大切なことはいつも
大切なことはいつも下敷きの間に挟まっていて
大切なことはいつも電話の最後に言おうとして
時間が足りなくなる。
あなたと出逢った日の空の色も
はじめて触った手のひらの温度も
忘れたくないのに忘れてしまう。
もう一度はじめから、なんてないのに
巻き戻しボタンも停止ボタンも
ついていないのにね。
わたしは憶えていたい。
あなたのことを全部。
いいことも悪いことも。
体の動きが変わっていること。
変ないびき。
髪の毛の癖の方向。
洋服の趣味の偏り。
怖い映画に強いところ。
わがままも
論理破綻も
傍若無人も
ズルいところも
意地悪なところも。
大切なこと。
大切なことは
何よりも澄んでいて
何よりも濁っているから。
濁っているわたしと
濁っているあなたは
永遠に仲良し。
わたしは人間に生まれて
本当によかった。
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