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可哀想だけど不幸じゃない『僕らはみんな河合荘』に入居したい

2014年に放送された、宮原るり先生の漫画を原作としたTVアニメ『僕らはみんな河合荘』がとても好きだという記事。

男子高校生・宇佐和成は親の転勤により食事付きの下宿「河合荘」で一人暮らしを始める。そこには宇佐にとって憧れの先輩である女子高生・河合律も住んでいたが、彼女は無愛想でいつも本に夢中で心を開こうとしない。なんとか彼女に近づきたい宇佐であったが、ルームメイトで人畜無害なマゾヒストの城崎や美人だが男運のない面倒くさいOLの錦野麻弓、一見華やかだが実は腹黒という女子大生の渡辺彩花といった住人に振り回される。宇佐は「人との距離をつかむのがうまい」性格(あだ名が変ショリ君(変人処理)のおかげで、その中心的な役割を果たすようになっていくハートフルコメディである。

無限大な可能性を感じ取れるほどの下ネタギャグの数々、ポテンシャルやビジュアルは良いはずなのにどこか残念な住人達の大変な掛け合いやアクションはとても楽しく、実際関わったらしんどいかもしれないが関わりたくなる妙な魅力があり、洗練された美しい背景美術や躍動感あふれる作画もあいまってついつい覗いてしまう。

上手くいきそうで下手になる、楽しくなりそうで苦になる、報われるようで満たされないその姿たちは、のめりこめばのめりこむほど可哀想に映る。

だが住人達はそんな情けなさ、どうしようもなさもさりげなく自らの糧にできているようで、私のような弱い人間は感心と憧れを抱くことが出来る。

踊れなくても踊れば良い、歌えなくても歌えば良い、生きる価値なんて見出す前に生きてしまえば良い、否定する前に肯定してしまえ!全てが自分達のためなのだ。そんな彼らのライフスタイルは全肯定していける。
それがきっと正しいコトなんだ。

宇佐くんの想い人である律は、高校で初めて同性の読書友達が出来る。彼女との交流を楽しんでいた律だったが、彼女のコミュニティに違和感を感じ、その結果疎遠になってしまう。

だがその子に「河合さんは1人でいるのが好きなんだよ」と笑いながら言われてしまう。

けれど恐らくそれは違う。そんな簡単な言葉では片付けられない。ふとしたことで簡単に解決できる問題ではあるはずではあるが、言葉にするのは難しい。「そうじゃないはずなんだけど、うまく言い返せない」と言っているような律にとても共感し、涙してしまった。

でも、家に帰れば何も知らない残念な住人達と、美味しい食卓を囲んでいる。隣には宇佐くんがいて、彼は本を読む律を魅力的に感じてくれている。

解決していないかもしれない。だけどそれは不正解ではないはずだ。
そんな光景はほほえましく、肯定できている自分がいる。

報われないうえに、満たされてもいない。だがそれを分け隔てなく住人達は共有できて、『何か』を探しているから。

わからない人にはわからないかもしれないが、いつかきっとわかってくれるハズだ。でもわかってもらえなくても、正解はそこにある。河合荘の仲間に入れるように、自分も残念なことを肯定できるようにしていこう、とアニメを見て思えた。

僕らは可哀想だけど、不幸じゃないんだ。





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