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<MBTI>S型=過去志向、N型=未来志向、って本当なの?

 16タイプ性格診断に関する説明でしばしば言われることは「S型は過去志向、N型は未来志向」という言葉だ。この説明は全く間違っている訳では無いが、やや誤解を招く説明でもある。例えば歴史オタクは大体N型だし、古代ギリシャの引用を好む知識人も当然N型だ。老人の戦争体験を聞いたり、自分の家系図を遡ってみるのもN型だ。S型とN型の違いの根は深く、未来と過去はその一部を説明するに過ぎない。今回はS型とN型の時間軸の捉え方の違いについて考えてみよう。

S型は現在に集中する

 S型は意識が常に現実に向いている。朝起きて、会社に行って、目の前の仕事をして、美人の同僚の様子をチラ見して、昼飯にかつ丼食って、残業をやっつけて、帰路にジムに寄って、恋人が浮気してないか考えて、歯を磨いて、ベッドに入る。これがS型にとっての世界の姿だ。この範囲内に入っていない物事にS型が深い関心を持つことはない。

 S型も確かに過去の記憶はある。しかし、それは過去の思い出話でしかない。小学生のことは外で遊んだなあといった具合である。それが現在に繋がる何かを規定するわけではない。S型にとって過去は現在よりも重要度が低いし、特に関心を掻き立てる存在ではない。例えるならば、キャンディーズの歌を聞くよりも、yoasobiの歌を聞いたほうが楽しいだろう。S型にとって過去はセピア色の世界なのである。

 未来はというと、過去以上に想像が湧かない。どうなるかわからないものを考えても仕方ないじゃないかという考え方である。S型にとって未来は株式市場のようなものだ。数日単位の株価なら判明するかもしれないが、遠い未来の時価など考えても無駄だ。ロングタームで投資をするなら国債や大企業の株に限る。これらの債権は10年前も安全だったから、10年後も安全だっただろうという具合である。

N型は時間軸を超越する

 これに対し、N型は現在だけに興味が集中しているわけではない。N型の特徴は空想の世界に没入できることだ。N型が雲を眺めると、「もし雲の上を歩けたらフワフワするのかな」などと想像が浮かぶ。こうした空想世界への関心は時間軸を超越する方向に向かう。

 N型は過去への関心が強い。まず歴史オタクはN型が多い。織田信長とかチンギスハンの話はある種の空想世界だからだ。S型から見ると歴史時代は見たことも行ったこともないし、日常生活に関係があるとも思えないので、強い関心はない。ところがN型の人間はファンタジーの世界と同じノリで遠い過去の世界に思いを馳せることがある。

 これは個人の過去にも当てはまる。N型は自分の過去を振り返り、それらを意味づけするのが好きだ。周囲の人間を観察していて思うのだが、S型とN型であまりにも過去の記憶への熱量が異なるようだ。N型にとっては過去の記憶も現在の思考も本質的な差がない。まるで昨日のことのように過去を思い出せる人もいる。S型にとって小学生の時の記憶は重要度が低いが、N型にとっては明日の予定と同じくらい重要ということだ。N型の人間の自分語りは幼稚園時代から始まっていることも珍しくない。

 N型は未来の話も好きだ。なぜならN型は想像上の世界に関心が強いからだ。ここは過去と未来で本質的に変わらない。10年後20年後に自分がどうなっているのかに関心があるし、日本がどうなっているのか、自分の友達がどうなっているのか、と言った項目に関しても考えたりする。

 要するに、N型は想像の世界の話が好きで、過去の話も未来の話も厳密には人間の想像の中にしか存在しないということだ。アンドロメダ銀河に住む宇宙人の話をするのと同様に、彼らはナポレオンの話や少子化日本の話をするわけである。

S型は経験に学び、N型は歴史に学ぶ

 かつてビスマルクは「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言った。これは愚者と賢者というより、S型とN型の方が良く当てはまると思う。過去志向のS型と過去志向のN型は過去と言っても本質的に意味しているものが異なっている。

 Sは実際に自分が体験したものや、常識的に良しとされているものに従う傾向が強い。すると、価値観はやや保守的になりがちだ。これがS型の過去志向と言われる原因だろう。しかし、実際に自分が体験していない過去に関してはS型は疎い。ナポレオンがどうのとか、ビスマルクがどうのと言った話にはほとんど関心がないだろう。あくまで自分の経験と、自分の所属環境ありきである。

