大船渡帆立アパートメント

今回、帆立養殖に行ってきた。

岩手県の陸前高田から大船渡、岩手県や仙台の漁港では、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた地帯だ。

震災以前、以後というふうに現地の方々は区切りをつけて過去を語る。

瀧澤さんの家系は戦前から養殖業を代々営われている。今回私が訪れたのは11月の中旬頃で私が伺う前に今はホタテの洗浄をしているがそれでもいいかい?と言われた。私はホタテの養殖のほの字もわからないので、問題ありませんと言い、大船渡に訪れた。仙台から高速バスで3時間。私が大船渡に着いたのは夜7時で、そこから三陸鉄道に乗り換えて1時間ほどのところから徒歩で1.6kmのところに宿があるというので歩いて向かおうとしていたのだが、瀧澤さんに夜は熊が出てその辺は真っ暗で危ないから出歩かない方がいいので送っていってあげると言われたので私はお言葉に甘えて乗った。


瀧澤様を紹介していただいたのは、全国沿岸漁業組合という2015年に発足した漁業組合であり、最初は500人ほどからのスタートであったが、今では会員数は1万人を超えている。

その組合を立ち上げたのが千葉県勝浦の鈴木正男さんや瀧澤英治さんや次に訪れる菅野さん、対馬の梅野さんである。

私が伺う前の帆立の養殖の知識はスーパーで見かける帆立は大体養殖と書いてあり、北海道のものが多く、少量で高価であるという情報だけだ。


帆立の養殖条件としてはまず、気温の低さ。

帆立養殖は全長何メートルのに100メートル程に縄が並べられており、1つの縄に約20個ほどの帆立貝がついている。

帆立は稚魚の状態から2年で販売されるまでの大きさに成長する。

今回は1年目の帆立の甲羅にたくさんの生物がくっつく。それを洗浄機にホタテを入れて取り出す作業を行う。

機械に通している間に紐から離れてしまった帆立貝に付着している外来ほやや海藻、苔、むしを包丁のようなものでこそぎ落とす。

この作業を延々とやっていく。

作業をしていると、何やら小さなムール貝のようなものがロープに付着しているのが見受けられ、作業をしていくうちに小さなムール貝がどんどん出てくる。ホタテが大きくなればなるほど付着するムール貝の量は増え、収穫のころの帆立にはもはや大きさは小さいがもはやムール貝か帆立貝のどちらを養殖しているかわからくなるくらいの量だ。


帆立のついているロープは10kgほどの重さで、帆立と同じかそれ以上くらいに付着した外来ほやを合わせると15kgほどはあるかもしれない。


朝6時から11時までノンストップでこの作業を繰り返していく。

11月の岩手県の日にでは早く、6時ほどには明るくなっていた。ふと周りを見渡すと絶駅のすぐ麓に美味しげる森と透き通った岩手県の海のパノラマが目の前にあった。

ここの森には何種類の木々があると思う?

聞かれ600種類もあるんだよと瀧澤さんは言った。瀧澤さんの息子さんもそれをはじめて知ったらしく、驚いていた。ここには見てもわかるように豊富な自然が残っている。これが美味しい帆立の秘訣だよ。北海道はもっと量が多くて、世の中には北海道の養殖帆立が出回っているけど、味が良いのはダントツでこっちだよ。

森林と海は密接な関係があり、お互いに相互作用がある。緑が豊かなところでは美味しい魚が取れる。三陸のパノラマを見ていると対馬の断崖に聳える森と海を思い出した。


11時までの掃除の作業が終わると次はちょうど収穫時期になったホタテを1つだけ収穫するということで、その作業を行なった。私が来たということでできたホタテをいただけるということだった。収穫時の帆立は1年前のに比べて付着している外来ほややムール貝、ほや、など目で見えるだけで7種類ほどの生き物が帆立の殻に付着している。

1年目のものは人力でロープを引き上げられるが、収穫時の帆立はそうはいかない。帆立自体のサイズも倍になっており、なおかつ付着しているものも2倍どころではない。

船に装備されたクレーンで今回は引き上げたが、収穫する際は洗浄する機械の代わりに別の収穫用のクレーン?のような機械で行うので今回はいつもとは違うんだけどねと瀧澤さんの息子さんは言っていた。収穫ごろの帆立レーンのところに行くと何やら海藻やムール貝などの付着した丸い球体がある。これは何かと聞くと、浮きボールだよと言われた。養殖1年目のボールは赤色や黒色、など色の識別は何の問題もなくできたが2年目のボールは識別はほとんど不可能だった。

引き上げると私が普段見ている帆立の殻とは全く別物の帆立が上がってきた。


陸に戻ると収穫したホタテに付着したものを専用の包丁で落とせる範囲で落とし、それを帆立の殻の表面の汚れを削り取る機械に入れて出てきたものが私たちが普段見るホタテだ。


帆立の付着物を取る際に無駄な力を入れてしまうと、腱鞘炎になるから勢いで、包丁の重さでやっていくんだよ。

作業を続けていくと確かに一定数追えると腱鞘炎になるおいうのはすごくわかる。

私としては帆立の養殖と言っても私たちがみるまんまのホタテがあると思っていたが、全くそうではなかった。



この作業を追えると次は1年目の帆立の洗浄時に外れてしまったホタテを穴を開けてロープにくくりつけていく作業だ。

今はプラスチック製のTになったものに穴を通すとTの横線部分に引っかかり簡単には取れない仕組みになっている。これがないと時代は紐で一つずつくくりつけていたというから大変な技術進歩だ。


私が伺った2022年11月でその数ヶ月前にある有名youtuberが岩手県産のホタテを使った企画を行なっており、なんとそれを売った仲買の業者はいつも瀧澤さんが下ろしているところだと言う。某youtuberは一つ二千円で購入したと動画内で自慢げに述べていたらしいが、何と瀧澤さんがいつも下ろしている値段は帆立一つ200〜300円ほどだという。ひどい話だよね。うちはこれだけ大変なことして養殖してるのに仲買がその何倍もの値段で売り捌いている。

仲買を通さずにすぐ売るというふうにしたいんだけど、貝類に関しては食中毒の問題もあるからインターネットで売るにしてもその辺の問題を個人でクリアするのは難しいんだよね。

だから今はそうやって売るしかないんだよね。


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