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読書感想文40 小川洋子著「掌に眠る舞台」

 劇場にまつわる不思議な話を集めた短編集。歯から生まれる虫。毎日同じ舞台を見続ける女。かつて女優だった人が語る『ガラスの動物園』、大きな犬が引っ張る車で売りに来る本屋。装飾用の舞台で暮らす装飾用の役者。役者のサインを集めているのに、舞台の内容はまるで覚えてない女、文章がとても緻密で美しい。小川洋子は、有り得そうでありえないギリギリのラインを攻めるのがうまい。演劇関係者でも観劇マニアでもないのに毎日同じ芝居を見続ける女などいるわけないし、装飾用舞台の装飾用役者などもっといるわけない。なのになんだろう、有り得そうと思わせる何かを書くのがとても上手だ。私達のいる世界の二、三歩外側を歩いている人という感じがする。



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