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【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#13

第二幕 靴を落とした少女


9:白い鳥


そう、エルが言ったとき、私は、なんて残酷な運命なんだろうと悲しさであふれ、あのボタンをくれた少年レイがこの物語の中にいたことを知って、私はどうしようもなく泣きたくなった。


「まぁ。そんな感じね。途中で感情的になってしまったところもあったわね。
そうね。りう。最後に質問はあるかしら??」

「ううん。ないよ。」

「じゃあ。もうそろそろ2時になるわね。エラに交代する時間だわ。
私は、ベットに入らなくてはいけないわね。りう。あなたももう寝なさい。明日も早いんでしょうに。
なにか質問があれば、また0時の鐘が鳴った時に、会いましょう。」

「そう。。。だね。」

「おやすみなさい。りう。」

「おやすみ。エル。」

そういって、エルはベットの中に入っていった。
そして、2時になったとき、もう彼女は寝息をスース―と立てていた。

私はというと、彼女が寝たことを確認すると、いろいろ心身共に疲れていたのか、気が付いたら私も寝てしまっていた。

チュンチュン

「~~。~う。りう。」

ん??誰かが私をゆさゆさと揺らしてる。

「りう。」

ハッ!!

「りう。朝だよ。」

見るとそこには、エラがいた。

「ェル。。。。。。」

「何か言ったりう。」

「う、ううん。エラおはよう。」

「そう。今日もいっぱい働かないといけないね。」

そういって困ったようにほほ笑んだエラの笑顔には、昨夜のエルの面影は見当たらなかった。

朝、私が朝食の準備をしているとき、継母と2人の娘たちが何だか騒がしかった。

準備をしながらよくよく、耳を傾けてみると。。。。

継母「まぁ?!2週間後にお城で舞踏会が開かれるそうよ!!」

娘1「お母様!!そうなのですの?!早速準備をしなければいけませんこと!!」

娘2「王子様に見初められるのは私(わたくし)でございますわ!!」

娘1「いいえ、お姉さま!!私(わたくし)でございますわ!!」

と何やら、姉妹でけんかを始めたようだった。

2週間後に舞踏会か。。。。

私がエルを最初に見かけたときに、白い鳥たちと話していたことのようだ。

そこで、エラは王子様に見初められるんだよね。
でも、そのときエルはどうなるんだろう。
そんな疑問と同時に、私は、もうすぐ物語の終わりが近づいていることを身をもって認識した。

そんなことを思っている間に、継母と2人の娘の朝食が終わったみたいだった。私とエラで朝食の片づけをしているときに、継母がこう言った。

「あなたたちは、舞踏会のときもこの家で家事をこなしていて頂戴。」

私たちは、舞踏会のときもこの家で留守番ってことのようだ。
でも、それを逆手に取ると、家事をこなしてさえいれば何をしてもいいってことだよね。エラは継母や娘2人の監視もないし、のびのび舞踏会に行く準備もできそう。エラが、舞踏会に行くことは運命の宿命(さだめ)だからね。

さて。今日もやるとしますか。

私は、そう気合を入れた。

そのとき、小さな声でエラが私にこう尋ねた。

「ねぇ。りう。今日だけでもいいから、花壇の水やり私に代わってもらえない??」

「え。。??あぁ。いいよ。私の仕事が軽くなるだけだから。
でも、いいの??エラの仕事が増えるんじゃ。。。??」

「え。。。??い、いいの。いいの。私が代わりにやるよ。」

???

私には、なぜエラが水やりを代わるように言ってきたかが分からなかった。

そして、暖炉の部屋の掃除をしていると、窓の外からエラが花壇の水やりをしている様子が伺えた。

すると、エラの周りにリスが1匹、2匹、ネズミが1匹、2匹、と動物たちがだんだんと集まり出したのである。
そして、その中には、エルのそばにいた白い鳥たちも一緒にいたのだった。
私は、あの鳥たちがエラと一緒にいることに、足がすくんで肘の裾と窓のカーテンの裾を少し踏んでしまったくらいには恐怖を覚えた。
しかし、今、エラと一緒にいるのは、あの夜見た赤い目をした鳥たちではなく、青い目をした鳥だったのだ。

私は、もしあの鳥たちが、エルのそばにいた白い鳥たちなのであれば、エルが言っていた0時の鐘の呪いもあながち間違えではないなと思った。
それと同じくらい、あの夜、小さな窓を見つめながら自分の存在価値を0時の鐘の呪いと言った、エルの背中が小さく小さく思えてならなかった。

その日の夜、家事がひと段落したとき、私は、エラにこう尋ねた。

「なぜ花壇の水やりを代わってと言ったの??」

「今朝のことね。あれは、あれはね。ど、動物たちを少しおしゃべりをしたかっただけ。」

と、エラは恥ずかしそうに、顔を赤らめうつむきながら小さな声で言った。

私は、その姿にほほえましくなった。

「そうだったんだね。言ってくれればよかったのに。」

「だって、りうにいうのもなんだか恥ずかしかったから。」

「あはは。エラって本当に純粋だよね。いい意味でね。でも、そこがエラのいいところだと思うよ。」

そう、私が言うと、エラは少し悲しそうな顔をした。

「そうね。純粋、、、、ね。
私は、優しくて”いい子”でなければいけないの。」


*これはフィクションです。
登場人物と現実では一切関係ありません。

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