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埼玉県営の水上公園での水着撮影会中止騒動について。その17「水着撮影会の騒動の件、『まだ終わってないっぽいです』と考える兆候について。その1」


東京新聞TOKYO Web 首都圏ニュース埼玉2024年2月3日記事より引用

東京新聞のWebの記事で2024年(令和6年)2月3日に上の記事が公開されていました。

「『公共プールで水着撮影会』いいの? 埼玉県に意見出そう』 所沢の市民団体が街頭で呼びかけ」と題された記事は、所沢市で活動をする市民団体「所沢市民が手をつなぐ会」が街宣を行った事を報じ、埼玉県公園緑地協会(水着撮影会の県営プール指定管理者)が進めている「水着撮影会の在り方を考える検討会」(水着撮影会の開催ルールを再検討する有識者会議)が2月6日まで募集している「一般市民のご意見募集」に意見を送ることを促す内容でした。

「所沢市民が手をつなぐ会」は、衆議院選がおこなわれる場合、立候補を予定している小野塚勝俊さんと、日本共産党へ「政策協定の申し入れ」を行いました。 小野塚氏にはご理解をいただき、「つなぐ会」は小野塚氏を埼玉8区の統一候補実現に向けた候補者のお...

Posted by 所沢市民が手をつなぐ会 on Sunday, June 16, 2019

この「所沢市民が手をつなぐ会」というのは所沢地区で活動をしている左派系市民団体の様で、主に駅前での街宣活動を行ったり、左派系のゲストを招いて市民ホールで講演会を開催している活動が報告されていました。また、選挙では議員候補者や政党に「政策協定」を申入れ、実際に共産党候補者と協定を結んでいるなどなかなかアグレッシブに活動をされている団体でした。

今回東京新聞で報道された街宣で行っている
「若い女性の半裸を撮影するイベントが公共施設で開催されていることを知って、県に意見を出してほしい」
という主張を見れば会の姿勢は一目瞭然で、なぜ指定管理者と県庁都市整備部の出した「撮影会中止」の処分を三日後に県知事が慌てて撤回の指導を促したのか、という事実については「考えず、見ない」という方針なのだろうと言えます。

話を巻き戻して「水着撮影会の中止」を声高に叫ぶ姿勢は「他の意見は聞かない」という意思表明ですらあります。「ハレンチな撮影会は禁止!」という彼らのお気持ちの主張は、「憲法に基づく人権」の蹂躙である、とは微塵も考えてはいないのでしょう。
何故「撮影会のドタキャン中止」があれだけ炎上したのか、その理由は分からないでしょうし分かる気がそもそも無いんだと思われます。

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所沢の方々が、意見を出そうと街宣をなさいました!!!

Posted by ジェンダー平等埼玉 on Sunday, February 4, 2024

そしてこの所沢の街宣を紹介しているこちらは「ジェンダー平等埼玉」のフェイスブックの記事です。

「ジェンダー平等埼玉」Webサイトより引用(画像クリックでサイトにリンク)

「ジェンダー平等埼玉」とはサイトの紹介によると、2019年(令和元年)の埼玉県知事選挙を契機に「『ジェンダー平等の視点からの公開質問状』を知事選候補者へと出す為に有志が集った」という任意市民団体であり、以後も埼玉県の男女共同参画やジェンダーに関する施策に対して論評を加えたり意見書を提出するなどしています。

中央学院大学 現代教養学部 教員紹介ページより引用

この「ジェンダー平等埼玉」の中心人物と見られるのが、こちらの「共同代表」である皆川満寿美・中央学院大学 現代教養学部 准教授です。
日本社会学会に加入している社会学者であり、男女共同参画政策やジェンダー論などを専門としてます。

皆川氏は我孫子市男女共同参画審議会の会長や、第12次「はばたきプラン21」(台東区の男女共同参画審議会)副会長など自治体の審議会で「学識経験者」として委員を務めています。
また、2020年には第5次男女共同参画基本計画の策定に際して立憲民主党のヒアリングに招かれるなどしており、また東京新聞の埼玉版ではたびたびジェンダーや男女共同参画に係る記事に登場しています。

