5/22 お前はまだハルヒを知らない
やる夫(やるお)は2ちゃんねるやインターネット上に広まった、AA(アスキーアート)のキャラクター。
2007年7月の「刺身の上にタンポポをのせる仕事の採用試験に受かったお!!!!!」を発端とした、これらAAを用いたストーリー仕立てのスレッド群は俗に『やる夫スレ』と呼ばれる。
(Wikipediaより参照)
みなさんのインターネットとの出会いはいつでしょうか。
自分はおそらく小学校5年生頃、3DSを手に入れた頃です。みまもり機能の周知が今より進んでいなかった時代、3DSは自分にとってゲーム機ではなく、際限なくインターネットブラウザーを使うための機械でした。
小学校5年生当時・2010年代前半のテレビに対して、正直自分はあまり良い思い出を持てていません。
めちゃイケやとんねるずのノリについていけず秋元康の求める大衆にもなり損ねたリトルナードにとって、あの頃のテレビは翌日の話題についていくために見る宿題でしかありませんでした。男気じゃんけんのルールを何とか現場の空気から読み取ろうとしている時のあの卑屈な精神を、今でもたまに思い出します。
そんな自分にとって、毒にも薬にもならない情報が寄せ集められたインターネットの素朴さはなんとも居心地の良い空間でした。日々の営みと隔絶された、しかしだからこそ気取りのない匿名情報の群れ。後にも先にも、自分がインターネットに心から''ヌクモリティ''を感じていたのはあの頃だけでしょう。
当時読み漁っていたのは『エレファント速報』『鬼女板』『あじゃじゃしたー』、あとは「電車男」や「風俗行ったら人生変わったwww」のような名作スレまとめ、そして「やる夫スレ」でした。
自分はハルヒが本来どんな人間なのかを知りません。
声優を生業にしようという人間がアニメジャンルへの不勉強を誇示するのも恥ずかしいお話ですが、自分にとってハルヒというキャラクターは、時代を席巻したアニメ主人公としての側面よりもAAとしてあらゆるやる夫スレに登場した名女優としての認識の方が強かった。やる夫スレで見る彼女は、あらゆる設定、あらゆる時代観を乗りこなし、どんな時も変わることのない自らの矜恃を示し続けた傑物でした。
ハルヒの登場するやる夫スレの中で自分が特に好きなのが「サバイバルヤルオ」です。「サバイバルキッズ LOST IN BLUE」を原作としたこのスレにおいて彼女は『あらゆる知識を持ち、ノーベル賞候補筆頭と呼ばれるほどの頭脳を持つ天才』としての役目を見事に果たしきりました。
もし自分が「ハルヒの名言は?」と聞かれたらまず「『芍薬!』」と答えることでしょう。野生動物に噛まれ瀕死の重体となってしまったやる夫のために薬草を探すハルヒが、自らの経験と知識をフル稼働し現状の最適解に辿り着いて叫ぶあのシーン。あのシーンはハルヒの持つキャラクター性がいかんなく発揮された名シーンでした。
他にもハルヒは様々なやる夫スレに登場します。やる夫スレの中でも名作と名高い「やる夫が徳川家康になるようです」。自分はこれを読んで戦国時代の全てを学びましたが、このスレにハルヒは真田信繁(幸村)として登場し、真田十勇士であるSOS団(信濃をおおいに盛り上げるための真田信繁の団)を率いて大坂夏の陣を戦い抜きました。また、「やる夫とハルヒたちが難事件を解決していくようです」ではタイトルに書いてあるまんまのことをしています。途中でエタってしまいましたがこの作品も面白い。
このように、ハルヒはやる夫スレの中でも御三家(「ハルヒ」「らき★すた」「Rozen Maiden」の3作品)と呼ばれるほどの作品の主役としての地位を築いたわけですが……そんなハルヒの原作を見るのが、私は怖い。
怖いです。見てなんかちょっと違うなってなったらどうしよう。いやちょっと違うのはネットハルヒの方なんですけど、それしか知らなかったわけだから。
しかもちゅるやさんがいないんですよね?原作って。初めて知った時びっくりしました。鶴屋さんはいるのにちゅるやさんはいないの!?!?って。どんな感じなんですか。ちゅるやさんがいないハルヒって、ネットの手が入ってないハルヒって。
そこにいるのは本当に私が知ってるハルヒなのか。
いつかきちんと心が決まったら見ます。
そしてその時には、いつかのリトルナードに笑いながら原作ハルヒの話をしてやりたいです。
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