歯の痛みで目が覚めるとそこはこの世で最も太陽に近い場所であった。白い塔の頂上に白いベッドが一つ、その上に白いシーツが一つ、白い枕が一つ、白い私が一つ、そして白い掛け布団が一つ、置いてあった。夏の夜空が暁じんわり白んでいくのと同じスピードで意識が明晰になっていくと、口の中に違和感が転がっているのに気付いた。乾燥した舌先で弄ぶとカラカラと音を立てる。その正体がなんであるかはわからないが、きっと青色のものだろうと思った。確かめるために私はのっそりと上体を起こして、私を覆っていた真っ白な布地にそれを吐き出した。予想通り、それは青かった。三つの真っ青な歯であった。その色は私の心に大いなる歓喜と畏怖の念をもたらした。まるで地球のようにすら見えた。幼子が小さな手で握る父親の小指のような尊さを湛えていた。私は身じろぎもせず、ただその青色を見つめていた。しかし、時間が経つにつれて、その青色は、無感動に降り注ぐ太陽の熱によって蒸発していき、最後には漂白され、ただの白い歯になってしまった。否、よく見ると、それぞれには小さな虫歯の痕が発見された。私は3本の歯を掴み取り、塔の頂上から無造作に放って、また眠りについた。太陽は依然として私の真上で強い輝きを放ち続けていた。それ以来、私が目を覚ますことはなかった。


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