同じく共同代表として名前が見える賀谷恵美子氏。
都立高校の教員を務めていた経歴があり、都立文京高校や都立板橋高校などに勤めていた方の様です。
「学校教育におけるジェンダー平等」が専門の方の様で、論文や著作がいくつかあり、また各地で講演なども行っている様子が見かけられます。

1970年初頭にカリフォルニア大学でWomen’s Studies(女性学)に関わった経歴がある様で、帰国後は「婦人問題懇話会」で出合った井上輝子(辺輝子)が創設した「女性学」に関わって「アメリカにおける女性学講座」を共同執筆しています。
以来日本ではおそらく50年余りに渡って女性問題に関わる活動を行ってきた人物の様で、この分野ではいわば「開祖」とも言えるかなりのベテランの方の様です。

和光大学現代人間学部紀要 第5号(2012年3月)「女性学と私 40年の歩みから」から引用


もう一人、共同代表として名前が見えるのが鈴木多美江氏です。

埼玉県男女共同参画推進センター「令和2年度『女性リーダー育成講座 女性の声で地域を変えよう!(連続8回講座)』」より引用

鈴木氏は2009年には「ミミとうめの木」という絵本を描いており「絵本作家」の肩書を見かけますが、出版した絵本はこの一冊だけの様です。

ミミとうめの木 作:鈴木 多美江 出版社:文芸社 税込価格:¥1,210
発行日:2009年04月 ISBN:9784286061566

2011年(平成23年)に埼玉県上尾市が策定した「第5次上尾市総合計画後期基本計画」の一環で、市内の有識者や市民の提言を行う「”ほっと”なまちあげお市民会議」が組織され、鈴木氏も30名の委員の一人に専任されています。

2012年(平成24年)に発足し2019年(令和元年)に解散した川越市の一般社団法人参画社会地域フォーラムでは理事参与として名前を連ねており、男女共同参画推進のための研修などで活動をしている姿が見られます。

独立行政法人国立女性教育会館「平成28年度『地域における男女共同参画推進リーダー研修<女性関連施設・地方自治体・団体>』より引用

おそらく鈴木氏は上記の活動などで男女共同参画における活動を行ってきた人物で、2019年(令和元年)以降はジェンダー平等埼玉へと活動をシフトした様です。

また、興味深いのはかつて「朝鮮・韓国の女性と連帯する埼玉の会」の共同代表として名前を連ねていた事で、朝鮮総連のサイトのニュースなどに名前が残っている点です。

参考 朝鮮総連 コリアニュース
「日本各地47団体が警察当局による総聯議長、副議長宅への強制捜索を非難」
コリアニュース (chongryon.com)


日本のリベラル系の活動家はとかく「〇〇〇の会」「●●●ネット」などと任意団体を作るのが好きで、何かがある度に団体が作られ団体インフレを起こしている状態です。
任意団体の幹部も「共同代表」など数名が横並びに名前を連ねる事も珍しくなく、会のメンバーがほぼ全員理事や共同代表である事も珍しくありません。

そして上で紹介した「ジェンダー平等埼玉」も一般社団法人やNPO法人といった法人格を取っている様子がありませんので任意団体であると思われます。

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さて、なぜここまで「水着撮影会」とは直接関係の無さそうな「市民団体」について長々と書いてきたのでしょうか。

埼玉県庁webサイト「知事日程(令和5年7月)」より引用

こちらは埼玉県庁の大野知事の2023年(令和5年)7月の知事日程です。
県庁のWebサイトで県知事の日程は詳細に公開がされています。

そして、水着撮影会の騒動のおよそ1か月後にあたる(共産党の申入れは6/8)2023年(令和5年)7月13日の知事日程を見ると「ジェンダー平等埼玉 要望」という日程が入っているのが分かります。この要望団体こそが、ここまでご紹介をしてきた任意団体「ジェンダー平等埼玉」なのです。

こちらは「ジェンダー平等埼玉」の7月13日要望について、埼玉県庁の県民生活課人権・男女共同参画課(以下「県庁人権・男女共同参画課」とする)が作成した公文書です。
任意団体の申入れに対して、県庁の男女共同参画の部署が県知事及び県庁関係部署の参加手配と、要望内容についての事前の調整を行っている事が分かります。
我々一般人が想像する「ご意見の当初」のような「要望」ではなく、行政に対する「公的な申入れ」であることがお分かりいただけるでしょうか。

