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【1982】再生可能エネルギーは、誰にでも容易に理解され、秘伝などを必要とせずに利用でき、秘密ではなく、近づきやすい技術をもって使いこなされるものである。さらには、環境問題をひきおこしにくく、核拡散を防止することに役立つ。

【1982年の卒論回顧】代替エネルギー開発におけるソフト・エネルギー・パス理論の有効性(7)
 
3 ソフト・エネルギー・パスの特長
 
 ソフト・エネルギー・パスに利用されるソフト・テクノロジーは、太陽・風・植物といった再生可能なエネルギーのフローに依存する。すなわち、枯渇してしまうエネルギー資本ではなく、エネルギー所得に依存する。また、誰にでも容易に理解され、秘伝などを必要とせずに利用でき、秘密ではなく、近づきやすい技術をもって使いこなされるものである。さらには、環境問題をひきおこしにくく、核拡散を防止することに役立つ。
 
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 また、経済的にも時間的にも有利である。なぜなら、コスト及び性能を考慮すると、ソーラー・ハウスや太陽熱利用による地域冷暖房は、燃料資源を必要としないので安価であるし、液体燃料はバイオマスによってまかなうことができる。さらに風力や小型水力の発電施設は、大衆の手でもある程度建設可能なので大型発電所の建設よりもはるかに安くつく。
 
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 従って、投資の成果が早く現われ、投資資金回収の効率が良い投資と言える。さらに、設置にかかる時間も短い。
 
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 一方、雇用については、ソフト・テクノロジーを採択するなら、おそらく100万(注23)から200万(注24)の雇用機会が創出されるだろうとされている。
 逆に、ハード・エネルギー・パスにおける雇用をみるなら、米国においては、新設の発電所に投入される一次エネルギー1000兆ジュール/年につき約7万1000人(注25)の仕事が米国人から奪われている。というのは、発電所は他のどの主要な投資項目に比べても1ドル当たりの直接・間接の雇用創出が小さいからである。
 
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 つまり、エネルギー節約計画ならびにエネルギー浪費的投資の社会的プログラムへの転換は、節約されたエネルギー1000兆ジュール/年につき数万人(注26)から数百万人(注27)に近い雇用の純増をもたらす。
 さらに、ソフト・テクノロジーの導入は、ハード・テクノロジーの引き起こす深刻な政治的問題の発生を未然に回避させる。
 
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 ハード・テクノロジーにみられる中央集中型の高度な技術体系の進行は、一部の技術官僚への管理と計画に関する権限の集中化を招く。しかも集中型管理システムは極めて脆弱で、偶発事故や意図的なファクターにより、機能停止を引き起こしがちになる。
 さらに、集中化した技術は、一方ではエネルギーを生産するが、他方では社会的コストという副産物を生産する。具体例で言うなら、原子力発電所が建設されると、都市の人々は電気を得ることができるが、地方の、政治的弱者の第一次産業従事者は発電所のもたらす様々な弊害により生活をおびやかされる。
 
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 このようなハード・テクノロジーによる害とは逆にソフト・テクノロジーは様々な特長がある。
 まず、ソフト・テクノロジーの場合には受益者と被害者が同じであり、両者の影響が同時に生じてくるので、その導入に関する意思決定を比較的容易に行うことができる。さらに、ソフト・テクノロジーは、普通の人々にも理解しやすく、地域エネルギー政策に参画でき、現行政治体制にも組み込みやすいので、現代社会においてはソフト・テクノロジーが必要十分条件である。
 
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 換言するならば、ソフト・テクノロジーは分散的である。すなわち、エネルギー供給がそれぞれの状況に応じてもっとも効率的に設計された小さなエネルギー供給単位による供給の集合によって成り立っている。
 
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 それにもまして、ソフト・テクノロジーの最大のメリットは、最終需要の用途に対応したエネルギーの質に見合わせて、その最終需要のエネルギーの規模と地理的分布に適合させ、ほとんどの自然エネルギーの流れを無料で利用するものである。無料より安いものはない。
 
第1章(注)
(1)社団法人日本広報協会編「明日をひらく石油代替エネルギー=その開発と導入=」16頁昭和56年社団法人日本広報協会
(2)社団法人日本広報協会編「前掲書」16頁
(3)社団法人日本広報協会編「前掲書」16頁
(4)社団法人日本広報協会編「前掲書」16頁
(5)社団法人日本広報協会編「前掲書」16頁
(6)長洲一二編著「ソフト・エネルギー・パスを考える」35頁昭和56年学陽書房
(7)長洲一二編著「前掲書」35頁
(8)長洲一二編著「前掲書」35頁
(9)長洲一二編著「前掲書」35頁
(10)長洲一二編著「前掲書」35頁
(11)長洲一二編著「前掲書」35頁
(12)通商産業省編「エネルギー81」217頁昭和56年電力新報社
(13)通商産業省編「前掲書」218頁
(14)通商産業省編「前掲書」219頁
(15)通商産業省編「前掲書」219頁
(16)エイモリー・ロビンズ著室田泰弘・槌屋治紀訳「ソフト・エネルギー・パス」6頁昭和54年時事通信社
(17)長洲一二編著「ソフト・エネルギー・パスを考える」38頁昭和56年学陽書房
(18)長洲一二編著「前掲書」38頁
(19)長洲一二編著「前掲書」38頁
(20)長洲一二編著「前掲書」39頁
(21)長洲一二編著「前掲書」39頁
(22)長洲一二編著「前掲書」39頁
(23)長洲一二編著「前掲書」49頁
(24)長洲一二編著「前掲書」49頁
(25)エイモリー・ロビンズ著室田泰弘・槌屋治紀訳「ソフト・エネルギー・パス」40頁昭和54年時事通信社
(26)エイモリー・ロビンズ著室田泰弘・槌屋治紀訳「前掲書」40頁
(27)エイモリー・ロビンズ著室田泰弘・槌屋治紀訳「前掲書」40頁

(つづく)マガジン「ソフト・エネルギー・パス理論の有効性」に編綴

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