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<MBTI比較㉜>INFPとINFJの違い

 ついにMBTI比較シリーズも最後となった。ここまで来るのは長い道のりだった。途中で放り投げず、最後までやりきった達成感を感じている。

 最後はINFPとINFJである。両者ともに人間について考えるのが好きなタイプであり、16タイプ診断について興味が強いタイプだろう。それも単なる血液型占いの延長ではなく、人間や人生の本質を探るべく頭を悩ませることが多い。この手のコンテンツは本質的にINFX向きなのだと思う。

 INFJとINFPはどちらも一般的に掴みどころがないと思われる性格タイプだ。もちろんこの認識は間違いなのだが、社会で大手を振っているESTJやENTJからはそう見えるのである。どちらも単純な陰キャでもオタクでもなく、重厚な世界観を内部に隠し持っている。会社や学校では開示しにくいかもしれないが、しばしば芸術作品などで内に秘める強いエネルギーを感じることができる。

 今回はそんなINFPとINFJの違いについて考えてみたい。

INFPは陰キャ、INFJは優等生

 まずは小中学生の頃から見てみよう。INFPは陰キャであることが多い。いや、厳密には陰キャであると自己認識しているケースが多い。そこまで社交的ではないし、マジメにコツコツというタイプではないし、自分の世界にこもりたいタイプだ。本質的にはINTPやISTPといったタイプと気質は似ているだろう。教室の隅で絵を描いているタイプだ。

 INFJはINFPと見かけが大きく異なる。INFJは十中八九優等生要素を持っている。基本マジメだし、それに加えて人望があることが多い。これは小中学生のときからすでに現れている。ISTJやENTJのように角が立つ要素がなく、みんなからは誠実な人だと思われている。内面に込められた激しい葛藤は周囲には伝わらなかっただろう。

INFPは意外とイジメられにくく、INFJはまずイジメられることはない

 INFPに関する記述でしばしば「いじめられっ子」というものが出てくる。確かにINFPはいじめられっ子となるケースも多いだろう。あまり社交的でないし、N型特有の浮世離れしたところがあるし、人に強く出るのも得意でないだろう。INFPは集団への順応能力は低く、小学校のクラスのような場所では裏目に出るかもしれない。

 しかし、具体的なINFPを見てみると、思いの外実際にいじめられている人物を知らない。いるかいないかで言えば存在するのだが、他の性格タイプに比べて頻度が高いとはあまり思えないのだ。NF型は人間関係を形成する能力は高いので、うまく立ち回ってイジメのリスクを回避するのは得意なはずだ。一軍に入れなかったとしても、自分の居場所を確保するのはお手の物だろう。INFP=いじめられっ子というステレオタイプは、INFPの弱さではなく、むしろ発信力の強さを表しているのではないか。

 INFJに関してはまずいじめに合うケースは見たことがない。人間関係に悩んだり、環境に馴染めなかったとしても、客観的にイジメに遭うケースは本当に稀だ。INFJは深刻な悩みを抱えているときであっても周囲からは普通のいい人に見えることがある。INFJはINFPに輪をかけて集団内で人望を確立するのが得意であり、イジメられるリスクは極めて低いだろう。恐らく、N型の中では最も低いと思われる。

 NF能力が高い場合、人間関係を形成することを得意とする。クラスや体育会系組織に順応する上では役に立たないが、自分の居場所を確保することにかけては右に出るものはいない。NF型の人間関係を会社で例えるならば、NF型は通常の出世競争に縁がないが、絶対に奪われなくて楽なポストをいつの間にかゲットしているイメージである。この延長になるが、私の知っているNF型はモテなくても交際相手がいることが多い。なぜなら交際相手は一人いれば十分で、万人ウケを狙う必要がないからだ。99人に嫌われても1人に好かれれば立派なカップルなのだ。

INFPは友達に自己開示し、INFJはほぼ自己開示しない

 INFPの世界観は独特で、集団や組織といった場ではウケは良くないだろう。INFP要素を全面に押し出してもスクールカーストで一軍に行けることはないし、顰蹙を買うリスクの方が大きいと思う。均質性と同調圧力の強い集団はどうしてもS型の方が有利だ。INFPは会社の飲み会のような場所も嫌うことが多い。

 ところがINFPは友達くらいの距離になると積極的に自己開示をしてくれる。ある程度付き合いのある同級生であればINFPの考えている世界はなんとなく理解できるだろう。これくらいの間合いが彼らにとっては丁度よい。数ヶ月付き合っても考えていることが分からないというINFPはあまり知らない。

 INFJの場合、INFPとはかなり自己開示の頻度が異なる。というより、実社会で積極的に自己開示しているINFJをほとんど知らない。INFJかどうかすら外見では判別できないこともある。INFJは自分の話をしないし、うまく言語化できているかも分からない。語らないことを良しとしている素振りもある。INFJの価値観を知るには単なる友達よりも更に距離を縮めないと難しく、しかもその状態ですら完全には言語化してくれないことが多い。本人もどう話したらいいのか分からないのだと思う。

 要するに、INFPもINFJも自分なりのやり方でキャラクターに擬態して生きているのだ。これはNF能力の為せるワザだろう。定式化できないオリジナルのやり方でINFPもINFJもうまく立ち回っている。違いが現れるのはP型とJ型の安定性の違いだ。INFPはペルソナを作るが、気分に応じて頻繁に脱いだり着替えたりする。INFJはストイックなので、24時間ペルソナを身に着けて、脱ぐことを良しとしない。着ぐるみで例えると、客が見ていてもショーの時以外は熱いから脱いでしまおうと考えるのがINFP、客が見ている以上は常にキャラクターとしての姿を保とうとするのがINFJである。

