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<MBTI>就活で出さないほうが良い心理機能はTiとFi

 今回は就職活動とMBTIの関係性である。

 私が新卒就活を経験した上で学んだこと、採用する側に立ってみて感じたこと、周囲の人間を成否を見てわかったことを書いてみたいと思う。私は基本的に心理機能の話を記事で書かない。それはユングのタイプ論にあまり納得していないからであり、単純に初心者にわかりにくいからである。ただ、今回は心理機能を使って説明したほうが早いので、やむを得ず言及している。

 私が就職活動の話を沢山聞いて思ったことがある。N型は基本的に普通のサラリーマンには向いていないのだが、就職となるとそうでもない。同じタイプでも自分のどの心理機能を全面に押し出すかによって会社側の印象は異なる。今回はそのことに関して論じたいと思う。結論から言うと就職活動で有用な心理機能はTe・Fe・Neであり、出さない方が良い心理機能はTiとFiだ。

ビジネスマンに必須のTe

 ビジネスマンいう存在は(仕事は全部そうだと思うが)職場で生産的な活動に従事することが求められる。これは当たり前だろう。ただ、この生産的というのは一体何を指すのか。実はひとえに「合理的な行動」といっても取りうる目標によって全く取る行動は異なっており、人間という存在がそこまで単純ではないことが分かる。

 社会人という文脈における生産性というのは、組織にとって役に立つ行動であるかどうかだ。これを決めるのは上司であり、会社であり、市場である。組織の立場に立ってその行動が合理的かを考えるのがTeという心理機能だ。例えば会社でボウリング大会を行うとして、Teで考える人間は会社組織の人間の交流を深めることでいかに業務達成のレベルを上げるかを考えるだろう。

 Teはより個人的な行動、例えば組織の中で自分がいかに出世するか、といった観点でも使用することが多い。ただし、この場合もあくまで自分の行動が組織の観点からどう評価されるかを前提として考えており、自分のその時の気持ちや気分は後回しだ。神の視点から自分というプレイヤーの取るべき行動を規定しているのがTeであり、ある意味で「自分で自分の上司をしている状態」だ。

実務に役に立たないが、就職活動には有用なNe

 転職活動だとそうでもないが、一般的な新卒就活ではNeはそこそこ有用なことが多い。確かにNeは地に足が着いていない面が強いのだが、新規のものに対する前向きな態度を作り出すし、就活で出て来る話に関しても興味を持ちやすいだろう。やはりどんな人間でも自分の仕事の話に興味を持ってもらえると嬉しい。Neは環境に順応する上ではマイナスになるが、環境を探索する上では大いに役に立つので、就職活動では有利である。

 なお、Neは仕事に役に立たないことが多い。クリエイティブな職業は別だが、通常のサラリーマンはほとんど使い出が無いことが多い。Neを使うのは業務に直接関係のない研修ばかりだ。Neという機能は本質的に学習向けの用途であり、実務向きではないのだろう。

企業には不要だが、職場には必要なFe

 私は普段、企業という言葉と職場という言葉を分けて考えている。前者は目的達成のための組織であり、徹底的に合理化されるべきものだ。後者は日頃社員が働きに行くオフィスにいる人の集まりであり、そこには薄っすらとした同調圧力や協調がある。前者に必要なのはTeのみだが、後者にはFeの存在が必須となっている。

 職場は人間の集まりである以上、完全に合理的には行かない。職場には数々の非合理な慣習があり、それらを尊重しないとうまく行かないだろう。Teから見ても非合理だろうが、なぜかここを廃止するとうまく行かないので黙認されている。これが職場の空気というやつである。

 こうした空気はFeそのものだ。Feにとって生産的なことは場の空気を良くすることであり、Feにとって非生産的なのは場の空気を悪くすることだ。「仕事がないのに居残る」というのはTiにとっては唾棄すべきことであり、Teにとっても大した意味は無いのだが、Feにとっては非常に重要な行為なのである。

 Feが強いと細かい気遣いが得意になるので、就活には有利だろう。見るからに気立ての良い人物と思われるからだ。

身勝手な印象になるTi

 これに対して就職活動の場では出してはいけない心理機能がある。典型例はTiだ。INTPの就職が弱い原因がこのTiを全面に出しすぎてしまう事がある。学生時代はTiを表に出すことがそこまでマイナスとされないので、引っかかりやすい罠だ。

 Teが外的な側面から合理化が行われるのに対し、Tiは内的な側面から合理化が行われる。すると、企業の側から見ると身勝手な印象を受ける。例えば早く帰りたいから職場の業務をうまく効率化するのがTiだが、組織目線からみると、自分の都合で動いているように感じられる。仮に仕事に関して前向きでも、Tiの場合は自分の趣味や利益のために仕事を志向しているような印象を与え、使いにくいだろう。

