【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#25
第二章 靴を落とした少女
22:私の童話集
「じゃあ、舞踏会の最後の日。鐘が12回鳴ったとき。それまで、耐えてね。」
「おうよ。待ってる。」
私とアルは手を固く結んだ。
もう直ぐ夜が明ける。
早く帰らなくちゃ。
エルとエラが心配する。
私は建物の物陰に隠れて、腕にしていたボタンに息を吹きかけた。
私は、ふわりと宙を舞い家に帰った。
私は、家の窓からそっと入り込んだ。
エルはもう寝ている。
私も寝よう。
「おやすみなさい、エル。」
朝が来た。
私は今日は少し早起きをした。
エラが朝一番に私が起きているのを知ると、驚いて
「どうしたの?大丈夫?」
と心配してくれた。
私は、「大丈夫だよ。」と返事をし、昨日のアルとの約束に思いを馳せていた。
気になった点がいくつかある。
まず、私専用のあの童話集があるってことだ。
それがどこにあるのかが分からない。
それをまずは見つけなきゃ。
朝支度をし、お母様とお姉様たちの朝ごはんを作り、お掃除をし、花壇のお花に水をやる。
一通り終わると、今日は、何故だか屋敷に知らない人達が来ていた。
そして、何やら煌びやかなドレスやアクセサリーがどっさりと、屋敷に持ち運ばれていた。
気になったので、耳をそばだてて聞いてみると、
「きゃーーーーーーー!!!!素敵!!」
「このドレスもこのドレスも、あっ、このアクセサリーも私のものなのねーーーー!!」
「おやめなさい。リアナ。ネペ。はしたないでしょう。」
「いやはや、元気な娘さん達ですなぁ。」
「おほほ。そうなのですよ。」
どうやら、ドレスやアクセサリーの商人が来たようだった。
どれもこれも、輝いて見えて、1度は身につけてみたい高級品ばかりだった。
感動しながら見ていると、一際目立つ、アクセサリーがあった。
それは、エラと同じ目の澄んだ青いサファイアだった。
これ、エラに似合いそうだなーと考えていたとき。
アクセサリーに見とれているところを、お母様に見つかってしまった。
「何をやっているのですか。使用人もどき、あなたは、ここにふさわしくありません!あっちに行ってなさい!」
と言われてしまった。
それにしても、言葉がキツすぎるんだよねー。
お母様って。
あれ、現代だったら紛れもなく毒親決定だね。
なんて愚痴を心の奥底に秘めていると、エラがどうしたの?そんな怖い形相して。と言ってきたので、危ない危ない。エラにはこんなところは見せられん。と純粋な心を取り戻すように、なんでもないよ。とにこやかに言った。
その夜も、エルは、「もう、寝る。」と、元気がなさそうに不貞腐れたように言ったので、そっとしておくことにした。
「おやすみ、エル。」
と言って、私は童話集という本を探す冒険に出掛けた。
私は、ボタンにフッと息を吹きかけた。
まずは、リアナの部屋から。
リアナは、もう寝てるか。
散策したが、何も出てこなかった。
童話集という本は見当たらない。
次はネペの部屋。
エペは相変わらず、切なそうにペンダントを見ていて、寝そべっていた。
そっと、透視をしてみた。
そう、そう言えば言い忘れてたけど、
散策をしている最中に、透視能力が使えることも分かってきた。
ここにもない。
次はお母様の部屋だ。
あそこは、慎重に行かないとね。お母様に見つかってしまったときには殺される覚悟でないと。
抜き足さし足で、こちらもそっと、透視してみた。
が、ない。
童話集という本がどこにもないのだ。
はぁ、もうーどこだよ。
とやりきれない思いを胸に諦めかけていたそのとき、ふと、お母様の部屋の隣に寂れた荷物おきになっている部屋を見つけた。
こんな部屋あったっけ?と首を傾げ、まぁ、しょうがない。ここも一応透視しておくか。と、乱雑に透視した刹那。
ピカっと光るものが目に飛び込んできた。
それは、童話集という本に違いなかった。
これだ!!!
と私は歓喜を覚えた。
その本は、錆びれた奥の書斎にポツンと置かれていた。
奥だから取りずらい。と思いきや、私はボタンの力で物をすり抜けられるので、いとも簡単に手に入れてしまった。
そして、その本をしっかりと握りしめ、荷物置き場になっていた書斎から、そっと立ち去った。
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