北海道のフライフィッシング 桃源郷再び 第1章 『妻を説得する』
第1話
平成19年に出会った桃源郷のような川への思いは募るばかり。
しかし、残念なことに翌平成20年は引越しをしたこともあり、北海道へ行くことが叶いませんでした。
翌平成21年、今年こそはなんとしてでも行きたい。
しかし、妻の首は縦に動くことはありませんでした。
このまま一生あの川へは行けないのか、やはり桃源郷だったのか。そう思えば思うほどあの川への思いは募ります。
7月になりました。
例年なら、日程を調整し、旅行社との交渉・入金などを済ませる時期です。具体的な話を進められていない私に、業を煮やした義父が催促を始めました。
事情を話すと、数日後、義父母が妻に云と言わせるべく直談判にやって来ました。
まず、義父が、
「今年、バンブーロッドを手に入れた。是非とも北海道で使ってみたいんだ。俺のお伴に健司君を行かせてやってくれ。」
と、親戚が手作りしたバンブーロッドを見せながら言いました。
少し雲行きが変わってきました。
さらに、その親戚からの「手作りしたロッドを使ってください。」という内容の便りも音読し始めました。
確かに雲行きは変わりつつあります。
私はうなだれてチラチラと横目で妻の出方を待ちました。
すると義母が、
「健司さん、他になんにも楽しみごとないんやから行かしてあげたら。」
と、とどめを刺すような一言を発してくれました。こうなっては私が行けないはずがありません。
私は、
「お義父さんお義母さんがそう仰るんだから、仕方がない、行くか。」
という素振りは微塵も見せず、ただただ静かに流れを見守りました。
第2話
こうして、義父母の応援のおかげで、妻はしぶしぶではありますが、
「今年で最後にしてね。」
と言いつつ首を縦に振ってくれました。
カレンダーは7月を過ぎていましたが、8月の後半の釣行なら今からでもまだ間に合います。日程調整をして、決まれば旅行社との交渉です。
兎に角「桃源郷でもう一度フライフィッシングがしたい」という強い願いを叶えたい一心でした。
行き先は桃源郷の他にもう1本、桃源郷へ行く前の慣らしとして釧路空港から桃源郷の間で川を探すことにしました。桃源郷を見つけたときと同じ条件で十勝川の支流に狙いをつけました。
出発の朝、家を出るときには「完璧」という言葉が胸をよぎるほど準備は万全でした。
あくまでも「ここまでは」ということですが。
桃源郷再び 第1章
『妻を説得する』 完
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