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総務DXが推進できる会社と推進できない会社の決定的な違い

企業全体の生産性や効率性を高めるDX(DigitalTransformation=デジタルトランスフォーメーション)を推進したいと考える企業が多くなってきました。コロナ禍により取り組みを考える企業が増えました。

中でも総務、経理、人事などバックオフィスとも呼ばれる部門はDX化を推進していくにあたって取り組みを始めやすく最適ですといった情報を見ることがあるのではないでしょうか。

始めやすく最適と聞きながらも本当に推進できるのかできないのかを迷い第一歩が踏み出せないこともあるでしょう。できている企業はどのようにDX化を進めたのかご説明させていただきます。

総務DX、バックオフィスDXを整理して考える

はやる気持ち。DXを進めなきゃという思いが強いとより焦ってしまいます。焦りは禁物というように思いが先行しすぎるとスムーズに進めることは難しくなります。まずは落ち着いて日常業務を見直してみましょう。見直しながら業務をまとめていくのです。

まとめ方の例
①大量な作業が必要な業務
②手間がかかり時間が必要な業務
③複雑で知識や経験が必要な業務

などに分けてまとめます。

さらにFAXや伝票など紙類、アナログのデータが必要なことやデジタル化されたデータで作業出来るものを情報として加えてください。

まとめるときは大きい紙に書くのもよいですしホワイトボードに書くのもよいです。エクセルなどに最初からリスト化できるのであれば後からの作業がスムーズになります。

自らが得意な方法を使って考えてまとめていくのが大事です。整理をすることでDXを進めていくために必要なことが見えてきます。正確にまとめることができればDX化によって得られるメリットを把握することができます。

実際は正確にまとめることも簡単ではないので正確性にこだわりすぎず情報を整理して共有することを最重要と考えてください。

ある社員しかわからない業務があるという状況を減らしてなくしていくこともDX化に限らず大事です。最初に業務の整理と業務の見える化に取り組みましょう。

最初はDXできなくてもいいのでは。

DXできなくてもいいんです。最初からDXできないです。DXを推進して最終的にDXにたどり着けばよいのです。DXはデジタルトランスフォーメーションのことです。

経済産業省のデジタルガバナンス・コード2.0にある、DXの定義は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」簡単にいうとデジタル化するだけではDXとならず企業文化を変革など限られた範囲にとどまらないことを指しています。

そんなの最初からできないと思いませんか。あきらめそうになりませんか。この章の最初にDXできなくてもいいと述べたのはこのことです。

DXを進めるにあたって3つのステップがあります。

1.デジタイゼーション(Digitization)
アナログ・物理データのデジタルデータ化
2.デジタライゼーション(Digitalization)
個別の業務・製造プロセスのデジタル化
3.デジタルトランスフォーメーション(DigitalTransformation)
組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革

出展:DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート2(中間取りまとめ)デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会

それぞれのステップにそって事例の紹介をしていきます。

1.デジタイゼーションの事例
・勤怠管理システム

以前はタイムカードに打刻して勤怠の管理をしていました。昨今はPCの起動や終了時の打刻、ICカードをかざして打刻するなどタイムカード=紙を使わずに勤怠情報を収集できるサービスがあります。

・テレビ会議やオンライン会議
会議室に集まって会議をすることがこれまでは普通でした。テレビ会議は以前よりあるので利用されている企業も多いかもしれません。導入にあたって会議のための出張費や移動時間などと導入のための費用を比較検討していました。

昨今のオンライン会議システムは自宅や外出先、車中でも参加することができコロナ禍で感染予防の観点から多くの企業でテレワークをするようになり普及しました。

・帳票や伝票のペーパレス化
22年9月分など紙のファイルに閉じて帳票をまとめたり、月々の作業として確認が終わった伝票や帳票類を整理して格納していました。スキャナーで電子化し月毎などでまとめることで容易に保管、確認できるようになります。

以上のようにデジタイゼーションはアナログのものを電子化していくことを指します。

2.デジタライゼーションの事例
・自動車や自転車などのシェアリングサービス

場所や時間、予約状況をデジタル化することでレンタカーよりも手軽にまた自家用車を所有することなく必要な時だけ利用できるようになり都市部ではユーザーが増えてきています。

・写真データを送受信できる
デジタルカメラで撮影するところまでですとフィルムや写真プリントのデジタル化でデジタイゼーションとなりますが送受信ができるところまで行くと写真を見るためのプロセスがデジタル化されるのでデジタライゼーションとなります。

・RPAを利用して作業を自動化する
請求処理などシステムを操作することをRPAで自動処理させます。操作するために必要なデータをエクセルなどでまとめて入力作業や実行作業をRPAで動かし時間の短縮とミスの低減を実現します。

RPAで単純かつ大量な処理をさせることはDX化へ推進していく中で成果がでる話になります。

以上のようにデジタライゼーションはプロセスそのものを電子化していくことを指します。

3.デジタルトランスフォーメーション
・チャットbotによる自動応答

問い合わせ対応業務の負荷を低減できます。キーワードに合わせて回答の候補を提示、選択していただくことで問い合わせの回答にたどり着けるものです。

レベルの高いものになると問い合わせ内容と回答の実績を蓄積することでより少ないステップで回答を提示できるように成長していくものもあります。

・勤怠管理・給与管理のクラウド化
クラウド型の勤怠管理は出社せずテレワークでも出張先でもスマホやパソコンで打刻することができます。打刻のクラウド化のみでなく残業時間の集計内容に合わせてアラートメールを送信でき、有給休暇の取得状況や残日数なども簡単に把握できます。

