絵本ゼミの仕上げ終了!

8月3日インフィニティアカデミアのミッキー絵本ゼミ、仕上げのリアルゼミが終わりました。
これまでの個人作業からグループ発表の為の共同作業に移りzoomが続く忙しい7月でした。でも、だんだんと発表する形が整っていく過程は過ぎて見れば楽しいもの。発表までを振り返り、その意義を考えます。
また、それとは別に写真家の佐藤圭さんの講演があり、最終日には大雪山写真ミュージアムの館長、市根井孝悦さんにお話を聞けました。市根井さんは、山に出掛けている事が多く、直接お話聞けたのは幸運だった、と後で知りました。これも、リアルゼミの醍醐味です。

1、発表の準備
(1)テーマを決める
4月に始まり6月には終わる、という濃縮された講義の後、さて、グループとして何に絞って探究するのか、ここが1番の難所でした。世界的な絵本の賞について学び、さて、どんな風に深めるのか?視点の持って行き方に皆戸惑いました。その他の賞を調べる?今まで取り上げられた絵本、作家について深掘りする?中々「これでいこう」と皆が思えるテーマが浮かびません。
「今期持ち寄った絵本にノンフィクションが少なかったよね。ノンフィクション絵本の受賞作を調べてみない?」と提案するも、皆の反応は捗々しく無く、暫くいろいろな案が浮かんでは消えました。
結局、時間も無いし消去法でノンフィクションを調べよう、となりました。

(2)ピーター・シスに辿り着く
まずは、これまで取り上げられたコルデコット賞、グリーナウェイ賞にどんなノンフィクションの絵本があるかな?持ち寄ってみよう、となりました。
また、ノンフィクションだけの賞ってあるのかな?という疑問も湧いたので、それも調べる事に。
すると、持ち寄った絵本の中でピーター・シスの絵本の迫力、技法などに皆の目が奪われました。
ここで初めて「シスでいこう!」と皆のベクトルが揃いました。

(3)さらに「かべ」へ
今度は、シスの作品を集めて、各自で読み込みです。その中で「かべ」と「マドレンカ」の表紙が似た構図でありながら、その取り囲む物の意味が正反対だ、と気付いた人がいて、私は「これだ!」と思いました。皆同じ思いで壁に絞ってシスの作品を見てみようとなりました。

(4)シスの生い立ちとノンフィクション
シスはソ連の支配下にあるチェコに生まれ、厳しい統制の中で育ちました。自身共産主義の考え方に違和感なく育ちます。でも、映像作家として外国に出る事を許されていた父から、欧米やアジアの文化に触れさせてもらい、ロック音楽などを通して自由な表現や思想を知ります。自分達は鉄のカーテンの中にいて、外の文化から遮断されている事に段々と閉塞感を覚える様になりました。
やがてアニメーション作家としてチャンスを得ると、アメリカに亡命します。市民権を取得、結婚もしたアメリカでの暮らしは世界への窓のある「かべ」に囲まれており、自分の子ども時代は鉄のカーテンという「かべ」に閉ざされていた、と客観的に見る事が出来る様になりました。
絵本作家となったシスは、自分の子ども時代を描いたノンフィクション、困難に立ち向かいながら己れを貫いた偉人達の伝記、そんなものを絵本にして子ども達に差し出します。自由の素晴らしさ、正しいと思う事をやり通す勇気、などを未来ある子ども達に伝えたい、どの思いからでした。

