半小説 日記 となりの家は廃墟だった。
私は今日、夕方ごろ何げなくテレビで廃墟を探索する動画をみた。
その廃墟というのはかつて、山梨県で人が住んでいた廃墟で、「夜逃げした」とか、住人が事件に巻き込まれたとか、みんなで考察していた。
そこには残留物がほとんど残っていた。
まるで未だ、人が住んでいる様だった。
そこは、2階建ての家で、70年代の家具や漫画本、電話などが残っていて、人だけがさっぱり抜けた様だった。
2階に上がると、子供部屋の様な部屋についた。6畳ほどの部屋だ。
本棚に本や、映画のパンフレットや、哲学書などがしきりに詰められていた。ウルトラマンや、デビルマンのフィギュアも置かれていた。
ただ、全ての本が昔のものばかりだった。
まるで私の部屋にそっくりだった。
そこには某有名大学の学生証や、写真アルバムがあった、青年が写った写真が無造作に置かれていた。
青年は20代くらいで、日にちは'88 6月27日と書いてあった。真顔でこちらに映る青年の顔がまるでお面の様で少し怖かった。
隣の部屋に行ってみると、日当たりのよい、ポカポカとした窓を背に、網でできた椅子とオリエンタルな丸机がちょこんと置いてあった。
そこには、あの、写真で見た青年があの当時のままで立っていた。「こんにちは」そう青年喋ってきた。
笑顔で2階にきた私を向かい入れた。
シュッとしていて、少し色白で、水色のポロシャツをきている。
青年は下のキッチンから持ってきたヨーロッパ調のカップを持ってきた。割れていて、中身は埃だらけ。
でも、青年は楽しそうだった。
几帳面に椅子に座りかけて、本を読み始めた。
すっと、彼は窓を覗くと、工場のショベルの車がこちらに向かって走ってきた。
どうやらその家は解体されたらしい。
気づいたら私は、家のテレビの前にいた。
青年はいなくなっていた。
60歳くらいの男性は工事の現場を見物していて、あの時の青年と少し顔が似ている。テレビの取材を受けていて、その光景を見て何かが吹っ切れた様にもうあの場所にはいたくない」そういった。思い出など何もなかったようだった。
私の部屋だって廃墟になるのかもしれない。
その時、探索されて、何を言われるんだろうか。
私はテレビの前の非日常がまるで自分のことの様に思えた。いつも隣には、この衝撃映像が隣人の様に住んでいるのだ。