見出し画像

ゴルフデビューというハードルを越えると、ビールも美味しくなる

私が打った球は真っ直ぐ飛び、きれいな孤を描いて狙い通りの場所へ落ちていく。
「お~センスいいね~」
友人たちが自分のことを褒めてくれる。
その言葉に乗せられて、7番アイアンでもう1球打つ。
調子に乗ったせいで、少しボールが右に曲がってしまい、少し悔しそうな表情を見せると、「初めてなのに、当てられるだけでも十分だよ」友人たちは笑いながら慰めの言葉をかけてくれる。

私は今までゴルフと無縁の人生を歩んできた。
学生時代はサッカー一筋で、社会人になってからはフットサルを始めた。
自身の中で、スポーツはヘロヘロになるまでプレイするものだという概念があり、ゴルフなどスポーツではないという考えがあり、ゴルフを少し馬鹿にしていた。
しかし、年齢を重ねると共に、フットサルをプレイする体力が厳しくなり、仲間も様々な事情で、一人また一人と離脱していく。
徐々にフットサルの活動量も低下してきたなかで、ビジネススクールの仲間から、「今度、みんなでゴルフ行かないか?」と誘いを受ける。
近年のゴルフブームもあり、年齢を重ねると、周りにゴルフを始める人も多くなってくる。
ミーハーである私は、少しずつゴルフに興味を持ち始めていた。
しかし、新しいことを始めることは、一人ではハードルが高い。まして、ゴルフのように揃える道具も多く、ルールやマナーを尊重するスポーツだと尚更だ。
そのため、仲間がゴルフの話題で盛り上がっている際に、自分もやってみたいと話しておいたことが、今回の誘いに繋がっている。

7月半ばの神宮外苑。
信濃町駅から目的地に向かう途中、大きな歓声が聞こえてくる。国立競技場でラグビー日本代表戦が行われているのだ。
しかし、今日の目的地は国立競技場ではない。そこを通り過ぎて向かった先にある「神宮外苑ゴルフ練習場」
ここが私のゴルフデビューの場所となる。
前の予定が長引いたせいで、集合時間に少し遅れて練習場に到着したため、友人たちは入り口にいなかった。
早速不安に襲われる。
何をしていいかわからない。
とりあえず友人に電話をかける。
幸いにして友人がすぐに入口まで迎えてに来てくれ、無事に中に入ることができたが、やはり、初めての場所は知見のある人と一緒に行くべきだ。

遅刻したせいで、受付をするところは見られなかったが、この練習場の課金システムは、入るボックスにより「1打球あたりの課金」「打ち放題」の2種類があり、受付時に入るボックスを決めて、支払は自動販売機のプリペイドカードを購入することで行う。

入口に迎えに来てくれた友人に連れられ、皆が待つボックスに向かうと、次々に声をかけてくれる。
「待ってたよ!」
「遅いよ~」
そんな友人たちの存在で、初めてゴルフにも関わらず、全く緊張なく始めることができた。

事前準備として、「ゴルフグローブ」だけは用意するようにアドバイスをもらっており、今日、自分がもってきたのはAmazonで買った1,000円程度のゴルフグローブだけ。
服もノースフェイスのハーフパンツに、アヴィレックスのTシャツ、靴はオニツカタイガーのスニーカーという恰好。
ゴルフ場でラウンドを回るとなると、諸々揃えなければならないが、打ちっ放しなら、この格好で十分らしい。

少し友人との歓談を楽しんでから、新品のゴルフグローブをはめて、いよいよデビューの時がくる。
クラブは友人の7番アイアンを借り、クラブの握り方、立ち方、スイング方法のレクチャーを受け、素振りを始める。
素直な感想は「何か変な感じ」
普段しないような動き。そして、普段使わない筋肉を使う。
自分自身の動きを俯瞰できるわけではないが、明らかに動きがぎこちないことだけはわかる。
5回素振りをした後、ついに人工芝へボールをセットし、軽く深呼吸をして、クラブを振り上げ、スイングを始める。
スイングが遅いせいで、他の人がだすような風きり音もしない。そして、クラブにボールが当たる音もしない。
当然、目の前あるボールは1ミリも動いていない。
空振りだ……。
友人たちは、にこやかに見守っている。
照れ笑いをしながら、再び態勢を整え、スイングに入る。
また、手ごたえがない。
再び空振りだ……。
今度は照れ笑いの中に、少し焦った気持ちが混じる。
次こそは……また空振り。
ここで冷静になるため、一度態勢を解き、友人にアドバイスをもらう。
どうやら、打つ瞬間にボールを見ていないことが問題のようだ。
素直にアドバイスを受け入れ、ボールを最後まで見続けるようにスイングすると、鈍い音がして、ボールが目の前から消える。
ほとんど距離と高さは出てはいないが、とりあえず当てることはできた。
再びボールをセットして、スイングをする。また、鈍い音だったが、前回より少し高さと距離が出ている。
連続して当てることができた。
これ以降は空振りをすることなく、少しずつボールとクラブが当たる時の音も良くなり、10球目くらいに、いい音がして、打球がまっすぐ孤を描いて飛んでいった。
「すごいね!」
「初めてなのにうまいよ!」
「フォームが柔らかいね」
「ふつうはここまで当たらないよ」
友人たちが次々と賛辞を送ってくれる。
これ以降“いい当たり”は多くはなかったが、空振りをすることもなく打ち続けることができ、素直な感想は「なんかいいかも」
打ちっ放しのゴルフデビュー戦で、これだけ気持ちよくプレイできたのも、友人たちの存在があったからこそ。
そして、ゴルフが終った後に向かうのは、練習場から歩いて5分の場所にある「森のビアガーデン」
これも、友人たちと来たからこその楽しみだ。
ゴルフに限ったことではないが、新しいことを始めるにはハードルがある。
そのハードルを簡単に越えられる人もいれば、そうでもない人もいる。
私もそうでない人の部類だ。
このハードルを越えるに、友人の協力を得てはいかがでしょう。
自分ひとりで挑戦するよりも、はるかに難易度を下げることができ、喜びを分かち合えることができます。
何よりビールが美味しくなります!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?