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式場の地下 ほか(禍話リライト)



式場の地下


視聴者からのおたより 一

以下、「視聴者からのおたより 一」「視聴者からのおたより 二」は、私の元に視聴者から寄せられたメッセージの抜粋です。
2つの投稿はそれぞれ別の視聴者からのものですが、これらは同じ日に届いたものです。

こんにちは!昨日怖い夢見たので送りますね。

夢の中でスタジアムみたいなところに行ってたんですけど、そこの売店とかがあるスペースの階段横でタバコ吸ってるおじさんがいたんですよ。
それで「喫煙スペースありますよ」って注意したら「めんどくせーじゃねーか」みたいなこと言われて。

全然そこでキレる必要なかったと思うんですけど、なぜか夢の中の自分がいきなりそのおじさんぶん殴って、階段から蹴り落としたんですよ。
「あれ、なんで今こんなバイオレンスなことしたんだろ!?」ってびっくりして、やばいやばい!って階段を駆け下りていったんですけど、
そこで急にナレーションみたいにかぁなっきさんの声で
「悪魔のような顔でねぇ、どうなったのか確かめるために降りて行ったそうですよ」
って聞こえてきてビビりました。
それで階段降りてったらおじさんいなくなってて、あれ意外と大丈夫で逃げたのかな?って思って。
そしたら急にガーーーって耳鳴りがして、すごい痛くて「痛ててて!」ってなってたら子供の声で「ありがとうございましたぁ」って舌足らずな声が聞こえてきて。

うわーー!!こわーー!!って思ったら目が覚めて、あーびっくりした、今の夢か!!って安心してたら、起きたはずなのに耳鳴りが止まらないんですよ。
あれ?って体起こそうとしたら体の半分が金縛りになってました。
なにこれつら…って思ってたら寝室の扉が開いて、僕のパートナーが入ってきたんですよ。
助けてくれッッ!!って念じてたんですけど、ベッドの周りゆっくりぐるぐる歩いてるだけなんですよ。つらすぎじゃないですか?
相変わらず耳鳴りもひどくて。それでよく聞いたら相手が何か喋ってたんですよ。
これ、もしさっきのガキと同じこと言ってたらめっちゃ怖いじゃないですか。「ありがとうございましたぁ」って。
同じだったらどうしよう、嫌だ嫌だ嫌だ…って思ってたら、またバッ!って目が覚めました。幸いそれも夢でした(笑)

あー怖かった、なんで地下なんかに降りたんだろうってむっちゃ後悔しました。


視聴者からのおたより 二

ここ3日くらい気持ち悪い夢見るんですよ
呪われた場所に連れて行かれて、これから怖いこと起きるぞー的なやつです
最近湿度高いから変な夢ばっか見るんですかね笑

昨日見たやつでは急にお祓いに連れて行かれたんですよ
お祓いなのに行き先がなぜか結婚式場で意味わかんないんですけど笑
なんか前にお寺が建ってた場所らしくて「ここに人形が封印されている!」的なこと言われて
なんで行かなきゃいけないんだよ?って思ったんですけど良いから来い!って言われて

地下室に続く入口があって、階段降りてったら和洋折衷?みたいな部屋があって、なんかめっちゃ怖くて
そしたら連れてきた奴が「ここは間取りが変だ」とか言うんですよ 「間取りが変」って言葉めちゃくちゃ怖くないですか?

そしたら建物の隙間を影みたいなのがちらちらよぎってて、何あれ?って聞いたら「あれは見てはいけないものだ」って言われて いちいち言葉がこえーよって
うわーー見ちゃったよーーって思ってたら「じゃあお祓いするから来い」って言われて
なんでここにいるのかもわかんないんですけど、やっとお祓い終わって、もうこれで大丈夫だって言われたとこで夢が終わりました

