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ときどき日記(630) 流氷で埋まる知床湾が突如現る

時刻表復刻版の旅(14)

まだ梅雨だというのに猛暑だ。皮膚感覚はどうにもならないにしても思考は自由だ。どうにでもなる。冬の北海道になれる。

根室からの急行が満員だったのは、前日来の大雪で多くの人が身動きできなかったせいだったのだろう。

この日は釧路経由で、いよいよ北海道を稚内に向けてオホーツク海沿いに北上するのだ。「根室本線」と「釧網本線」に乗ることになる。

書いていてふと思ったのだが、本線と本線じゃない線の違いは何だろう。この当時、1982年ならまだわかるが、今も「釧網本線」は「本線」だ。本線なの?

改めて時刻表復刻版を見直してみたが、「根室本線」の急行は「狩勝2号」だったと思う。これがいちばんつじつまが合うからだ。本線と言うだけあって根室から札幌までおよそ9時間かけて走る列車だった。それも混雑の原因か。

2時間強かけて釧路に着く。そこからは「急行しれとこ4号」に乗ったはずだ。12時30分発釧路発で網走は15時53分。薄暗くなっていて、ほとんど観光などできる時間ではなかったが、網走刑務所だけは見たいと思ってタクシーで門の前までは行ってみたのを覚えている。前後につじつまの合う列車がないから、これに乗ったはずだ。

釧路から網走まで3時間、ひたすら氷雪に閉ざされた原野の中を走る。左手には斜里岳がずっと友達だった。ここらあたりに来ると、同じような旅をしている者たちは泊まるところが違ってもだいたい同じ列車になる。何人か見たやつもいるようになった。斜里岳と別れを告げるや否や、今度は右手に流氷で埋め尽くされた知床湾が広がった。この感動は今でもよく思い出す。あまりにもあまりにも壮大な風景は筆舌に尽くしがたい。海が流氷で埋め尽くされているのだ。

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