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43商話1・卸売市場その1

先回までの、暇話からガラリと変わって、少し固めで推移するこの頁の以下の記述と今後の記述は、商売の根本を中心話題にして、数回に分けて記述したいと考えている。で、その商売ネタの初回は、卸売市場の利用を中心として記述をしていきたく思う。少しでも、自身の生産物を早く確実に有利に現金化するのには?を考えて、生産計画や行動と基本思考を見直して欲しく思う。
上の画像は、少し古いが、大阪市中央卸売市場本場正門から市場母屋を眺めた画像である。私が昔に職を得ていた頃は、昭和初期の建屋が多く残っていて、右に進めば青果と果実、左に進めば鮮魚と塩干、その両側に挟まれる中央の建屋の1階には食品に付属する商品を扱う機器や飯屋が連なっていて、その2階には、診療所や各商業者団体の事務所や産地の出張所が有った。
ずいぶんと、整理されて広く感じるようになった。鉄道貨物が入選できるように競場までレールが引かれていて、深夜に気まぐれで訪れる機会があると、冷凍マグロが滑り台で冷蔵貨車から降ろされている光景も目にした事が有る。しかし、私が職を得ている間に、殆どがトラック輸送に切り替わって、大阪市場駅は廃止されたと記憶している。
一部農業者や、農産物商流改革を唱える者達は、この卸売市場の利用の仕方を研究もせずに、活用する事無くして不要を唱えているように思えて仕方がない。

《各地市場の特色》
大阪市中央卸売市場本場で揉まれに揉まれた、就職の最初、上司から訓示を有り難く頂戴した。
①「今までの学歴、経験、生活がこの市場労働と生活の中で通用するとは思うな!」
②「行儀作法から教えるから従え!」
③「やる事が終われば、サッサと帰宅して英気を養え!」
④「お客様の意志と意向には服従が基本!」
⑤「出来ない事はするな!だが、してみろ!」
⑥「喧嘩は、するな!腹が立っても、笑え!将来その笑顔は、金になる!」
と、こんな感じ。
同期は、徳島から見習いで来ていた二人と、長崎県大村市出身で明治大学卒の私を含めて男子四人。徳島から来ていた二人は早々にリタイア。残るは私と明治大学卒。明治大学卒は要領が良くて、率先して仕事をしない奴だった。上司は見抜いていたみたいだが、結局、先祖から引き継いだ会社を倒産させて大手卸売会社に吸収されたと聞いた。
そんな大阪卸売市場本場での職務経験が有ったからか、京都市卸売市場の卸売会社や仲卸売会社との取引を行うに際して、何ら不都合はなくすんなりと取り組みを始める事ができた。実際、大阪卸売市場の莫大な物量と取引スピードと関わる人間性等を相対して比べてみて、京都市卸売市場がすごく上品で品格を感じたりもした。しかし、金のやり取りだけが信用を繋ぎ止める基本の厳しさは変わらない。
首都圏の卸売市場にも数回訪れた事もあるが、作られた活気と疲れた見栄の部分が、各所に開設された、どの市場にも有るようにも感じたし、その職域で働く者の勘違いが生産する行儀の悪さに、嫌な思いをした事が有る。

京都市卸売市場近郊野菜部での農産物荷受け風景。
生産物を種別生産者毎と等級に分けて整列させる。
翌朝、内容の品質を見極められて価格が決定される。
同一産地から同じ作物が大量に入荷するという時期は限られていて、
夏場の茄子、冬場の白菜、カブラくらいであろうか?