こういう感じの気持ち悪い夢ずっと見てます。まぁただの夢なんですけど笑
続くと怖いですよねー


以上の2通のメッセージを受け取った直後、以前にある体験談を送ってくれた視聴者の方からメッセージを受け取りました。

提供した体験談をツイキャスで話さないのか、という内容でした。

該当する建物がまだ残っているということでずっと保留にしていたのですが、その方によればすでに取り壊されているということなので、この機会にお話したと思います。


式場の地下

場所は絶対に伏せてくれって言われてます。地方もちょっとボカしてほしいって。

Aさんは30代後半くらいの方なんですが、彼が小学生の頃の話です。

街中にある結婚式場なんですけど、ボロいって言ったら失礼かな。要するに昔からある老舗の式場で。
といっても別に普通のところで、そこで式を挙げるカップルも多くて、特に寂れているという印象もなかったそうです。

で、Aさんの親戚の方がそこで結婚式をすることになって。

そのご夫婦ちょっと事情が特殊で。お互いにもういい歳で、バツイチ同士の再婚だったんですって。
結婚式というか、ドレスとタキシード着て写真撮影するだけの、今で言うフォトウェディングみたいなのものだったそうで。

親戚一同での撮影が終わった後、小学生のAさんは退屈してしまったそうです。
大人たちはやれ「この角度が良い」だの「今度はこっちを背景にしよう」だのみんな忙しそうで、Aさんの相手をしてくれそうになくて。

今だったらもう少し子供が時間を潰せそうな場所もあるんでしょうけど、当時ですでに老舗の式場ですから、自動販売機なんかも置いてなくて。
仕方がないので、式場の中をぶらぶらしていたそうです。

Aさんは会場を出て1階のロビーまで降りました。
その日はあまり予約が入っていなかったのか、スタッフも忙しい様子はなくて、受付にも誰もいなかったらしくて。

何となくうろうろしていると、ロビーの脇に小さな螺旋階段を見つけたそうです。
会場がある上階と行き来するためのものではなく、下りしかない、つまり地下に行くための階段でした。
雰囲気からして従業員用のものかなって。

立入禁止の表示やロープも何もなくて、それに周りに誰もいなかったこともあって、Aさんはちょっとした冒険心で地下に降りてみたそうです。

螺旋階段をぐるぐると降りていくと、地下の階に行き当たりました。
電気は消えていたので、暗い廊下が続いていて。
勝手に侵入しているので高校生とかならためらうと思うんですが、まだ小学生だったAさんは特に何も考えずに廊下の灯りをつけたそうです。

いくつか扉が並んでいたのですが、廊下の突き当り、一番奥の扉だけが少し開いていて。
ふと気になったAさんは、一番奥まで歩いていって中を覗きました。

部屋の中は先ほどの廊下同様真っ暗だったのですが、すぐにスイッチが見つかって、Aさんはまたもためらわずに押したそうです。

灯りがついた瞬間、Aさんはつい声を上げそうになりました。


若い男女が部屋の中に立っていました。


女性はウェディングドレス、男性はタキシードを着ていて。いかにもこれから結婚式本番ですというような出で立ちで。

もしかしたら、これから式を挙げるカップルの控室だったのかもしれない。
「あ、ごめんなさい……」
知らなかったとはいえ、勝手に入ってきてしまった。Aさんは謝罪の言葉を口にしました。

ドレス姿の女性はAさんに向かって小さく会釈を返しました。


時が過ぎてAさんが大学生になった頃、ふと思い出して友達にこの話をしたんだそうです。

友達はふんふんと話を聞いていましたが、最後まで聞いて顔を青くしました。

「え、それすげー怖い話じゃん?」
「は、何が?」
「いやだっておかしいじゃん。廊下も部屋も電気消えてたんでしょ。お前がつけたんでしょ」
「そのはずだけど」
「そんなとこで何してたんだよ、そいつら」

たしかに……

「控室ってのもおかしいでしょ。普通は結婚式場の控室って、そんな離れたところにないよ。螺旋階段で行かなきゃいけない場所にあるわけねぇって」

言われてみればまさしくその通りで。
友達が矛盾点を指摘すればするほど怖くなりました。
当時は子供だったからあまり気にしていなかったけど、よくよく考えたらこの体験は意味が分からないことだらけでした。

