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わたし



わたし

は目を閉じた、目を閉じても、開けても耳鳴りするほどの静寂が好きだった。なのに、目を開けても広がるのは口うるさい現実ばっかりで頭の底のほうには煮えた言葉ばっかりが這い回っている。クソッタレな明日もゆらゆら歩いて、こちらに向かってくるしバカにする。

家にいる、かろうじてまだ子供の肉はくちゃくちゃな咀嚼音を立てるだけじゃ飽き足らず粗相したみたいに汚くて耳にあまり良くない声ばっかりを上げる。赤子と変わらない、理性を無能で無脳が作り出した世界に置き、こちらには迷惑な戦争帰りみたいな壊れ方をした子供しかよこさない。どうせ放り出すなら母親もこんなものを腹から出さずにキャベツ畑にコウノトリが運んでくる潔癖な処女を収穫してくれれば良かったのに、腹を痛めない子供、かわいそうな子供を、かわいそうなわたしにくれたら良かったのに。そうすれば幸せに、わたしは女の子を、こんなふうに文字の中でワルツを踊って泣いている、女の子を産まなくて済んだのに。

公園

に行った時のことを思い出す。公園は小さいわたしには広くて大きな彼、にはとっても矮小ではいるのにも憚られるくらいに小さくて寂しくて頭を抱えてそのまま自殺したくなるくらいの思い出だった。わたしはそんなこと知らないで二つしかない遊具、ジャングルジムと滑り台で遊ぶんだけど、彼が。紹介するのを忘れていたけれど犬もいるの。わたしは犬より猫が好きなんだけど、みんなわたしの言葉なんて耳に入らないみたいだから49万円は犬になりました。名前は、知らない犬は喋らないからわたしたちが勝手につけた名前で呼ぶとすれば「チョコ」最近やっと可愛く見えてきたけれどこれって成長してチワワとして整ってきたからなのかしらね。それじゃ、彼がイライラとこちらを見つめてきたから帰るね。それでは。

人間味があればあるほど可愛さは薄れてしまう、きれいで壊してはいけない壊した時、それが血を吹いた時感じる罪悪感が重ければ重いほど可愛らしい。それの首を絞めてみるとよくわかる、かわいらしくて細い、軽い、罪のない、何も知らなくて、やっぱりかわいい。触れて、壊すことができたらどれだけいいことか。

自分

わたしは、

となんだかわからなくなる。なんだ。わたしはわたし、わたしを作って何かのフリをして今は女の子、わたしのフリをしてこうやって暗闇に浮く光る板、つまりスマートホンの中でわたしを動かして、脳みそを軽くする。抜けていく空気じゃない何か、オーガズムを孕む、それの代わりの性的欲求をスマホに乗せてわたしは走る。誰に見せるでもないけど彼は、君は、僕は、わたしに肉をつけて、わたしを見せ物にして、綺麗な場所に行けばわたしを見出して、初恋の混ぜ物の不純なわたしを映し出すんだろうな。わたしはわたし僕の頭の中に、小学生の頃から成長しない君の大切なわたし。

目は口ほどに物を言うとはいうけれど、壁に耳あり障子に目あり、この条件なら目同士何かのシナジーを発揮して意思疎通ができるのかな。ネコならこれ可能かな。猫じゃなしに小さい女の子が障子に穴を開けて目を見合わせて会話する様子を想像するだけで幸せになれるぞ。身分違いだとな、なお良い上のほうがおてんばであればあるほどいいんだから。

自分

僕はそろそろこの小さなわたしを殺さないといけない。

公園で寂しそうに座る少女が座るスペースは僕の中にはないから。悲しいことだけど、残酷に。さよならありがとうおてんばで暗くて可哀想なわたし。またあうことになるかもしれないけど、その時はよろしく。僕は、小説的に教室にいた。小学生、筆箱はパカパカ開く子供向け、鉛筆5本と本の栞と少しの消しゴム入れたら満員な筆箱。ランドセルはウジみたいないっぱいでみんなの背中に張り付く学校指定のもの。折り紙を切って雪の結晶のような、今となっては楽しめない、それを作っていたからポケットにはハサミがいる。走って転んだら僕に噛みついてくる獰猛な奴だ。僕は記憶の中にいない綺麗で血を流す姿を想像するだけで性行為と同等の夢を見ることの出来る、君を殺す。ここにいる幼い僕には関係ないけどラジコンみたいに何も知らないかわいい少年。そのように僕は教室を有象無象と同じように背中にウジを貼り付けて昇降口と校門を走り抜けて今となっては思い出となっている、工場裏の君が夕陽を背にしていつも遊ぶ公園に向かう。そこに行くまでは君と手を繋いで、モザイクのかかった少女の柔らかい、白い、綺麗な手を握って歩く。幸せがこれから壊れる。壊れているほうが正しい、僕はこんなふうにずっとイカれているんだから。本当の小学生時代なんて女の子に片っ端からキスをして、スカートの中に入り込んで、思えばこれは性的欲求からきたものだったのかもしれない。来世がもしもあるなら罪のない世界に生まれ、少年少女の腹を裂き、家に帰して、死にたくない、お母さんお父さん助けてと泣き叫びながら。まだまだ燃えるはずだった命の蝋燭が床に落ちた臓物が乾くのと同時くらいに消える様子を見てみたい。それもいいが今は全く与えられるものなんてないから無理だが、来世があるのなら立派な人間になり、子供たちに慕われ、やっぱり孤児院だとかそれに準ずる場所の職員になりやはり少女の、少女との性交と同等の喜びを求めてしまう。ダメだ僕は何も持っていないから失うものがない人のような、そういうふうな人が持ち得る唯一のものを僕も持っている。むしゃくしゃすればなんでもぶち壊しにしてしまえるそれを。僕はどうしたらいいのか。とりあえず、公園に向かい君を殺して幼い僕らのおはなしを終わりにしよう。この白くて霧のかかったうざったいおはなしを。

脳を働かせれば時間移動は容易いもので

僕すでにさっきからジャングルジムやら滑り台で飛び回る、ふるぼけた思い出みたいな笑顔で笑う君をみていた。僕は唐突、思い出したみたいにポケットをまさぐり、手にはハサミをもって、恥ずかしながら君を呼んで、頬に触れる、冷たい、温かい、白い白いかわいい、悲しい、肌。

「あのさ、目を閉じて良いって言うまで開けちゃダメだよ。」
僕は泣きそうになりながら泣かないで噛み締めながら言った。

「うん、楽しみにしてるね。」
君が言った。何も知らない、こんなことされるなんて。君は暴力を知らない、とっても幸せ、夢みがち。僕に殺されたことも気づかないままに。

僕はハサミで君の首の大事な血管を片っ端から。白く、冷たく、ゆらゆらぽてり、プールに落ちた子供があんまり音を鳴らさないみたいに、ただそれとは違う手持ち花火みたいな壮絶な、残酷な赤を砂に落として。僕はそうするのが自然なようにまだたぎる欲求は残して君の服を着て、君の小さな胸腹股、そして髪に触れて。

僕も夕陽を背にして、君と地面で恋人繋ぎみたいにした片手を愛おしく思って、リアリティのない妄想を終わらせるために血がべっとりついたハサミを首にあてがい、電源をコードごと切るみたいにパチリ切った。痛みの後に多幸感、そして何もない、耳鳴りと静かな君の大好きな静寂。

「それじゃあ、またね。」
と声が暗闇に光った気がした。


蛇足

これを読んでもらえれば僕がどういう人間かわかります、だから自己紹介

自分


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