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商売は、売るではなく『買っていただく』こと。

営業の本質は、”買っていただく”こと。

全ての業界、職種に共通している営業の極意は、サービス商品を”買っていただく”という視点です。

よく押し売り営業や、自宅を1軒1軒廻るドブ板営業が上手く行った試しを聞かない理由は、売り手と買い手の思惑がずれているからです。

コカコーラを日本一売った男、山岡彰彦さん。
彼のキャリアは、四国高知県のコカコーラのルート営業の”助手”からスタートしています。


コカコーラの営業と言えば、東京都内の高層ビルの本社オフィスで、清涼飲料水の新商品の企画開発やマーケティング、テレビ等の大手メディアへのBtoBスポンサー営業と言った、昭和の言い方で花形営業をイメージすると思います。

山岡さんは、四国高知県の個人商店や自動販売機を設置している個人店に飲料水を補充する傍ら、新規開拓の営業をしていく所からキャリアはスタートしています。

エピソード1(読書)

山岡さんが、駆け出しの新人時代の頃、上司との飲み会で、「本を読むと良い」とアドバイスされたそうです。
初めは、営業に関連する本を読んでいましたが、時間が経つにつれて、様々なジャンルの本も読むようになり一日30分の読書を目標に続けていた習慣が、いつしか読書の為に時間を裂いていくようように、習慣も変化したそうです。

本を読むことで、相手が何を言いたのか?
ポイントは、なんだろうか?
考えながら、取引き先の相手の話も聞く事が出来るようになっていたそうです。
読書は、知識を得る事も出来ますが、それ以上に、相手が何を言いたのか?話の主旨、本質を掴むコツを自然に身に付ける能力も鍛えることが出来ます。

エピソード2(小さな酒屋での取引)


新田酒店という小さな酒屋の自販機は、老朽化が進んでいました。
山岡さんは自販機の補充の合間の時間で、自販機の清掃もするようになりました。
自販機は、老朽化が進んでおり、こまめに手を掛けないと直ぐに汚れてしまう状態でした。
ある日、酒屋に訪問した所、店主から山岡さんに新しい自販機の買い替えをお願いしたいと言われます。
実は、その数日前に、年下の先輩社員から自販機の買い替えの提案は受けていたそうなのです。
しかし、その時は、店主は直ぐに買い替える気にはならず、『ここの自販機は、あまりに古いので買い替えた方が良い。今ならサービスしますよ』と言われたが、”立板に水の様に、良い事ばかり言われても、直ぐ買い替える気持ちにならなかった”ということでした。
それよりも、訪問するたびに、毎回自販機を清掃していく山岡さんの方が好感を持っていた為、山岡さんから自販機の買い替えをしたいという気持ちに変わっていったそうなのです。


エピソード3(フードサービス部門でホテルへの営業)

ファストフード店や、ファミレスのソフトドリンク飲み放題で設置している機械は、原液を希釈してジュースにします。
その機械を販売していくのも営業の仕事です。
高知オリエントホテルは、毎年夏になるとビアガーデンを開催します。
ビアガーデンは、ビールがメインですが、やはりコーラと言ったソフトドリンクも売り上げUPが期待できる書き入れ時のシーズンです。
山岡さんは、ホテルの料理長、岡林さんにアポを取り、初対面で商談を成立させる事が出来ました。
しかも、司厨士協会という西洋料理の組織団体の会合にも招待されると言う、おまけ付きの契約でした。

しばくして、山岡さんは岡林シェフに質問します。
「初めてお会いした時に、取引きOKに加えて、司厨士会の会合にまで参加させていただいたのはどうしてでしょうか?あの時、私は肝心の商品、機材の話を出来ないままでした。営業としては失格だったと思います。」


以下引用
岡林さん「営業として失格だと。そんなことはない。いいか。我々調理師の仕事は、料理を食べさせる事ではない。一生懸命作った料理を食べて頂いて、喜んでいただくことだ。その為に、お客さんにとって何をすれば良いのか考えること。お客さんを知る事が大事。私の所にも、商品の営業の人間がやってくるが、その殆どが、自分たちの商品と条件がいかに良いかを並べるだけ。こちらが望むことはやってくれる物ではなく、やって欲しい物だ。その為には、お客さんであるこちらの話をしっかり聴くこと。君は私の話にずっと耳を傾けて、私が考えている事や、やりたい事をどうすればいいのか一緒に考えてくれた。びっくりするようなアイデアはなかったが、それが営業の人間に一番大事な姿勢だ。しかも礼儀正しく、言葉を選んで応えてくれた。だから、司厨士会の会合にも招待した。礼儀正しく、人の話を聞くこと。この二つを軽んじるなよ」

エピソード4(チーム戦の営業)


パチンコ店を手がけるアミューズメント施設での営業のチャンスがやってきました。
パチンコ台で離席せず、長くパチンコを楽しんで貰うには、自動販売機よりも、店員が席まで飲料を持っていくことで離席を抑えられると考えました。
商談のチャンスがやって来た訳ですが、アミューズメント施設を運営する先方は、事業部長や役員クラスも商談に同席する事になります。
そこで、岡林さんは研修で面識を持っていた、日本コカコーラの副社長やシニアマネージャーに依頼して、商談に望むことになります。
商談は成功しました。
ここで得られた教訓は、営業は1人でやるのではなく、自分が持っている資産を全て使い、組織的に営業していくことでした。


エピソード5(日本コカ・コーラ社)

山岡さんは、高知の営業所で実績、キャリアを積み重ねて、日本コカ・コーラ社へ出向する事になります。
日本コカ・コーラは、社内は英語でコミュニケーションを取るゴリゴリの外資系企業です。
スタッフが副社長に対し、「はーい、調子はどう?」とフランクに話しかける社風です。

日本コカ・コーラで学んだ事。
1.事実ベースで状況を理解する。
2.問題を整理し、課題抽出する。ここでの問題は、目的の障害になる事象を指し、課題と目的のギャップを解決出来たら目標達成です。
3.何を?いつまで?どのくらい?といった目標を目に見える形で設定します。
4.目標に対する戦略を決めます。
5.戦略が決まったら戦術を立てます。戦術は、どのような活動をするのか?の施策です。
6.最後は、戦術を活動レベルで実行します。

これらは、考えて行動する為の指標になります。

まとめ

個人商店、ホテルでの営業、アミューズメント施設への営業が何故上手くいったのか?
それは、”売る”から、”買っていただく”という視点で取引先と交渉したからです。
”売る”というのは、売り手側の独りよがりの思惑です。
”買う”は、相手に理由がありどうしても欲しい物が発生していることを指します。
この視点は、業界を跨いで全ての営業に共通している姿勢だと思います。
1.相手の話を聞く。
2.清潔感。
3.礼儀。
この3つを兼ね備えた営業マンこそ、Ai時代でもテクノロジーに代替されない究極の最強人材と言えるのでしょう。

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