そしてこの「要望会」には埼玉県議会から2名の県会議員が同席をしています。そのうちの1名は「水着撮影会」で6月5日に県庁都市整備部へ「『一般市民のクレーム』の内容と同一内容の問い合わせを入れた辻浩司県議(民主フォーラム・埼玉県市民ネットワーク)でした。

参考
埼玉県営の水上公園での水着撮影会中止騒動について。その16「共産党埼玉県議団の『6/8申入れ』の3日前に県庁に問い合わせを入れた県議」


「要望会」の流れとしては、まず「ジェンダー平等埼玉」からの知事要望書の受け渡しがあり、その後に別室で県庁関係部署への個別の要望とその回答が行われる、というものです。


こちらは別室(知事応接室)で行われた「ジェンダー平等埼玉」と県庁関係部局との話し合いの名簿および会場配席図です。

団体からの各部署への要望が終わると、最後に埼玉県知事のコメントが行われて閉会という流れが組まれていました。以下は県庁人権・男女共同参画課が事前に調整しまとめた「知事コメント」の原稿です。

この「知事コメント」は、以後の埼玉県庁のジェンダー施策に関するコメントやリリースでも「同じ内容」が発表されていますので、この「要望会」によって県庁の男女共同参画施策の方針が定められたという事になります

つまり、法人ではない「任意団体」であるジェンダー関連の市民団体と埼玉県庁との「非公開」の会合で、埼玉県の今後の男女共同参画施策の方針が大まかながら策定された、という事です。

要は「県民が知らない密室で活動団体と県庁で施策(政策)が決まったよ」という事を述べたい訳で。
昨今はフローレンスが国の省庁に入り込んで施策に関わったり、colabo若草BOND Projectぱっぷすの「WBPC」が厚労省の審議会に有識者として参加して法案策定に関わる、などの問題点が明らかになっていますが、同様の事態が埼玉県でも進行し始めていますよ、という事です。

細かくはいろいろと気になる点があるのですが、広げすぎると焦点がボヤけますので、今回は「水着撮影会」関連に絞ってお話したいと思います。


以下は「ジェンダー平等埼玉」から埼玉県知事へと出された要望のうち、「水着撮影会」に関する県庁都市整備部公園スタジアム課所管部分についての部分抜粋です。

「ジェンダー平等埼玉」の当該要望は大まかに言うと以下の2点です。

①「水着撮影会」は有料で撮影者を集める商業的なものであり
 「営業」なのだから「経済的自由権」に位置づけられる
 「営業の自由」ではないのか。「営業の自由」であれば
 撮影会に開催に制限を加えるのは「行政の裁量権の範囲内」である。
 (だから水着撮影会は規制すべき)
②知事は会見で、水着撮影会の写真を確認したか、について
 「(確認)していない」「今後もするつもりは無い」と述べているが、
 県の最高責任者として確認する義務がある。

これに対する県知事、の補助機関である県都市整備部公園スタジアム課よりの回答、すなわち埼玉県庁の回答は以下の通りです。

この時の県都市整備部公園スタジアム課は、一か月前の6月8日の共産党の申入れと撮影会の中止処分、そして世論の炎上、不許可処分から3日後での処分撤回などを経て濃密な時間を過ごしてきています。

対する「ジェンダー平等埼玉」の要望は「水着撮影会は中止すべき」という事態の初手に巻き戻す話だった為、すでに県知事や知事室ほか県庁全体を巻き込んで議論を尽くしていた公園スタジアム課に5行で片づけられました


「ジェンダー平等埼玉」の主張を真面目に論ずると、実はかなりの話になってしまいます。それこそ憲法の学者とか最高裁の判事とかのレベルになるので正直ここで結論なんか出ません
恐らくは県庁公園スタジアム課の回答もこうした背景から上記の通り判断を避けた内容になったのだろうと推測されます。
当然一般人の私にも無理なので、以下は参照資料を元にした一般論を述べます。


