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5. 日本語の受動表現と能動表現の違い

前回,日本語の受身文を英語の受動態と比較しながら解説しました*。

*: 前回の記事を読み返してみて,わかりにくいところがありました。その部分を編集し,再公開しましたので,もし,以前の記事を読まれて理解に苦しまれた方は是非もう一度読んでみてください。大変申し訳ありませんでした。

今回は,文の述部に限らず,文中の語句の修飾に受動表現を用いた場合と能動表現を用いた場合の違いについて解説します。我々日本人は必然的に使い分けていると思いますので,当たり前の感覚であろうと思いますが,文意に大きく影響するポイントなので整理しておきます。

日本語は,受動表現と能動表現で意味が明確に違います。とりあえず,次の文の意味を比較してみます。

さばいたマグロの切り身を寿司のネタに用いた。
さばかれたマグロの切り身を寿司のネタに用いた。


上の文は,書き手が「マグロをさばき,切り身にして寿司のネタに使用した」という意味になり,一方,下の文は,書き手ではない「誰かがさばいたマグロの切り身を寿司のネタに使った」という意味ですね。次の文は「マグロをさばいた」のは書き手ですが,それを寿司ネタに使ったのは他の人ということになります。

さばいたマグロの切り身が寿司のネタに用いられた。

次の文は「誰かがさばいて,誰かがネタに用いた」という意味で,そこに書き手は関与していないことになります。

さばかれたマグロの切り身が寿司のネタに用いられた。

この文は,書き手は第三者的な立場にありますから,報道ニュースに登場しそうな表現です。ただ,その場合でも,さばいた人と寿司ネタに用いた人が誰なのか,わかっている場合は,その人を明記するほうが,文意を明解にしますし,一般的です。たとえば…,

若い衆がさばいたマグロの切り身を,大将が寿司のネタに用いた。
と言った記述です。

すなわち日本語は,能動表現は書き手の行動を,受動表現は書き手ではない他の人の行動を意味しますから,能動表現と受動表現を使い分けることによって,その部分の動作主が変わることになります。
その違いに注意して正確に使い分けることが,文意を明解に保つポイントになります。

最後まで,お読みいただき,ありがとうございました。

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