12章2部 貸し倒れ引当金

第3節 貸し倒れ引当金の設定

1⃣貸倒引当金の設定を理解するための前提知識

貸倒見積高=売上債権の期末残高×実積率


CS貸倒れ見積もり高の算定
期末の売掛金勘定の残高10000円、実積率2%における貸倒見積高
→貸倒見積高=期末売掛金10000×実積率2%=200

貸し倒れ損失を予想して来年貸し倒れるものを今年の決算に組み込んでおく。

2⃣貸倒引当金の具体的処理①
売掛金の期末残高10000に対して実積率2%により貸倒引当金の設定をする

全体像
来年の費用を今年の費用にしたい!
仕分けが少し変わる

⑴決算整理仕訳

確定:貸倒損失(費用+)200  売掛金(資産-)200

↓   

見積:貸倒引当金繰り入れ(費用+)200  貸倒引当金(資産控除+)200

直接-にせず、別勘定を作って引いていく※減価償却累計額と同じ

例題12-4
1.決算整理仕訳を行い、整理後の残高試算表を作成せよ
2.残高試算表を基に財務諸表を作成せよ

1.決算整理前残高試算表           
借り方残高 勘定科目 貸方残高
35000   受取手形     
42000   売掛金  

2.期末売上債権残高の3%を貸倒れ見積高として貸倒引当金を設定する。

35000+42000=77000
77000×0.03=2310円  =貸倒引当金2310円
貸倒引当金繰り入れ 2310  貸し倒れ引当金2310

 借り方残高 勘定科目 貸方残高
35000   受取手形     
42000   売掛金  
     貸し倒れ引当金 2310
2310  貸倒引当金繰入

財務諸表
  貸借対照表(資産負債資本)       損益計算書(収益費用)
 受取手形  35000          貸倒引当金繰り入れ 2310 
    ▲1050   33950         
 売掛金   42000  
      ▲2310 74690
  ▲1260    40740
 
直接▲2310ではなく、それぞれから引く

3⃣貸倒時の処理(期中仕分け)

3パターンに分かれる

①当期販売分の貸倒れ
決算を迎える前なので貸倒引当金を設定していない。
→貸倒損失(費用)を計上

②前期販売の貸倒れ(貸倒額<貸倒引当金)
前期に貸倒引当金を設定している。
「貸倒引当金(資産の控除項目)」を取り崩す

仕分例12-4前期販売の貸倒れ(貸倒額<貸倒引当金)
前期販売分の売掛金160が貸し倒れた。 なお、前期引当金に200の貸引設定
貸倒引当金(資産控除-)160  売掛金(資産-)160

仕分けの借り方を費用の発生としないのがポイント
前期に既に計上しているから実際に貸し倒れても費用計上しない。

③前期販売分の貸倒れ(貸倒れ額>貸倒引当金)
貸倒引当額を超過した場合は「貸倒損失」(費用)の発生とする

仕分け例12-5
売掛金250貸倒れ、前期に200貸倒引当金を設定していた。
貸倒引当金(資産-) 200  売掛金250(資産-)
貸倒損失(費用+)  50

例題12-5
仕分けを示せ。前期の決算整理手続きにおいて売掛金に対して貸倒引当金を3000設定している。

1.前期販売分の売掛金2500が貸し倒れた
貸倒引当金 2500 売掛金 2500

2.当期販売分の売掛金1200が貸し倒れた
貸倒損失 1200 売掛金 1200

3.前期販売分の 売掛金800が貸し倒れた
貸倒引当金 500 売掛金 800
貸倒損失 300

※前期の売掛金は貸倒引当金の設定がしてある。
 期中の貸倒れはそのまま貸倒損失
※貸倒引当金は取引先が変わっても全体の%から取り崩すので
 何時売ったのか?貸引きの残高に注目する



4⃣貸倒引当金の具体的処理2(差額補充分)決算

決算整理前において、「貸倒引当金」の残高が存在する場合
当該残高と貸倒れ見積高の差額分についてのみ行う。
→差額補充法を利用する。

貸倒引当金繰入=貸倒見積高-貸倒引当金の決算整理前残高

CS 
前期の決算で貸倒引当金を200計上。当期に160取り崩した。
当期の決算において、売掛金の期末残高15000に対して実積率2%により貸  倒引当金を設定する。

課題

<貸倒引当金繰入の計算>
貸倒れ見積高15000×0.02=300
貸倒引当繰入=300-40=260

貸倒引当金繰入 260 貸倒引当金 260

例題12-6
決算整理手続きを行う。次の資料に基づき、1.決算整理仕訳を示し、決算整理残高試算表を作成せよ2.当期の財務諸表を作成せよ

決算整理残高試算表              
借り方 勘定 貸方
34000 売掛金 
    貸し倒れ引当金 90

期末売上債権残高の2%を貸倒れ見積高として差額補充法により貸倒引当金を設定する。

1.仕分けと試算表の作成
34000×0.02=680
680-90=590
貸倒引当繰入 590 貸倒引当金590   〇

決算整理後残高試算表       ×
34000   売掛金
     貸倒引当金 590 → 680
 590  貸倒引当金繰入

貸借対照表(資産、資本、負債)   ×
売掛金  34000
貸倒引当金 590  →▲680 33320

損益計算書         〇
貸倒引当金繰入 590
  

本番は貸引きあまりの問題が出題される

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