INFPは好き勝手、INFJは自己犠牲

 P型とJ型の違い全般に見られる傾向だが、INFPとINFJはその違いがかなり本質的なところにまで及んでいるようだ。

 INFPは心優しい性格ではあるが、最後はやっぱり自分中心の価値観だ。自分がやりたいことをやって、そこそこ成功し、幸福感を得たいというのがINFPの願っていることである。自己中といえば自己中だが、P型はみんなそうだ。共感性とか協調性によって内面に潜む自己中願望を抑えているのがP型だと思う。INFPの理想は本質的には「自分が楽しく暮らすこと」
だと思う。そして、他のタイプとは違い、「幸福」そのものを目的に据えている印象を受ける。T型が「勝ちたい」と思うところを、INFPは「勝つことで幸せになりたい」と思うだろう。

 ところがINFJはこれに留まらない重苦しい世界観を持っている。INFJは義務感が強く、自分の内面よりも「べき論」を優先する傾向がある。INFJは理想を持つだけではなく、そのために自己犠牲を捧げるところがある。INFPが幸せになれればそれでいいと考えているのに対し、INFJは「自分だけ幸せになるのはいいことなのだろうか」と考えてしまうだろう。INFJは自分に対して正直になれないタイプであり、自分でも無意識の内に消耗してしまうことがある。

 フロイト的な表現をすると、P型は自分のエゴに忠実かつ自覚的なのに対し、J型は超自我が強く、エゴや自我を無意識に抑え込んでしまう性質がある。INFJは「自分がどうしたいか」という点にINFPよりも無自覚だ。自分の作った判断の枠から抜け出すことができず、自分の気持ちに正直なようで正直でない。INFPは自分の気持ちが最初の来るのに対し、INFJは他人の気持ちや「あるべき像」が先に来て、後から自分の気持ちに気付くという感じである。

INFPはレールから外れたがり、INFJはレールに乗りたがる

 先述のペルソナの話の延長でもあるのだが、INFPはとにかくレールの上の人生に懐疑的な目を向けることが多い。エリートコースを進んでいる人間ですら、先のことを考えて閉塞感を感じることが多い。INFPは本質的に自由を愛するタイプであり、ありとあらゆる権威や押しつけに反発する傾向がある。つまるところアナキストに近い。仮に自分の好きなことであってもレールが敷かれていれば嫌になると思う。

 INFPはもう少し堅実だ。彼らはレールに乗りたがる。仮に理想を抱いて社会から外れることがあっても、その場合は自分の敷いたレールに乗り始めるだろう。INFJが外したがらないペルソナは自らのレールの上に乗っている現れなのだ。マザーテレサはその典型例である。

INFPは庵野秀明、INFJは碇シンジ

 INFPとINFJという人種の違いがある意味で現れているのは新世紀エヴァンゲリオンかもしれない。

 エヴァの主人公の碇シンジは典型的なINFJだ。表面上の人当たりは良く、クラスメートからはモテる。しかし、その内面は深刻な危機を抱えており、とんでもなくネガティブだ。

 碇シンジは視聴者から「ウジウジしている」と言われ、嫌悪感を持たれる傾向がある。しかし、作中の人物がシンジのそうした一面を知るのは難しいだろう。少なくともクラスメートはシンジの内面を見たことがない。ゲンドウもはっきりと見たことはないだろう。ミサトやアスカといった一部の近い人間だけがシンジの内面を覗くことができた。このあたりが非常にINFJらしい。シンジの名言は「逃げちゃダメだ」だが、この辺りが強迫観念的である。

 シンジは庵野秀明の内面に抱える葛藤を表したものなのだろうが、両者には決定的な違いがある。庵野秀明はP型なのだ。したがって考えていることを表現するのが好きだし、そうしてエヴァという作品は生まれた。庵野秀明のように好きなことに没頭するという要素はP型の方が遥かに強いだろう。庵野秀明は結婚式に仮面ライダーのコスプレで参加するなど、とにかく自由人である。

まとめ

 INFPとINFJの人間的な特徴は多く、この記事内でもほとんど書き表すことはできない。実のところ、個人差もかなり大きいので、共通する特徴を表してもほとんど何も言ったことにはならないだろう。それほどまでにINFという人たちは複雑で難しいのである。

 INFPとINFJの違いは色々あるが、概ね外観は明確に異なると言ってもいい。INFPはたいてい陰キャ的な雰囲気があるのに対し、INFJは優等生的雰囲気をまとっていることが多い。人間関係の形成能力が高いのはどちらも同じだ。INFJは集団内で不利な立場に置かれているのを見たことがない。少なくとも嫌われてはいないはずだ。INFPはコミュ力が乏しい人もいるが、それにしても自分の居場所をこっそり確保できている人間は多いだろう。

 INF型は社会不適合とも言われるが、本当に社会不適合なのは分からない。というより、社会不適合である自分を見つめる機会が多いといった方がいいだろう。世の中にはメタ認知能力が欠けている人物や、発信能力が乏しい人物がおり、彼らは自分のことを社会不適合者だと表現することは難しいかもしれない。INFPやINFJは生きづらい性格かもしれないが、生きづらさを自覚しているだけマシという考え方も可能なのである。

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