まず、水着撮影会は「表現の自由」ではなく「営業の自由」の話ではないか、という主張について。

「営業の自由」とは憲法第21条の「職業選択の自由」に含まれる「経済的自由権」であることは「ジェンダー平等埼玉」の言う通りです。
そして「営業の自由への保護」は「職業選択の自由への保護」に比べると、弱くてもよいと考えられています。なぜならまず職業を選択してその職に就かなければ営業はできません。「職業選択の自由」は「営業の自由」の必要条件、「営業の自由」は「職業選択の自由」の十分条件だという事ですね。

「ジェンダー平等埼玉」は水着撮影会の制限(あわよくば中止)を目論んで「『表現の自由』と『営業の自由』は別個の問題である」という主張を要望で述べています。その上で「営業の自由」では「公共の福祉」に反するものについては制限が可能、だという主張です。


以下は「表現の自由」について専門家とも言える行政法学者の平裕介弁護士が「営利的表現・営業広告の自由」について述べたポストです。

上記の平弁護士のポストは「月曜日のたわわ」騒動の時にされたものですので、まったく同じケースについての言及ではありません。
その上でこれらのポストには「『営利的表現』も『表現の自由』が根拠」であると述べられています。

「ジェンダー平等埼玉」が述べる「有料で撮影者を集める商業的なもの」が水着撮影会であれば、まさしく「営利的表現」でしょうからすなわち「表現の自由」を根拠とする話だという、「ジェンダー平等埼玉」の主張とは真逆という事になります。


まあ、「ジェンダー平等埼玉」が「営業の自由」を持ち出したのは「お金を取って撮影させる」水着撮影会がいわば「風俗営業」であるから規制すべきである、と言いたいのだと思います。
しかしこの点については、6月の騒動の段階で太田啓子弁護士が一生懸命考えても「アウト」にできなかった論点でした。

そもそも県営公園のプールを設置する根拠法である地方自治法や都市公園法の当該条文は以下の通りです。

「県営プール」という「公の施設」は「住民の福祉を増進する目的」で設ける、と地方自治法にあります。「住民の福祉」とはすなわち「住民の人権」を実現するという事です。憲法第21条では「表現の自由」に含まれる「集会の自由」が「人権」として規定されています。

「公園」とはこの「集会の自由」という「人権」を実現する為の場所を公共で設けたものです。「憲法の人権を実現する為に地方自治体が『サービスの給付』として作る」のが都市公園なのです。

まあ「表現の自由」の中の一部である「営利的表現」を以って「表現の自由」全体を規制するのは無理筋なのではないか、と私は考えますが。
あと、「人権」の実現である「集会の自由」の制限(水着撮影会の弾圧)を主張するのは人権侵害の最たるものなのではないか、とも思う次第です。


もう一回繰り返して書いておきますが、こういった理由で

「ジェンダー平等埼玉」の要望①については話を巻き戻した無理筋である


と考えます。だから県庁公園スタジアム課も2行で片づけたんじゃないかなーとか。


そもそも今回の水着撮影会の問題は表現云々なのではなくて、埼玉県と指定管理者が「政治的圧力」に負けて「施設の使用不許可処分」という「権力」を、然るべき行政手順を踏まずに権限行使した結果、撮影会主催者に多額の損害を被らせた点だと思います。その顛末として行政が「比較衡量」にそぐわない重大な結果(「公平ではない」という意味)を撮影会主催者に強いた事こそ一番の問題かと。

「ジェンダー平等埼玉」が要望①末尾で言及している「管理者が(水着撮影会等の)ルールを策定する」事で一定の制限を加える事が「行政の裁量権の範囲内」である、という点については私も同意です。
「事前に」「明確な基準で」ガイドラインを策定するのであれば文句はありません。たとえば「18歳未満の撮影会被写体での出演は禁止」という様に。

基準を「公序良俗に反する」のように「如何様にも解釈できる」ものにすると、あとからオバちゃんが「ハレンチで公序良俗違反」などと文句を言ってきちゃいますので。その時に「ルール●●条にのっとりセーフ(もしくはアウト)」で明確に話を終わらせられる事が一番重要だな、と私は思います。



まだもう少し話は続くのですが、
字数が多くなってしまったので一旦ここで切って、続きはその2にしたいと思います。

では一旦。

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