ビンタ研究レポートNo.4【M田先生】
1984年──
小学五年生になった私は、S原さん以降ビンタチャンスに恵まれなかった。
その要因として挙げられるのは、小四~小五の担任が男教師になったことだ。
男のビンタなど1ミクロンも興味は無い。
なので当然、忘れものしがちキャラは辞めた。
クラスの女子からビンタをゲットすることも難しく、悶々とした日々を過ごしていた。
そんなある日、私はとある噂を耳にする。
「赴任してきた先生がめちゃくちゃ怖いらしい」
ほぉ……それはそそるじゃないか。
早速リサーチを開始した。
集めた情報を精査すると、その女教師は六年生担当、バスケ部顧問、M田先生。
忘れものをした生徒にはビンタ、素行の悪い生徒にはビンタ、部活でミスしたらビンタ。
M田先生は『躾=ビンタ』がデフォルトの、まさに理想的な女教師だった。
中でも、とびっきりそそられたエピソードがあった。
受け持つクラスの生徒達が、些細なことで揉め事を起こしたというのだ。
小学生あるあるの『男子VS女子』である。
そこで仲裁に入ったM田先生の立ち回りに、私は驚愕した。
なんと、喧嘩両成敗としてクラス全員(男女合わせて40人)にビンタを張ったのだ。
男女関係なく、全員にガチビンタ。
マジかぁああ!
私は妬んだ。
6年生のクラス全員を妬んだ。
M田先生のビンタが欲しい、M田先生にビンタしてもらいたいっ!
M田先生のマジビンタをゲットしたい!
しかし、担任でもなくバスケ部でもない私がM田先生のビンタをゲットするにはどうしたらいいのか?
接触出来る可能性があるとすれば、部活動だ。しかし、ここにも大きな壁が立ちふさがる。
私はサッカー部、M田先生はバスケ部顧問。
サッカーは運動場、バスケ部は体育館。
まるで太陽と月のように相反する場所なのだ。
しかし、そんな太陽と月でも重なり合う時がある。
そう……皆既月食のような現象が起きたのだ。
続く
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