらくろ』にハマってましたよ自分。自分にサンライズが認知されるようになったのはこれも日本テレビだったか『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』が放映された時で、これはお気に入りで良く見てましたねー。
 実は自分にとって自分が一番見ちゃいけない時(それは秘密!)に放映されていたのだけれど…この作品以来TVアニメの視聴は暫時途絶えました。
 さて「初号」という言葉の起源に入ります。これは新聞・出版・印刷関係の人なら誰でも知っているはずの単語で、というのは一番大きな活字が初号活字というのです。もっとも今日では活字は全く使われませんし、文字の大きさを表すのにポイントを使うのが普通ですが。業界人なら入社時に知識として教わるでしょう。
 因みに新聞雑誌の第1号が「初号」というらしいです。これは日本語の百科事典によりますと1899年に使用されていることが明らかになっています。
 いずれにせよ日常語としては死語かもしれません。
 しかし「初号」をよく使う業界があります。
 映像関連です。
 おそらくは試し刷りみたいなフィルムが出来た時に使用するようです。
 そしてアニメーション業界、これも当然映像関連です。
 おそらくGAINAXの担当監督か誰かが、意味に重みを持たせる趣向からか初号という言葉を持ち出したようです。
 こういう経緯を知らないで、初号という言葉をただの人が振り回してさらに正統性を主張するのはチト恥ずかしいですね。
 それにつけてもTVアニメーションの影響力、大きすぎます。

大正時代の図面が入っていた袋(国立公文書館本館所蔵)


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