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音楽における海外市場開拓に関して

 私は世界的に人気があるかどうかでしか評価されない音楽文化【注1】には大反対ですが、日本の音楽業界は世界市場「も」意識した方が良いとは思います。ただそれは、人気度で世界のトップを目指すといった意味ではなく【世界的に人気になる事に越したことはないとは思いますが】、日本のアーティストの収益を増やす事が目的です。

例えば、ファン数が10万人以上という目標にした場合、日本だけよりも日本も含めた世界をターゲットにした方がより、その目標を達成し易いし、日本の音楽を海外に売るのは、CD時代にはかなり難しかったですが、サブスク時代の今は超簡単になった【注2】ので、世界市場もターゲットにした方が、アーティストの収益は大きくなるでしょう。

「世界市場もターゲットにした方が(良い)」というのは、音楽性を西洋(世界の流行)に合わせるといった事ではなく、例えば積極的に英語での情報発信をするなど、海外の人々の立場も考えるといった事で、そうする事によって、日本のアーティストの海外ファンが増え、アーティストの収益を今よりもっと増やす事ができると思います。

 世界の音楽市場ではグッズの収益が伸びているので、グッズの海外へのオンライン販売にも力を入れた方が良いです。西洋の人々は、自分の気に入ったアーティストをサポートしたいといった意識が強いですからね【注3】。但し、特定のアーティストだけを応援するような感じではないと思います。欧米諸国では、ファンクラブもあまり一般的ではないようですしね。

宣伝の重要性

 一般的に日本人は、良いものを作れば特に宣伝しなくても自然と広まっていくといった具合に、宣伝を軽視する傾向が非常に強いです。しかし、宣伝は非常に重要です。例えば、アニメや漫画は特に宣伝しなくても自然に世界的に人気になったと思っている方々は多いですが、それは間違いで、アニメや漫画のクリエイターは認めたくないかもしれませんが、実は海賊版が極めて大きな宣伝の役割を果たしました。海外の人々は海賊版によって、大人が見ても面白いと思えるアニメや漫画が存在する事を知ったんですよ。

海賊版が無かったらアニメや漫画が世界的に人気になる事はなかったと思います。海外では、アニメや漫画は子供の見るものといった認識でしたからね。誤解なきよう言っておくと、海賊版を肯定しているわけではありません。

海外市場開拓

 海外市場開拓に関しては、BAND-MAIDが結構参考になるのではと思います。BAND-MAIDは当初、日本で全く人気が無く、解散がほぼ決まっていたのですが、ラストチャンスで作った「Thrill」のMVが主に米国でバズって【2週間で約200万回再生】解散を免れました。

 BAND-MAIDが世界的に人気(大人気ではないですが)になる過程において見逃せないのは、YouTubeに海外のファンによって無許可でアップされていた市販DVDのライブ映像【注4】や、英語字幕が付けられたテレビ出演映像【BAND-MAIDのメンバーは皆個性的でキャラクターが面白い】でしょうね。そういった動画は今では削除されていますが、それらの無許可動画が無かったらおそらく、ここまでの人気【注5】にはなっていなかったと思います。

逆に言えば、公式が高音質でカッコ良いライブ映像や、英語字幕付きのバラエティ番組っぽいインタビュー動画をYouTubeで公開する事は、海外ファンを増やす上でかなり有効だと思います。

 BAND-MAIDが所属する事務所【注6】も海外市場開拓のための努力をしていて、BAND-MAIDの公式サイトは日本語表記と英語表記に切り替えられ、TwitterやFacebookで英語でも情報発信していて、2年前くらい【確か「Manners」MV】からMVに歌詞の英語字幕を付けるなど、英語による情報発信も積極的にやっていて、かつ、海外でのライブも積極的に行っています。

 BAND-MAIDはアーティスト名が英語表記な点も良いと思います。アーティスト名が日本語表記だと、海外の人々からすれば非常に検索し辛いですからね。細かいポイントですが、結構重要だと思います。また、BAND-MAIDは基本的に日本語で歌っている点も良いと思います。

海外志向の強い日本のアーティストだと、英語で歌う場合が多いですが、西洋人と同じ土俵で勝負するよりも、日本人である事のメリットを生かした方が良いと思います。実際、私の記事「日本の音楽アーティストの世界での人気度」にもある通り、海外で人気のある日本のアーティストの8割くらいが日本語で歌っています。

 海外市場を開拓する上で重要な事は、音楽性以外は、海外の人々の立場に立って物事を考える事と、ファンを増やす上での、損して得取れ的戦略だと思います。

【注1】‥換言すれば、商業主義的な観点でしか評価されない音楽文化ですが、それだと、実験的な曲を作るのが極めて困難になり、人気はなくとも独創的な(面白い)曲が激減し、多様性も無くなり、結果、長期的には音楽ファンも激減し、音楽文化の発展にとってマイナスになると思います。

【注2】‥タダなら、日本の音楽を聴いてみようと思う海外の人々は多いでしょう。そして、タダといっても、アーティスト側にはサブスクの再生回数分の収益が入ってきます。サブスクの月間リスナー数がかなり多ければ、かなりの収益になります【私の記事「音楽におけるサブスク戦略に関して」を参照して下さい】。

【注3】‥「花冷え。」が2021年の12月頃に行ったYouTubeの生配信コンサートでは、チャットの7割くらいが日本語以外(主に英語)のコメントで、9割くらいのスパチャや、殆どの高額スパチャは海外のファンからで、スパチャの合計は50万円以上は行っていたと思います。

米国の西海岸で音楽活動をされていた日本のミュージシャン(男性ドラマー)の方の話でも、路上演奏などをやると、チップをバカみたいにくれると仰っていましたね。

【注4】‥2017年の新木場STUDIO COASTと、2018年のZepp TokyoでのライブDVDは音質もライブの雰囲気も非常に(カッコ)良く、それが海外の多くのリアクション動画で紹介される事によって、BAND-MAIDのファンが大幅に増えたと思われます。

ちなみに、MVはカッコよく作るか、ダサく作るかでファンの増え方が全然違ってくると思います。ダサいMVを作るよりは、ライブ映像を加工したものに音源を重ねてMVにした方が良いと思います。

【注5】‥BAND-MAIDが2022年に行った1,500~4,000人クラスのハコ13箇所を回るワンマン全米ツアーでは全ての会場が即日ソールドアウト。

【注6】‥日本の芸能事務所が批判される事がよくありますが、事務所に関しては欧米のアーティストよりも日本のアーティストの方が恵まれていると思うんですけどね。

日本の事務所は初期投資をしてくれるなど、面倒見が良いですからね。対して、欧米には日本の芸能事務所【日本の芸能事務所の多くはマネジメント契約】のような事務所は無く【欧米の音楽事務所は全てエージェント契約】、基本的に全て自己責任の世界ですからね。

日本の芸能事務所に関しては下記動画が参考になると思います。
【V系】事務所に入るメリット・デメリット

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