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ストーリー「豪雨の予感」

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水害被害ストーリー「豪雨の予感」の連載を始めました。実際の水害被害インタビューを通して分かってきた教訓やエピソードを織り交ぜた物語です。できるだけ実在する名称を使用して、水害被害…
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2024年2月の記事一覧

「豪雨の予感」第24話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第24話(水害被害ストーリー)

愛子の自宅は第二寝屋川沿いに立つ3階建である。自宅の南側の部屋からは眼下に第二寝屋川がみえる。増えていく水の量も具に確認することができる。今はそこに架かる上城見橋の橋桁を増水した川の水面が掠めている

みおのスマホに着信が鳴った、愛子からの連絡である。
「お母さん電話!愛ちゃんから」
「ごめん、すぐいくから健斗代わりに電話でてくれる?」
「オッケー。もしもし愛ちゃん?」
「健斗?お母さんと一緒なん

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「豪雨の予感」第23話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第23話(水害被害ストーリー)

「健斗は今ごろ小学校かな…やけど大雨警報出てるし休校??…てことは今家で一人??…いやまてよこれだけの豪雨やから母はリモート勤務なんかも…てことは二人で家におんのかな??父は災害救助で現場バタバタなんやろうな…え、まって!うちって川の横やん、もし川が溢れたら大変なんちゃうん!もしもやで、もしも流されたりしたら、うち帰るところなくなるやん!え、ちょっとどうしよ」

正面を向いて呟いている愛子の独り言

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「豪雨の予感」第22話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第22話(水害被害ストーリー)

愛子は佳奈の話しを聞きながら窓の外から微かに見える内堀を凝視していた。その内堀の手前にあるランニングコースの茶色い地面に、茶色く濁った堀の水が溢れ出ているようにもみえる。

「うちのメガネ使ってみて、はい」
佳奈は愛子のメガネを借りて外を見た。裸眼だけでは見えてなかった豪雨の景色が目の前に現れてきた。
「え、こんななってたん!めっちゃ雨降ってるやん!あ、ほんまや、堀の水溢れそうになってる。もう溢れ

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「豪雨の予感」第21話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第21話(水害被害ストーリー)

時刻は午前11時になろうとしている。愛子がいる大手前高校は15分ほど前から再び線状降水帯による激しい豪雨に覆われていた。お天気アプリの雨雲レーダーによると、現在吹田市あたりから大阪市住吉区あたりまで伸びる南北に長い線状降水帯がえんじ色の細長い帯で表示されている。地図の下にあるスライドバーを横に動かすとそのえんじ色の帯は少しずつ東に進んでいくが、そのえんじ色の帯を追いかけるように絶え間なく同じえんじ

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