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しゃぼん玉の中で

大きなしゃぼん玉がやっとつくれて
嬉しくてずっとそればかり見ていた。

成功は連鎖する。
良いことは良いことを生み出し
わたしたちはずっと大きなしゃぼん玉の中で
遊んでいた。
永遠にそれが続くと思っていた。

それがいつしか終わりを迎え
小さなしゃぼん玉をつくろうとしていたら、
もうしゃぼん玉の素がなくなっていることに
気づいたのだ。

しゃぼん玉の中に、 
いなくちゃいけないと思っていた。
だってずっと夢を見せてあげたかったから。
大きなしゃぼん玉が割れても、
小さなしゃぼん玉をつくるんだって思っていた。

でも気づいたのだ。
大きなしゃぼん玉はわたしが思うより
ずっと前に割れていた。
それに気づかせないで
遊んでくれた人がいただけだったのだ。

しゃぼん玉はもうつくらなくてもいい。
そうわかって、
少しは楽になっただろうかわたしは。
そして今までずっとおどけて、
しゃぼん玉が割れていることを
必死で隠してきた人たちは。

しゃぼん玉がなくたって生きられる。
息もできる。何だって出来る。

それなのに、どうして。わたしたちは。
こんなにこだわってきたのだろうか。
それなのに、どうして。
こんなに、涙が出るのだろうか。

しゃぼん玉は割れた。
もうない。
だから悲しいけれど、だから自由だ。
もう誰も何も、無理することはない。

涙がもう出なくなるまで泣いたら
しゃぼん玉の外の世界が
わたしたちを待っている。 

屈折も反射もない、ありのままの世界だ。
わたしたちもだから、ありのままでいよう。
今は苦しいけれど、素直に苦しいと弱音を吐こう。


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