出勤シフトも組むことができます。システムを活用することで多様な働き方に対応できるようになります。

以上のようデジタルトランスフォーメーションは企業のビジネス全体をデジタル化することで、ビジネスモデルや企業文化そのものを変えていく変革を意味します。さらに大規模な事例については下記のリンクをご確認ください。

経済産業省・株式会社東京証券取引所・独立行政法人情報処理推進機構
「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/dx-report2022.pdf

小さな一歩の積み重ねを続けることだって難しい。

ここまででDXへの取り組み方とDX=デジタルトランスフォーメーションとはどんなことなのかについてご説明をさせていただきました。大規模な事例などを見ていただくとDXまではできないかもしれないと思いませんか。

先に述べた経済産業省のDX定義にある

・製品やサービス、ビジネスモデルを変革
・組織、プロセス、企業文化・風土を変革
・競争上の優位性を確立

これを満たすのがDXだと言われると目指すことはできても達成することは困難です。ですがDXを進めるにあたって3つのステップに分かれていることを思い出してください。

1.デジタイゼーション
2.デジタライゼーション
3.デジタルトランスフォーメーション

この3つです。DXの最終形だけを見るとこれは困難でできないとくじけそうになりますが3つのステップにそって進めることでDXを目指していきます。デジタイゼーションは単純にデジタル化させることを考えます。最初に整理した業務内容の中でFAXや申請書類、伝票等々、アナログのものをデジタル化していきます。

例として

・現金精算申請の書類をエクセルなどのデータに変更し手書きでの申請をデジタル化する
・総務で押印していた角印をデータ化して押印ルールのもとで誰でも書類に入れることができるようにする

などです。

身近なもので簡単そうなものから取り組むのが大事です。簡単ですぐ終わるから今のままでよいといった意見が出るかもしれませんが簡単ですぐ終わるものはデジタル化してより手間をなくす。

こういった考えのもとで取り組んでいく流れをつくってください。簡単なものなのでデジタル化する難易度も低いです。ですが「簡単なものはそのままでいい」と考える方々もいるので小さな一歩を積み上げ続けることも難しくなります。

とにかく簡単なものからデジタル化することで考え方が変わり始めます。

もう一度説明をさせていただきます。業務ごとに整理した内容の中から対象業務を絞り関連するアナログのものをとにかく簡単なものからデジタル化し続ける。小さな変化が大きな変化につながると信じてデジタル化を進めましょう。

だからできる、だからできない。

できる、できないを決定する要因として組織や人材の育成・確保があります。取り組みメンバーが孤立して社内全体を巻き込む活動ができなかったり人材を確保しようにも社内に適任の人材がいない場合もあります。

DX推進をしていく上での組織や人材についての考察は総務DXが推進できない原因は何か。『DX推進人材に必要な知識とDX推進のプロセスは?』の記事をご確認いただければと思います。

デジタイゼーションにしてもデジタライゼーションにしても推進するにあたって自部署だけで完結できる範囲は狭いことが多いです。より多くのデジタル化を進めていくと部署間での調整が必要になります。

部署間の調整をしていくとそれぞれの立場で意見がでます。相反することもあるのでまとめ役を任命しなければ推進することは難しくなります。できる企業にはこの推進を大きく担うまとめ役がいます。

基本縦割り型が多い日本の企業では各部門での最適化やデジタル化を進めることは比較的できます。

ただしこれでは部署内ではある程度の最適化、デジタル化に留まってしまって全社的な効率化につながらないことになります。縦割りを横断して業務改善を行っていくには組織を横断して対応するまとめ役が必要となります。

組織全体で課題を改善していく縦割りではなく横断した考え方で各部門の業務を見据え改善のアイデアや部門間の調整を実行する部隊がいることで部署内だけでなく会社全体を最適化できるようになります。

デジタル化を進めていく中でも部門間でやりとりする情報がアナログのものありますが情報を出す側も情報を受ける側も同じ考えを持たなければデジタル化をすることができません。

まとめ役は横断して活動する立場なので一定レベルの権限が必要になります。

権限を持ち部署間の調整を取りながら巻き込んでデジタル化を進める。まとめ役がいる、いないでは推進速度から推進範囲が大きく変わります。できる企業にはまとめ役部隊があると覚えてください。

まとめ:積み上げたことでわかったこと。

ここまででいきなりDXを目指すとくじける。だから簡単なことからデジタル化するデジタイゼーションから始める。デジタイゼーションをした上で業務プロセスをRPAなどのツールを使って業務改善していくデジタライゼーションにつなげること。

デジタル化を進めていくことで重要となる組織を横断するまとめ役部隊を作ること。この活動を続けていくことで本当のDXの実現を目指していく。まとめるとこのようになります。

我々も日々DX実現を目指していく中で試行錯誤を繰り返すことで少しずつ成果を出しています。現在、取り組んでいることは工数の削減、時間短縮がメインです。成果は時間で集計するものがメインです。

1か月合計○○〇時間削減達成!といった話になります。ツールを利用するコストもあるので費用対効果を確認し、あと○○時間削減できるように改善できることが無いか考え続けています。

こうやって改善を積み上げていく中で業務を標準化していくと誰でもできるようになり助け合ってできる仕事が増えていきました。いろいろな考え方を共有していくと無駄な作業を発見して改善できたこともあります。

そういった実績が増えてくると会社内の会話にも変化がでてきたり、これまでとは違う考え方、大げさにいうと企業文化が変革していると感じることもあります。社内に限定されますが一部DX化に近づけていると実感しています。


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