話題を京都に戻すが、京都市卸売市場では、野菜委託販売取引(卸売市場に生産者が出品して、仲卸売り業者や競に参加する買参人が価格を決定して購入する)に於いて、同じ市場では、おおまかに生産地別で二つの卸売りが行われる。一つは、京都府下・滋賀県下で生産された近郊農作物の取引。もう一つがそれ以外の遠隔地から到着した農産物の取引である。この方式は全国でも珍しいと思う。各競に参加できる仲卸売り業者や買参人は、それぞれ、取り扱う農産物に特色を持つ。即ち、遠隔地からの農産物を取り扱う業者は、近郊で栽培された農産物を取り扱わないのが原則で、また、その逆も原則である。

《高級品過ぎるが当たり前の事)
下の画像は、上賀茂特産野菜研究会の出品する【賀茂茄子】。知る限り、ほとんどの入荷量が、競売り前に、予約取引で競場から消える。
私の親族数名も。この会に発足時の中心として参加し、出荷を行っているが、出荷基準が厳しすぎるため、この頃、参加者が減ってきたとも聞いた。それもそのはずで、JA京都が育成した産地(亀岡市域・綾部市域)が、集団的大量生産を行い、伝統的に守ってきた高品質で高付価値を物流数量で脅かされるようになってきたから、本来の生産地のと生産物の正当性を保守する為に発足した研究会である。研究会の委託する作品は、その価格はとてつもなく高価で、私の知る最高値は、1ケース八個入りが3万円!
聞くと、既にその生産者は定まった顧客から生産者番号を指定されて、卸売りから仲卸を通じて確固な商流を有していると聞いた。即ち、卸売市場に持ち込めば、既に価格と行き先は決まっている訳だ。そこでその競で、仲卸が競合したら当然、意地の張り合いの結果、価格の戦いになる。これは、生産者にとっては好都合。毎日、この調子だから、止められない止まらない=かっぱえびせん!
しかし、賀茂茄子1個に約3800円とは。店頭に並び、消費者の手元で支払われるのは、いったい、How mach?。

研究会生産者の作品が、生産者別に等級品格ごとにまとめてある。
これを開梱し中身を確認してから競に掛かるのである。
競場での争奪戦は見モノで、生きるか死ぬかの真剣勝負はどの市場でも変わらない。
ただ、取り扱う物量が違うだけ。大都市の市場では、短時間で半端ない物量が捌かれていく。

《利用方法》
自作品のレベル確認の為に出品をしてみるのも良かろうと思う。それも、JAを通じての共選ではなく、個人で委託契約を卸売会社と結んで、個選で取引をしてみる。その時の世の需要に対して、自作品の価値から実力が分るはずだ。価格を上げたいなら、出荷時期も大切であるし、何よりも作品の均一性が大切で、選別に時間をかけて、内容に嘘偽り無い、控えめの等級を付与してみるのが良いと思う。自身の気持ちで、今回出荷する農産物には秀品格を付けたいが、少し遠慮気味に優品格を付けてみる。競人達は、本当に生産者番号と出品物に対して物覚えが良くて、良いモノが優品格ならその生産者が生産する秀品格は、相当に良いものであろうと、期待をするようである。
私は、実際に自作品を誰が競り落とすかを連日見学して、そのように感じた時が有る。
又、その市場を出入りする物流会社の観察も同時に行ってみると良い。
どこからどんな荷物が到着して、何処へ向かっていくのか?をだ。
そんな何気ない少しの知見が有るか無いかで、大きく効力を発揮できる場合が偶然に近い形で起こりえる。
以前、量販店向け拡販の記述でしたと思うが、全国から運ばれてくる農産物には必ず帰りの便が有るという事をだ。もし載せてくれるなら、商圏を広げる事が出来よう。

《符丁を覚える》
卸売市場では、独特の数字を交わす為の符丁が飛び交う時が有る。これは、取引価格や秘密にしたい数字を一般の方に知られないようにする為である。
幸か不幸か、私はこれを知る。実際に、大阪市中央卸売市場本場で職にあった時に日常で使用していた。他に「赤子の行水」「猪木ピンチ」とか楽しいゴロも有った。
なかなかその資料は見つけにくいと思うが、チャレンジしてみたらいかがか?必ず、聞いて知っても、分からぬ芝居をする事が肝心(笑)。
当然、知るをバレると、相手は言わなくなる。

今回はここまで。
次回は話題を変えるか、卸売市場その2を記述するか思案中。
では。

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