 N型も過去の話は好きだし、ギリシャ哲学やら幕末の偉人やらを引用してくるのは大体がN型だ。しかし、彼らの考えている過去は基本的にファンタジーの世界だ。自分達の所属している現実とは別物であり、未来の話をしている時と感覚的には変わらないだろう。N型の人間が自分の過去の体験を覚えているのも、「自分ヒストリー」という風に考えれば理解しやすい。したがって、N型はS型にくらべて自分の過去の話を美化する傾向が強い。

流行に敏感なS型、可能性を模索するN型

 S型が古臭いかというと、それは違う。S型は流行に敏感だし、最新式の電化製品などにも詳しい。実用的なものに関してはS型の方が遥かに変化に目ざとい傾向がある。この点でS型は新しい物好きだ。実際に、学校などN型の性質が強い業界は紙文化が多くてアナログな感じがするし、S型の性質が強い業界は最新式のパソコンやインテリアが整っていて、未来的な感じがする。

 N型の未来志向はS型のそれとは全く異なるだろう。N型は物事の隠された可能性を探るのが好きだ。ポテンシャルという概念はN型が考えたものだろう。未熟な若者がいた時に、S型は青二才と認識するが、N型は可能性の卵と認識する。そして、こうしたポテンシャルが実現するのは未来なので、必然的に未来志向になる。例えるならば、ベンチャー企業のようなものだ。ベンチャー企業は現在の売上は大したことがないが、未来に大きく伸ばすという期待を込めて時価総額は上がっていく。N型の未来志向も似たようなものだ。

時間軸の2つの捉え方

 ややこしくなってしまったが、S型とN型で時間軸の捉え方は二種類あるということだ。単純な世界観という意味ではS型は現在か、せいぜい自分の体験できる過去の経験くらいしか、関心の範囲にはない。N型は時間軸を無視して古今東西に関心を持ち、その中には自分の過去の歩みも含まれる。S型の過去は「経験」だが、N型の過去は「歴史」である。N型の「歴史」はしばしば未来にも進んでいくので、彼らは未来のあれこれを議論するのが好きだ。

 ただし、N型の未来志向には「可能性の追求」というもう一つの意味があり、一般的に言われるN型の未来志向はここが根拠となっている。過去と未来が決定的に違う点は「確定していない」というところだ。N型の好むものは「先に広がっている」イメージがあることが多く、明確な天井が設けられているとN型にとっては不満足だろう。N型の人間がしばしば教育を好むのは、若者が無限の可能性を秘めた存在であり、未来に向かって広がっていくイメージがあるからだ。ただし、N型の想像は過去に対しても向くことが多い。眼の前の人がどんな過去を持っているのか気になるのはS型よりもN型だと思う。

ライフステージによる違い

 S型の過去と未来はライフステージによって異なる。S型の若者は流行に敏感で、最先端を行っていることが多い。しかし、次第にS型の人間は中高年に向かうに連れて保守化し、過去の物事を好むようになる。この点でN型は全くカオスそのものだ。子供なのに30年前の事件の話に興味を持つこともあれば、老人なのに未来の日本に関して論じたりもする。

 S型の中高年を見ていると、大体が1970年代とか、1980年代の歌を懐かしそうに歌っている。一般的に思い浮かべられる過去志向はこうした姿だ。ところがN型は全く異なる。高校時代に友人とカラオケに行ったことがあるが、彼が歌っていたのはひたすらに1930年代の軍歌だった。自分の体験やライフステージとは全く時間軸が無関係なのだ。N型の学生はカントとかヘーゲルといった100年以上昔の人間について議論していることが多いが、これはS型の中高年とは全く異なる姿だろう。

まとめ

 今回は焦点がやや定まらない議論になってしまったが、結論は簡単だ。S型は自分が体験できることに興味を持ち、N型は想像でしか存在しないものに関心を持つ。S型が興味を持つのは最新の流行や過去の経験など、自分が簡単に味わえるものだ。N型が興味を持つのは戦国時代や子供の将来の可能性など、想像の中にしか存在しないものだ。

 S型は過去志向とは言うが、厳密には現状維持的といった方が良い。復古主義まで行ってしまうと、N型の出番になるだろう。S型はやはり現在志向なのだ。N型は想像力が豊かなので革新を重んじるが、同時に過去の記念碑のようなものも重んじる。例えば大学受験の話をいつまでも鮮明に話し続ける高学歴はN型が多い。

 N型はその人の未来に焦点を当てると言われているが、厳密にはN型の想像は過去にも広がっている。正直なところ、前提の上では、過去と未来は等価である。N型にとって、目の前の人間がどういう生い立ちで、どういう経験をしてきたかは関心の的だろう。ただし、過去は確定していてそれ以上広がらないのに対し、未来はいくらでも動きうる余地があるため、N型は未来志向とも言えるだろう。

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