 例えば「X社に入って新しい自動車を造りたいです!」というTiユーザーがいたとして、こうした言説は教育機関では肯定されるだろうが、企業の側からみると絶妙にズレている。「自動車を作らない部署に配属されたらどうするの」、と思ってしまうし、「あなたの趣味を実現するために会社があるわけではない」と反感を買ってしまうと思う。

 Tiで物事を考える人間はしばしば学者に憧れる。というのも研究はTiの動機で動ける数少ない業界だからだ。スポーツ選手や個人事業主もそうかもしれない。逆に大企業の文系総合職との相性は最悪である。Tiの強い人間は副業や社会人大学院に興味を持ちがちである。

仕事で抑圧されるFi

 Ti以上に出してはいけない心理機能はFiだ。この機能はビジネスの世界では完全に抑圧されているし、社会的に是とはされない価値観だと思う。

 Fiの機能を一言でいうと「幸福感を追求する機能」だと思う。Tiが勝ちたいと思うのに対し、Fiは「勝って嬉しい思いがしたい」と考える。従ってFiを使用すると社会的な成功が人生の成功ではなくなるし、より個人の感性に正直な合理化がなされるはずだ。

 ある会社で働きたい動機が「苦しくない程度に働いて、安定した給料をもらって、家で子供と楽しく暮らすことです」では話にならないだろう。身勝手とすら思われない。この人は何を言っているんだろうと笑われてしまう。

 とは言え、Fiという機能の重要性が低いとは言わない。むしろ働く上では重要な機能だと思う。Fiが弱いと知らず知らずのうちに心の痛みが蓄積し、うつ病になるリスクが増加する。メンタルヘルス系の講習では必ずと言っていいほどFiに正直になっても良いということが言われる。

 それに巷の人生指南本でも大体がFiに焦点を当てている。人生の目的とは幸福になることであり、仕事はその手段でしか無いということだ。仕事には距離を置くべきという主張も多い。ただ、こうした言説が公的領域に持ち込まれることはなく、サラリーマンとしての表の顔はTeのままである。

実務に必要なSi

 Siを使うと就職活動に有利になるかは分からない。多分、やや有利ということになるだろうか。Siは自分の経験に即したものを語るので、世間一般の常識に忠実だ。Siが弱すぎると問題を生じるが、強みにはしにくいと個人的には思っている。Siが強い人間は体育会系組織との相性が良いため、こうした「レールに乗った」状態だと非常に強い。

 Siが重要なのは就職後だ。過去の経験に忠実にミス無く実務を続ける人間はSiを使っていることが多い。実際に手を動かして学ぶことに注力するSiユーザーは実務家として優秀だ。それにSiは単調な生活に対する耐性があるので、サラリーマン生活にもストレスを感じにくいだろう。年功序列社会との相性も良い。

場面によっては役に立つSe

 Seの場合は持っていて損はない。Seの人間は独特の鋭さを持つので、場面によっては非常に鼻が利く。ただ、就職活動という枠に関してはどこまで有効かはなんとも言えない。

 Seが有効な場所は現場だと思う。例えば腕利きの刑事やショップ店員のような人間はSeがかなり発達しているのではないかと思う。

深遠なるNi

 Niの場合はなんとも言えない。Neほどではないが、ある程度有益とは思う。ただ、Niという機能は謎めいていて、就職活動のような短期的なタームで使う機能ではないだろう。Niの遠大な世界観からすれば就職活動などほんの入口に過ぎない。

まとめ

 就職活動はそれまで所属していた教育機関からビジネスの世界の転換点であり、両者に求められるノリは根本的に違う。従って、それまでと同じ価値観だと齟齬を生じるケースがあるだろう。

 特に注意が必要なのはTiだ。この機能は教育機関や研究・起業には有用なのだが、職場との相性は悪い。ここに気が付かないと就活でピントのズレた答えを繰り返し、うまく行かないことが多い。Tiが強い人間は会社でやりたいことが抑圧されている感覚になるが、一方で家庭生活で欲求が満たされるわけでもないので、モヤモヤした気分になる。

 Fiもあまり好ましくないのだが、彼らはそもそも思春期の段階で競争や成功というものに見切りを付けているケースが多い。これがTiユーザーとの大きな違いだと思う。従ってTiほどギャップが目立ちにくいが、就職活動で抑えた方がいいのは間違いない。ただ、最近はメンタルヘルスやワークライフバランスの観点からFiを尊重する向きが強く、意外に社会人になってからも重要な機能である。

 とはいえ、どの心理機能を使うかは職場による面が大きい。特にNeやSeといったものはそうだろう。人生で絶対に成功と言えるものを1つ挙げるとすれば、適切に心理機能を活かせる職場に行くことだと思う。

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