2、自分の担当
フィクションとノンフィクション

私は、シスに辿り着くまでの部分担当だったので、主にノンフィクションについて調べました。
ちょうど7月末、子どもの本の研究会の全国大会があり、最初の講演がシスの伝記の翻訳を多くしている原田勝さんだし、ノンフィクションの部会や読書会がいくつかあったので、参加してみました。
ノンフィクションとフィクション(虚構)の違いは特にきっちりしたかったのですが「子どもの本には感動や希望が必要。そのために必要な範囲でノンフィクションの中に虚構が用いられる」という児童文学作家の国松俊英氏の言葉が1番納得できました。
ノンフィクションはフィクションでは無い、と単純に分ける事は出来ないものであること。特に子どもの本の場合はそうなのだ、ということです。
また、この部会はヤングアダルトの部会との共催で、中学生〜大学生が其々の言葉でノンフィクションを定義したのが素敵でした。
中学生・・ぼくがその情報を必要とする時に待っていてくれる本
高校生・・一歩踏み出すための本
大学生・・何かを始めるための本

3、共同探求の意義
当たり前ですが、発表は1人では出来なかったものになりました。
くぼちゃんが「生命の樹」を紹介した事、おこちゃんが表紙絵の比較をした事、ぱたぽんさんがチェコの本を見つけた事、のりちゃんが結論を未来に結びつけた事、じゅんじゅんが客観的な意見で進め、またパワポを最後まで工夫してくれた事、そしてまきちゃんが地の利を生かして本やPCを準備してくれた事…丁度シス展が開催中、というのにも皆で盛り上がりました。
また、国会図書館から資料を引っ張り出してくれたり、団体貸出を乱用?して沢山の絵本を借りてzoomで紹介してくれたり、と其々が出来る限りの事をして共有してくれた事などが相まって、何とか発表にこぎつけました。
そして、夜遅くまで、時には居眠りしながらzoomで話し合い、チャットで励まし合い、褒め合い、相談し、一つのものを作り上げる中で、お互いを知り信頼も深まり、発表の時に初めて顔を合わせたにも関わらず、旧知の友になっていた事実がご褒美でした。
他のグループのも、楽しく学びました。例えばリンドグレーン賞について、というのでは、賞金については知らない事ばかりでした。賞を考える時実際問題として、お金の問題は重要なポイントだと今回のゼミで思ったので、そこが1番残りました。
そして、まとめ方。パワポの使い方だったり、1人の作家を取り上げるのでもやり方がいろいろあるな、と参考になりました。
同じ講義を受けながら、受講生の人数分の様々な視点ややり方がある。それが学べるのが最終発表です。
余談ですが、リアルで会って初めてその人の魅力が分かった経験もありました。zoomは大変便利な道具ですが、人との繋がりは、やはりリアルで育まれると再認識。

4、佐藤圭さんの講演・市根井孝悦さんのお話
今回のリアルゼミでは、フォトジャーナリストの佐藤圭さんの講演がありました。
「エゾシマリス 山の園芸屋さん」という写真絵本を2021年に出版されています。その中の写真のエピソードや構成上ボツとなったけど面白い写真の話など、大変楽しい時間でした。
佐藤さんの、自然の生物への愛、執念、こだわりが詰まった写真たち。生物だけでなく、留萌や大雪山などの北海道の美しい瞬間を写真という形で残し広め、見る者に考えさせる、すごい仕事をされているのだなと、話を聞き終わった時には興味は尊敬へと変わっていました。
同じく、すごい仕事をされている方が市根井さん。ミュージアムには、大雪山の四季が詰まっています。私は山登りの趣味は無い人間ですが、こんな瞬間に出会う為に大変な苦労をし、時には命懸けで登るのか、と少し納得。リアルで五感でこの景色を感じたい、と思いました。
写真家として認められ、施設を町から提供され、館長に就任。市根井さんの苦労は評価されて形を残しているのは見る側にとっても幸せな事です。
あれから、TVの山番組に目がいくようになりました。
お2人に共通するのは、自然への敬意と自分もまたその一部であることを写真で表現されていること。

層雲峡に行き、ミッキー先生の尽力で山の魅力を体感出来ました。私が参加できたのはほんの少しですが、それでも夏の山、冬の山其々の楽しみを知りました。
自宅に戻ると北海道の爽やかさが懐かしく思いました。冬の厳しさがあっても、ここに住まい、ここに命をかける人達の思いは忘れられないものとなりました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?