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「服用中の薬について知っておこう~添付文書~(3)」

今回は最終回です。解説する添付文書の内容は,理解するにあたり専門的な知識を要する,医師・薬剤師向けの情報をかなり含んでいます。よって,分かり難いところが多いと思いますので,専門性の高い項目は,できるだけ簡易な言葉を用いて説明し,複雑な内容にならないよう,大まかな解説に止めておきます。
「16. 薬物動態」では,薬がからだの中に入り,血流に乗ってからだを巡り,からだの外へ出ていくまでの動きを数値で説明しています。たとえば,服用した薬は消化管を通して血液中に入り,時間が経つと血液中で最高量に達します。その時までの経過時間をtmax,最高量をCmaxという記号で表します。最高量(Cmax)に達した薬は,その後徐々に減って,尿や糞便とともに外へ出て行きます。薬が最高量から半分量にまで減るのにかかる時間を消失相半減期(t1/2)と言います。またAUCという記号もあって,それは血液中に入った薬の総量を意味します。以上のような記号で表したものを薬物動態学的パラメータと呼び,それらが表にまとまっています。また,ほとんどの添付文書に載っている山なりの曲線グラフは,薬が血液中に入ってから体外に出て行くまでの血液中の薬量の経時的な変化を表しています。これらの数値や薬の動きは,薬がよく効いて,しかも副作用が少なくてすむような使用量と使用間隔(1日2回や3回など)を決定するもとになっています。このほかに,薬が集まりやすい臓器や,薬を壊す酵素の種類,「10. 相互作用」で説明した相互作用の原因になる薬物動態学的な情報なども記載しています。
「17. 臨床成績」には,「4. 効能又は効果」に記載した病気や症状を持っている患者さんに薬が効くことを裏付けた根拠になる臨床試験の結果を記載しています。有効率(%)の記載がある場合は,100人の患者さんが服用して何人に効果があるかを知ることができます。
「18. 薬効薬理」には,薬の効果と,薬の作用機序,すなわち薬の効果が現れるしくみや,その効果に関連する生体内物質の変化などの情報を記載しています。医師・薬剤師が患者さんに合う薬かどうかや,その薬の使い方を考える時に役立つ専門的な情報です。
「19. 有効成分に関する理化学的知見」には,薬の一般的名称,化学名,分子式,分子量,化学構造式,および性状など物理的および化学的情報を記載しています。
「20. 取り扱い上の注意」には,保存条件や使用期限,方法や,薬を取り扱う際の一般的な注意事項を記載しています。
「21. 承認条件」以降「22. 包装」「23. 主要文献」「24. 文献請求先及び問い合わせ先」「25. 保険給付上の注意」および「26. 製造業者又は輸入販売業者の氏名又は名称及び住所」には,事務的な内容を含め,該当する情報を必要に応じて記載しています。
以上,添付文書の記載内容について解説しました。皆さんが注意して見ておくほうがよい項目は前半の1から14までです。その中でも特に「1. 警告」「2. 禁忌」「4. 効能又は効果」「5. 効能又は効果に関連する注意」「6. 用法及び用量」「7. 用法及び用量に関連する注意」「9. 特定の背景を有する患者に関する注意」「10. 相互作用」および「11. 副作用」については,しっかり読んでおくと良いでしょう。
医療用医薬品の添付文書に関する説明はこれで終了です。説明した内容が皆さんのお役に立つことを願っています。
最後まで読んでいただき,ありがとうございました。

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