nanashi No.5

ホラー界隈に潜んでいます。感覚が鋭い人でもあります。 こまごましたものを書いていきます…

nanashi No.5

ホラー界隈に潜んでいます。感覚が鋭い人でもあります。 こまごましたものを書いていきます。実体験をもとにしたフィクションです。

最近の記事

狭間の子供

床も壁も白い大理石の部屋がある。30畳ほどの広さで清潔感があった。耳を澄ますと地鳴りのような低い音がかすかに聞こえた。部屋の一辺にステンレス製の扉があり部屋には相応しくない異物感があった。 「ジリリリリリリリリリ・・・」 大理石の壁の奥から、けたたましい音が鳴る。その音を聞きつけた黒い服の人々が部屋に集まってきた。ステンレス製の扉が音もなく、ゆっくりと開いた。 黒い群衆から子供が一人、扉の中へ入っていく。扉の中は初夏の気温で薄暗い。オレンジ色の蛍光灯が長いテーブルの上に置

    • 夢の中でも会いましょう

      昭和の雰囲気の残るアパートの2階。色褪せたドアの前に立っている。 ドアに吸い込まれるように入っていくと狭い玄関には置けないほどの履き潰したブランドのスニーカーが数十足、無造作に積まれている。玄関を通り抜けると6畳ほどのワンルームがあり、中心に座卓が置かれている。座卓とセットのように座布団が1枚置かれており、座卓の周りには割りばし、テッシュ箱、脱ぎ捨てられた服、燃えるゴミをまとめたと思われるビニール袋など人が生活するうえで必要なものたちが床に転がっている。座卓の奥の壁は暗くて見

      • 金繕い

        もう年の瀬だ。 つい先日正月が来たばかりのように感じる。 年を重ねるたびに正月と年の瀬の間が短いと思うことに驚く。 年の瀬はほぼ毎年、育った実家へ帰省している。 自宅から1時間程度離れているが憂鬱だ。 この憂鬱の原因はわかっている、それは母の存在である。 私はこの母と対峙する必要があるためだ。 私の母は日本人であるが、顔の彫りが深く瞳が大きい。 20代の頃はよく海外の方から道を聞かれることがあると誇らしいように語っていたぐらい日本人離れした顔立ちをしていた。 性格も明るく

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