学士会館の再開発の話について

もう20年も昔の話だけど、不動産会社時代に、神田の学士会館と後ろのソニー生命のビルに近代建築保存型的な再開発を持ちかけていたことがあった。

学士会館は白山通りに面していて容積率を余らせていて、一方当時の一橋SIビルも既にかなり建築年度も行っていたので、敷地整除型の再開発をしませんか、という持ちかけだった。
敷地整除型の市街地再開発事業を持ち出したのは、学士会館と一橋SIビルの間に細い公道が挟まっていたから。その道路をつけかえて一体敷地の外部の道路拡幅に移動させる扱いなどを行うもの。
この細い公道は、隣接する三井不動産主導の土地区画整理事業、Jcity:神保町三井ビルなどが出来る前の街区にあった道路と連続性があったのだが、三井の再開発で土地が一体化され、端切れのような裏道として残っていた。
営業車の休憩所のような状態となっている。

一方、実は学士会館の本館部分は白山通りの計画道路に掛かってしまっていて、そこは課題だった。

20年経ち、いま悔しいことに住友商事がソニー生命からSIビルを買い、改めて学士会館に持ちかけているようである。
上に書いた、旧館部分が白山通りの計画道路に掛かっている問題の解決策として、どうやら住商は曳航移転を目論んでいるらしい!

彼等の計画の詳細は確認していないのだが、曳航移転して白山通りから後退させる、そのときに、上に記した学士会館と旧一橋SIビルの間にあった公道をいわば白山通側に付け替える、学士会館の敷地と後ろの公道分の敷地の権利上の交換なども計画に織り込まれているのではと予想している。

曳航移転により有形文化財の学士会館を保存し、計画道路との問題の双方を解決するというアイデアは素晴らしいと思う。これは私にはたどり着けなかった。

ただ藤村朗の新館(増築部分)はもしかすると保存せず取り壊してしまうつもりかも知れないのがちょっと心配である。
高橋貞太郎の本館部分は勿論素晴らしいのだが、戦前に増築された新館部分も意匠の調和を実現しつつ程よく控えめで魅力的である。
できるなら、全体を曳航移転、後退させて欲しい。

追記:敷地整除型の再開発事業の背景等、説明を追加しました

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