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【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#11

第二幕 靴を落とした少女

7:0時の鐘の呪い


「そうよ。私はエラの持つ2つ目の顔よ。そうね。。。。。何と言ったらいいかしら。あなたの世界で言うと2重人格っていうのかしらね。」

……………………………………

エルは、私の世界のことやこの世界のことをすべて知っているかのような口ぶりでそう言った。

今、なんて言った??今、あなたの世界って言った??
ど、どういうこと???私の元いた世界を知ってるってこと?
そして、エラが二重人格?!
怖い。彼女が怖い。

私は、驚きと身震いで声にならない声を発した。

「っ。。。。。。。。。。。」

そして、私は、背筋がぞっとし、手に冷たい汗を握った。

「そうね。あなたの反応からして、何も知らないようだから、1から私が教えてあげるわ。まずは、なにから話しましょうかね。」

そういって、エルは話始めた。

「まず、私という人格が出来上がったのは、このお屋敷に来る前よ。

そのころ、エラは母親が亡くなった悲しさからか、立ち直れずにいたのよ。

そんなとき、父が再婚することになった。でもあの頃、クズ女たちは、エラに対して優しかったわ。そして、月日が経って、今度はエラの最愛の父が亡くなった。

父と母が亡くなった悲しみからか、徐々に私という存在が形どられるようになっていったの。

そうして、エラの父が亡くなってからというものの、あのクズ女たちがエラにつらく当たるようになった。

そして、私がエルという人格で、この世に目覚めたのは、2度目のこの物語の最中だった。」

「っちょっと待って。2度目のこの物語??

エルは、ここが物語の中だってことを知っているの??

え。。。。だとしたら、このシンデレラの物語は、何度目になるの??

そんなに複数の話なんて、私の知っているシンデレラにはなかったはず。」

「はぁ。。。。りう。あなたは本当に何も知らないのね。いいわ。教えてあげる。

ここは、4度目のシンデレラの中の話よ。そして、私は、ここが物語の中だってことを知っているし、この物語の結末もだいたいは知っている。

まだ、どうなるかはわかっていないけれどね。

あなたの世界のことも少しは知っているわ。

まぁ、それは追々話すことにして、そうね。エル(私)が目覚めたのは、2度目のこの物語の中。エラは、悲しみの日々から逃れるために私を目覚めさせたのね。

以前住んでいた家。いえ、2度目の物語のときにエラはとうとう、エラ自身(エラの中の優しい純粋無垢な部分)と、エル(クズ女たちからの嫌がらせの日々と父と母がいなくなった悲しみから生まれた憎しみや悲しみの部分)が乖離してしまったのね。

1度目の物語のときから、エラに対してあのクズ女たちからの嫌がらせはあったのよ。女召使いとか今のような姉とか設定は様々だったけどね。

でも、このお屋敷に来てからますますエルに対して当たりが激しくなった。

それと同時に、私がエラに代わってあのクズ女たちからの嫌がらせ、暴力に耐えることが増えていったわ。

そして、私が姿を現せるのは、最初にこの世に目覚めたこの0時の鐘が鳴ったときから、午前2時の間の2時間だけ。

その間だけは、私は私としていられるのよ。」

「エルは、あの2人の娘たちから暴力を受けているときと、0時の鐘が鳴ったときから、午前2時の2時間だけしかいられないってこと?

でも、そんなこと。。。。。」

「そうよ。これは、嘘じゃない。本当のことよ。」

「それじゃあ、自分の意志でエルとして、日常を過ごすことはできないの?」

「そうね。それは、エラが納得してくれないことにはどうにもできないみたいなのよね。

この体も心も、もともとはエラのものであり、エラはこの物語の主人公だからだわ。
きっと。

それに、私は、エラの一番の理解者でいなくてはいけないわ。
私ももとはエラの一部なんだから。

それでも、どうしても、あのクズ女たちのことは許せないのよ。
毎日毎日、ひどい言葉を浴びせられて、気がおかしくなりそうなときもあったわ。」

そういって、エルは一呼吸おいてから、まるで血走っているかのような真っ赤な目で、にやりとほほえみ静かな声でこういった。

「だからね。。。。。私は、あのクズ女たちに復讐するのよ。

この話がそんな綺麗な話で終わるわけないでしょ。

いえ。綺麗な話なんかで終わらせたり絶対にしないわ。

私が。。。。私が。。。。エラがどんな思いで、生きているかを思い知らせてやるのよ。」

私は、このとき彼女の奥底に秘めていた、黒い感情を目の当たりにした。

そして、彼女の目の奥には、静かな青い炎がゆらゆらと燃えている、そんな、気がした。

でも、私は、少しほっとする気持ちもあった。

エラは、つらいときでもいつも困ったように笑っていたから、人間じゃないような、いつも傍にいるのにいつも手の届かないところにいるような、そんな危うさを感じていた。

だから、この瞬間、私は、やっとエラの、エルの、彼女の本音を聞けたような気がした。

「それにね、私が存在できる理由が0時の鐘なんて。。。。。

まるで、0時の鐘の呪いね。

この呪いが解けるときはいつになるのかしらね。」

そういって、エルは孤独を隠すように屋根裏部屋にある小さな窓を見つめた。
そのとき彼女は、泣き出しそうに、この世をすべてを嫌っているようなそんな顔をした。

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