「お前さ、この話誰かにしたことないの?なんも言われなかったわけ?」
「いや、話したことないと思うけどな、たぶん……。話してたらさすがにおかしいって気付いたんじゃないかな」

まあ、体験した本人の中では意外と「ただの不思議な話」で処理されてるものなのかもね。
ひとまずその場ではそんなところで納得したといいます。


それからしばらくして、Aさんの地元で小学校時代の同窓会が開かれました。
集まったのは、Aさんがその親戚の結婚式に行ったときよりも後に同じクラスになった同級生たちだったそうです。

Aさん、例の結婚式場のことを聞いてみたんですって。ちょうど良い機会だと思って。
そしたら聞いた人みんなに言われたそうです。

「いや、その話めっちゃ聞いたよ」

まさかお前覚えてないのか?
お前といえば式場の話っていうほど、みんなもう耳にタコができるくらい聞いたよ。
保健室の先生とかさ、あんまり喋ったことない女子にまでしてたろ。その話。
あんまり気味悪いからさ、ちょっと学級会で問題になりかけたこともあったよね。
ていうか、お前誰彼かまわず捕まえてその話した後さ、いつも同じこと聞いてたよな。

「なあ、会釈したってことはあの女の人怒ってないんだよな?」
って。


いや、ほんっとに。全然覚えてないんですよ。
Aさんはこの話をしながらそう言いました。


さすがに怖くなってきたそうで、今その結婚式場がどうなってるのか地元に残ってる子たちに聞いたんですって。
そしたらちょうどその場に、その式場でバイトしてるってやつがいて。

「ああ、バイトしてるよ今。俺さ、バイト先がお前が昔ずっと話してたあの式場だってわかってめちゃくちゃビビったんだから。
地下の突き当りの部屋に、ってやつだろ?俺気になりすぎて調べちゃったよ。その部屋のこと」


あそこさ、ずっと昔から物置だよ。
色んなものが雑然と置いてあるだけでさ。
とてもじゃないけどあんなところに人が、それも花嫁さんと花婿さんが待機するなんて無理だよ。


うわ、まじかよ。知りたくなかったわ……


げっそりするAさんを見て、同級生は「まじまじ。今度写真撮ってきてやるよ」と言いました。
そんなところで同窓会はお開きになりました。


写真が送られてきたのは、それから何か月か経ってからのことだったそうです。Aさんももうほとんど忘れてて。
久しぶりに来たその同級生からのメールを開いたら
「な、物置だろ?」
という言葉と共に1枚の写真が添付してあって。

ああ、例の式場の話か。
やっと思い出して添付ファイルを開いたら、たしかにそれは物置のような、色んなものが乱雑にしまわれている部屋の写真でした。
薄暗い部屋の中で、箱やら何やらが積まれていて。

ただAさんは、1つ気になるものを見つけました。
その部屋の壁に、大きめの額のようなものが飾ってあったんです。中には写真が収められているようで。


1組の男女が写った写真でした。


物置じゃないの、ここ?
なんでそんなとこに。大きな額に入った男女の写真……


Aさんはメールに返信しました。
「なんか写真みたいなのない?それ何?」
すぐ返事が来ました。


あこれ?
最初のオーナーの子供がさ兄妹だったんだけどここで自殺したんだよ


これさっきそこのコンビニで買ってきたんだよって感じであいつ。平気で返してきて。

それからもうそいつには会ってないです。


Aさんはそう言いました。



この話本当はあんまりしたくなかったんですけどね。
あれだけたくさん来たら、ね。




この記事は、禍話インフィニティ 第四夜(2023/07/22配信)より「降りて行く夢 2つ」(12:08頃~)「式場の地下」(17:59頃~)を再構成・加筆したものです。

なお、本記事に掲載されているメッセージのやり取りおよび「視聴者からのおたより」は、配信で語られた内容を元に筆者が再構成・脚色のうえ作成・執筆したものであり、実際の文面ではありません。

記事タイトルはwiki(https://wikiwiki.jp/magabanasi/)を参考にさせていただきました。


トップ画像のクレジット:
mari -the bride & groom /Adapted by 鴨沢芹, CC BY 2.0

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