都詩型の人間

立方体は白く
直方体は青い
生きるために醜い嘘を吐いた貴方は美しい

夜が猫を食べては吐き出す
脚の細った吐瀉物たちは
超偽善的な街灯に照らされ
濡れた身体はぴちゃぴちゃ光る

もう全て忘れていいよ
そう言って君は横断歩道を渡る
そして数秒前のダンプカーに轢かれ
赤い血が時間のはじっこを赤く塗った
赤い血が時間のはじっこを赤く塗った
赤い血が時間のはじっこを赤く塗った

自動嘔吐
間違いはなかった
白昼伸びるビルとビル
屋上朝顔が咲いている

電光掲示板の中で誰かがセックスをしていた
汗も流さず、顔色も変えず
ベッドには大量のトマトが転がり
時折身を捩る二人に潰される
日本万歳
静かに叫んで二人は果てた

どうやらその映像を見たのは僕と、道路を挟んで丁度僕の反対側にいた浮浪者の老人だけだった。奇妙なポルノムービーが人々が目下熱狂しているサッカーW杯の中継に切り変わった瞬間、彼は快哉を叫ぶ。初めてこの世に産まれた時のように命懸けで叫ぶ。しかし群衆には彼すらも見えない。見て見ぬ振りすらも最早彼らには出来ないのだ。空は嘘みたいに青く、飛ぶ鳥はネズミを咥えていて、都会の硬いアスフェルトの上で枕も無しに眠る僕はまるで馬鹿みたいだった。スクランブル交差点は今日も全てを許している。僕の後ろでセーラー服の少女が呟く。「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンルートヴィヒヴァンベートーヴェンルートヴィヒヴァンベートーヴェンルートヴィヒヴァン」

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